201014「山口陽登 / YAP「一乗寺の住宅」から考える建築の新築とリノベーション、スケルトンとインフィルについて」
アーキテクチャーフォトさんに掲載していただいて、色々と嬉しいリアクションを頂いたこともあり、事後的にではあるが、この住宅の設計を通して考えたこと、背景についてメモしてみようと思う。事前的に考えていたことは、設計趣旨として寄稿したのでご参照を。architecturephoto.net/102647/
2020-10-14 14:54:26居住用としてのマンションリノベは初めてだったわけだが、当たり前のように元の内装を解体して、スケルトンにした。建物自体のRCの構造体は当たり前のように解体しなかった。マンションの一室は壊してはならない太線の構造体と、壊しても良いとされる細線の壁と床によって形成されている(当たり前)。
2020-10-14 15:09:17僕自身、これまで新築の建物をいくつか設計してきた訳だけれど、(無意識のうちに)そのどれもが太線で、仮に改修となった場合でも、後はインフィルでいかようにでも、という前提に立って設計してきた。その違和感に対して提案したのが4年前に竣工した鳥見町の住宅(architecturephoto.net/66254/)である。
2020-10-14 15:17:07新築時にあらかじめ太線と細線を内包し、今すぐにでもリノベされる可能性がある、という状態をスケルトンインフィル以外の方法であらかじめインストールした。僕なりに住宅のサステイナビリティに向かって提案をしたつもりである。壊すことを想像できないような太い柱梁。手に届く距離にある細い柱梁。
2020-10-14 15:28:59翻って一乗寺の住宅。40年前新築時のインフィルをひっぺがしてリノベするということだが腑に落ちない。新築時は特別な瞬間で、その後のリノベは全て「インフィル」。僕が2019年に行うリノベも、きっと何十年後かの次の設計者に簡単に剥がされてしまうだろう。スケルトンインフィルの概念は強烈で儚い。
2020-10-14 15:35:25それでリノベだけど「建てよう」と思った。仮に40年後、次の設計者が「一乗寺の住宅」をリノベしようとした時に、残すことを考えてくれるようなものを作ろう。小屋のような小さな建築を建てようかとも考えたけれど、敷地はマンションの一室。この敷地にふさわしい構築物は何かと考え、
2020-10-14 15:43:47建築とも家具とも部屋とも言えないようなスケールのものを、満田さんに相談に乗っていただきながら鉄骨造で作り、床にしっかりと固定した。普通に考えて邪魔。だけれども建てずにはいられない。スケルトンインフィルが持つ儚さへの抵抗。
2020-10-14 15:45:30こと日本において新築は、建築家にとって甘美な魅力があり、僕も魅了されている。でもそれは多分特別な瞬間への魅力であって、実際には完成した瞬間から何十年もリノベの時間を過ごす。何重にも重なる可能性があるリノベーションでこそ、もっと方法が発明されなければならない時代なのだろうと思う。
2020-10-14 15:53:13そしてYAP OFFICE(architecturephoto.net/102711/)。何十年後かの設計者に向けて、はじめにそう簡単に壊せないコンクリートの壁を作った。明るい場所と仄暗い場所にゾーニングする、素人が苦労して作ったであろう綺麗じゃない壁。スタッフ総出で磨きあげ、ようやく馴染んできた。
2020-10-14 15:54:49一方ビニールシートの建具は台風で吹き飛んでしまいそうな代物で、きっとすぐに取り替えられてしまうだろう。僕の時代に取り換える可能性も。重さと軽さが同居する空間を見た未来の設計者「これ何や?とりあえず生捕り。」とか言いながら、取捨選択し、スケルトンインフィルの枠組みから軽やかに逸脱。
2020-10-14 16:00:38新築時には、その建物がリノベーションされる時を想像しながら設計したい。そして、リノベーションの時にも、そのリノベーションがリノベーションされる時を想像しながら設計したい。以上、新築1軒、リノベ2軒を通して思考したことでした。いつか5000字?1万字?くらいでしっかりまとめたい。
2020-10-14 16:03:41