くろぐだの奇妙な冒険 第７巻 ～逃走～

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 3 何時もの一条学園の校庭に、彼らは着陸した。くろぐだの大鎚のブースターを使い、ゆっくりと胴体着陸したのだ 全員が降りた後、はんちょ～はファスト・アンド・フュリオスでロケットを持ち上げた。空で破壊するのだ 「撃ちます」 砲撃で爆破するロケット。後に残るのは静寂だ

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#くろくだの奇妙な冒険 4 再び無言のまま、時だけが過ぎて行く。と、再びかせんが口を開いた 「…強かったね、あの熊」 「…だな」 「…ですね」 それだけで、彼らは口を閉じた。話すことすら疲れるのだ。と、不意にくろぐだが驚く 「か…影が…！」 くろぐだの影が、波打つ様に変化したのだ

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#くろくだの奇妙な冒険 5 警戒する様に、それぞれのスタンドを出す三人。その影は盛り上がり、土管の形を取った そして― 「やぁ、諸君。また会ったね」 「！？」 「せ、先生…！？」 土管から、日向寺が出てきた。いや、生えたと言うべきか 「え、だって先生…さっき戦ってて…」 驚くくろぐだ

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#くろくだの奇妙な冒険 6 「あ、さっきのは私の影さ」 そう言い、影の土管から出る日向寺。そして、自身の影から同じ姿のものを作り出した 「せ、先生が二人…」 驚愕し、クラっとするかせん。二人の日向寺は互いにニヤッと笑い、片方が再び日向寺の影に消える 「私のスタンドのリミックスの能力でね」

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#くろくだの奇妙な冒険 7 日向寺はそう言いながら、ジャケットを叩いてハットを被り直した 「文字通り、君の影に隠れさせてもらったんだ」 驚く様に、くろぐだは自分の影を触る。しかし地面は堅く、熱が込もって熱いだけだった そんな三人を見直し、日向寺は口を開く 「さて、あれが君達の敵だが…」

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#くろくだの奇妙な冒険 8 「戦ってみて、どうだったかな？」 その言葉を聞き、先ず口を開いたのはかせんだった 「…まぁ、二度と戦いたく無いですね」 「だろうね」 日向寺は同意する。次に喋ったのは、顔を落として呟くはんちょ～ 「…人を殺して、何とも思わねぇ奴が居るなんて…思わなかった」

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#くろくだの奇妙な冒険 9 「残念ながら、居るんだよ。スタンド使いで無くともね」 そして日向寺はくろぐだを見た。だが、くろぐだは口を開かない。少ししてから、日向寺は溜め息と共に喋りだした 「…兎に角、だ。あれが君達の敵であり、この街の敵。後ろ向き同盟と言う奴等だ」 「後ろ向き…同盟…」

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#くろくだの奇妙な冒険 10 くろぐだは小さく呟いた 「今日出会ったのは、バッド・デイと言うスタンド。敵意を感知して攻撃してくる」 そう言い、眼鏡を拭く日向寺。そして、更に続けた 「そして、前に商店街で起こった事件。覚えてるかい？」 「マジか…！」 「あれも…同盟の仕業…」 日向寺は頷く

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#くろくだの奇妙な冒険 11 「あれはヴィレッジ・ピープルと言うスタンドの仕業だ。人を操るスタンドでね、恐らくこの街中にその影響を受けた者が居るだろう」 そう言うと、はんちょ～は日向寺の胸倉を掴んだ 「アンタは！アンタはそこまで知ってて！」 「はんちょ～！」 かせんは制止しようとする

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#くろくだの奇妙な冒険 12 が、日向寺は手でそれを制した 「知っていたら、何だい？」 「…ッ！」 そのまま日向寺を殴るはんちょ～。が、その拳は軽くいなされた 「何で、何で何もしねぇんだよ！」 蹴りをかますはんちょ～。しかしそれも片手で弾かれる 「人が！死んでんだぞ！」 はんちょ～は再び殴る

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#くろくだの奇妙な冒険 13 日向寺はその拳を握り、軽く捻りながら引き上げた。そして足を払い、はんちょ～を地面に倒す 「そう。私は何もしていない」 倒れたはんちょ～に、日向寺は顔を近付けた。薄い笑みを浮かべているが、目だけが笑っていない 「私一人では、同盟に勝てないんだよ。君達も、ね」

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#くろくだの奇妙な冒険 14 そして日向寺は、姿勢を戻してハットを直す。それから言った 「だから私は提案したい。君達に、後ろ向き同盟を潰す手伝いをしてくれ、とね」 「…僕らに、人を殺せ…そう言うんですか？」 かせんが聞いた。日向寺は首を横に降り、ジャケットからマテバを取り出した

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#くろくだの奇妙な冒険 15 三人は警戒したが、日向寺はそれをくるりと回してジャケットに仕舞う 「まさか。そう言うのは、私の仕事さ」 「…結局、テメェも人殺しじゃねえか」 はんちょ～は起き上がりながら、そう呟く 「後ろ向き同盟だかなんだか知らねぇが、同じじゃねえかよ！」 「そうかな？」

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#くろくだの奇妙な冒険 16 日向寺はニコリとし、肩を竦めた 「あれらのスタンドを倒すだけで良い。私はそう言ってるんだ。後片付けは大人の仕事だよ」 「ですが、倒す方法なんて…」 そう言ったのは、俯いていたくろぐだだった 「私やかせん先輩、はんちょ～先輩の攻撃も効いていませんでした」

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#くろくだの奇妙な冒険 17 「そうだぜ！アンタのショットガンだって、刀だって効いてないじゃねえか！」 はんちょ～はくろぐだの意見に乗った。しかし、日向寺の表情は揺るがない 「スタンドは、複数人で能力を合わせる事が出来る。そうすれば、方法は見付かる筈さ」 そう言い、日向寺は空を見た

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#くろくだの奇妙な冒険 18 「現に、君達もそうしてロケットで着陸しただろ？」 そう言われ、はんちょ～は黙る 「スタンドは可能性だ。アイデアと協力で不可能を可能に出来る」 「…だから、僕らに協力しろと？」 かせんが言うと、日向寺は深く頷いた 「その通り。君達に協力して欲しいのさ、私は」

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#くろくだの奇妙な冒険 19 日向寺の言葉に、三人は再び沈黙する。そして、真先に口を開いたのは… 「…あの、先生」 「何だい？お嬢さん」 くろぐだだった。少し惑いながらも…その表情は、揺るがないものがある 「…もし、同盟さんを倒せれば…つまり私達が倒す手伝いをすれば…誰かを救えますか？」

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#くろくだの奇妙な冒険 20 「あぁ、当然」 日向寺は笑顔でそう言った 「彼らに殺される運命が無くなるんだ。君は大勢を救える」 「なら、私はやります！」 「くろぐだちゃん！？」 驚くはんちょ～。くろぐだは一瞬彼を振り返ったが、直ぐに日向寺の方に向き直る 「誰かを救えるなら、私は戦います！」

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#くろくだの奇妙な冒険 21 「私は…あの時、誰も助けられなかった」 彼女の脳裏に浮かぶのは、商店街で起きた事件で見た血だらけの子供の靴 「だから、私が戦う事で誰かを救えるなら、戦わせて下さい！」 頭を下げるくろぐだ。はんちょ～とかせんは呆気に取られている…が、かせんも直ぐにそれに次いだ

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#くろくだの奇妙な冒険 22 「僕も、手伝います」 「かせ…お前…」 驚き、日向寺とかせんの顔を見比べるはんちょ～。そして暫くして… 「…あーッ！分かったよ！アンタは信用出来ねぇが…確かに思う所はある」 はんちょ～も、さっき見た《人だったもの》を思い出した。そして、頭をくしゃくしゃとする

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#くろくだの奇妙な冒険 23 「…まぁ、何だ。どうせその二人に俺も振り回される羽目になる。だから俺は頭は下げねえが…」 そう言い、はんちょ～は腕を組んでそっぽを向く。そして、ボソリと言った 「…俺も手伝ってやる」 「それは助かる」 「ただし！」 制するはんちょ～。そして日向寺を軽く睨んだ

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#くろくだの奇妙な冒険 24 「アンタが少しでも怪しい真似したら…」 その瞬間、ファスト・アンド・フュリオスが表れる。そして、エンジンが轟音を上げた 「俺はアンタをぶっ潰す。それで良いな？」 そう言うはんちょ～。日向寺は軽く肩を竦め、薄い笑みを浮かべる 「君が望むなら、それで構わないさ」

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#くろくだの奇妙な冒険 25 そして、日向寺は右手を出した。はんちょ～もその手を― 「僕も、一つ良いかな？」 それを止めたのは、頭を上げたかせんだった 「君も何かあるのかい？」 「えぇ、大事な話です」 日向寺を見据えるかせん。何時もの楽しげな表情は無く、何処か厳しいものがあった

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#くろくだの奇妙な冒険 26 「僕達に、殺人の手伝いをさせないで下さい」 「ははっ、さっきも言ったじゃないか。それは私達大人の―」 日向寺が言い切る前に、かせんは日向寺に詰め寄った。その表情は、何処か虚無に近い 「それも無しです」 そう告げるかせん 「誰も殺さない。良いですね？」

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#くろくだの奇妙な冒険 27 「…これは手厳しい」 両手を上げ、降参のポーズを取る日向寺 「分かった。殺さないで何とかしよう」 日向寺がそう言うと、かせんは何時もの様に楽しげな笑顔に戻った。そして、日向寺の手を取ってブンブン振る 「いや～、良かったです！断られたらどうしようかと…」