茂木健一郎さん連続ツイート 『back to the basics, 「記憶」』

茂木健一郎(@kenichiromogi)さん連続ツイート
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茂木健一郎 @kenichiromogi

記憶(1)脳の研究をしているというと、多くの人が、自分の「頭の良さ」を気にかける。そして、「最近記憶力が弱くなって・・・」などと相談してくる。記憶力の良し悪しが、自分の頭の良さの指標になっていると考えているようなのである。

2011-07-12 15:05:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

記憶(2)確かに、記憶は脳の働きのうち最も大事なものの一つである。海馬が失われると新しい陳述記憶が形成できなくなるが、そうなると「永遠の現在」に閉じ込められることになってしまう。それでも普通に会話はできる。それまでの長期記憶が助けてくれるからである。

2011-07-12 15:06:49
茂木健一郎 @kenichiromogi

記憶(3)脳の記憶の働きとして、正確に覚えてそれを再現するいわゆる「記憶力」も大切であるが、より重要なのは記憶を「編集」する力である。むしろ、正確な「記憶力」ならばコンピュータには絶対かなわないのだから、創造性につながる記憶の編集力が高い方が、人間らしいと言える。

2011-07-12 15:08:07
茂木健一郎 @kenichiromogi

記憶(4)実際、正確な記憶力と記憶の編集力の間にはトレード・オフがあることを示唆する証拠がある。ルリヤが『偉大な記憶力の物語』の中で記述したSは、何年前の会話でも、一字一句正確に再現することができた。ところが、ある人がどんな性格なのか、理解を深めることは苦手だった。

2011-07-12 15:09:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

記憶(5)誰かと会って、会話を重ねる。そのうちに、その人となりがわかってくる。これは記憶の編集力である。ルリヤが長年にわたって観察したSは、会話の言葉そのものは正確に覚えているのに、人間理解には至らない。正確な記憶力と記憶の編集力の間にはトレードオフがあるらしい。

2011-07-12 15:11:08
茂木健一郎 @kenichiromogi

記憶(6)自閉症スペクトラムの中にある人の中には、風景や音を正確に覚える「サヴァン能力」を持つケースがある。驚異的な記憶力を持つ一方で、人とコミュニケーションをとることが苦手である。コミュニケーションは、記憶の編集力を必要とするのであろう。ここにもトレードオフがある。

2011-07-12 15:12:47
茂木健一郎 @kenichiromogi

記憶(7)正確な記憶力よりも、記憶の編集力の方がより人間らしい、創造性に近い能力である。そして、それはテストなどで測ることが難しい。強いて測るとすれば、エッセイを書かせること。その人が自身の体験から何を感じ、学び取ったか。その良さは定量的には示せず、感じるしかない。

2011-07-12 15:14:17
茂木健一郎 @kenichiromogi

記憶(8)「頭が良いということは、すなわち、記憶力が良いこと」という思い込みの呪縛からは、自由になった方がいい。正確に再現するという記憶力が高くなくても、体験から編集し、学び、悟ることができれば、その人は創造的な人生を送ることができるのである。

2011-07-12 15:15:22
茂木健一郎 @kenichiromogi

記憶(9)眠っている間に昼間体験した記憶の整理をしているという説が有力。夢は、その編集過程で生まれてくるものらしい。そして、河合隼雄さんによれば、夢の意味は本人にとっても盲点だからわからない。編集過程で、盲点が一つの「てこの支点」になるであろう。

2011-07-12 15:16:31
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、back to the basics, 「記憶」についての連続ツイートでした。今日も、いろいろなことを体験して、記憶が編集されるための材料を脳に貯えましょう!

2011-07-12 15:17:17