【22歳のマーくんに・完全版】福間健二 fukuma10g
18歳のきみの『バラード』のあわてんぼうの少女。リンチをうける朝鮮人少年を助けたかったのに、あやまって処刑を完了させ、そのあと悩む。でも、悩むのはきみの方が得意だ。映画との否定的な関係。失敗の過程を速度のある喜劇にして語ることができた。(22歳のマーくんに1)#fukuma10g
2011-07-08 09:16:40やがてカメラを手にしているだけで幸福な季節は終わったときみは思う。でも、人の目には明るい挫折だったろう。混乱した頭で、風景を見る。自分が主人公の映画。それを見ている気がする。あっ、映画以外に何もない。それが唯一の問題、唯一の現実だった。(22歳のマーくんに2)#fukuma10g
2011-07-09 08:14:081971年の夏。オホーツク海。馬に乗った主人公をスタートさせるが、シナリオは動かない。抽象的な、あまりにも抽象的な、少女への旅。何度目だろう。壁のむこうに、さわれない皮膚があると感じたのは。旅路のはて。世界の、だれとも、連帯していない。(22歳のマーくんに3)#fukuma10g
2011-07-10 09:45:53初国知所乃天皇。ハツクニシラスメラミコト。最初の天皇。この国のはじまりを捏造した神話に感応して日本列島を歩く自分が主人公の映画。きみをそこに向かわせたのは、大いなる誤解、純粋病、ジェイムズ・ジョイス、そして時代の、どんな力だったろう。(22歳のマーくんに4)#fukuma10g
2011-07-11 07:06:11桜井の駅。きみは薄化粧の女子高生に惹かれる。「化粧を落とせ」と先輩から平手打ちをくらってた。その涙を撮れなかったきみは、札幌で撮った「少女」を呼び出す。売春していた。この社会はどう貧しいのか。きみは表現の行く手をふさぎながら、でも歌う。(22歳のマーくんに5)#fukuma10g
2011-07-12 08:28:00宇治、奈良、熊野、伊勢神宮。〈器用さなんて、いくらばかなやつでも同じことをやっていれば身につく〉。お金、地位、将来への保証とは関係ない映画。ここから映画史を総括したい。この世界のあらゆる事物に皮膚がある。それだけ。その怖さに直面する。(22歳のマーくんに6)#fukuma10g
2011-07-13 09:06:22イージーライダー。最小限のもので生きる。でも、馬もオートバイもないからヒッチハイク。背中には重い荷。これは一種のドラッグになる。乗せてもらい、ごはんも奢ってもらって、日本海。幻の国がはじまる。古事記。日本書記。半分は遊び。宿命はまだ。(22歳のマーくんに7)#fukuma10g
2011-07-14 06:34:4830キロをこえる荷物。第二次世界大戦のときの父を思い出させる。若い父は重い荷と機関銃を背負って毎日五里を行軍した。その父とともに行軍するきみがハツクニなのだ。22歳のマーくん。22歳の天皇になって、懐かしい「抒情」にちょっと負けている。(22歳のマーくんに8)#fukuma10g
2011-07-15 07:49:57京都の友人にカメラを説明する。1秒24コマで撮るスローモーションの、地獄の季節。〈おお手よ、俺のたったひとりのスタッフ〉。十一月。城崎。松江。出雲。下関。門司。土地の活気にさわった。もう考えずに撮りつづけろ。知性をこそ裁かねばならない。(22歳のマーくんに9)#fukuma10g
2011-07-16 08:09:391972年、暗い谷間の年の、最後の日。高千穂の峰に登って日の丸を撮る。美しい、ときみは。行動としての見つめること。できたのかな。マーくん、旅も映画も終わってない。鹿児島で少女が待ってる。不純な、真実を告げるために、その命をほろぼして。(22歳のマーくんに10)#fukuma10g
2011-07-17 08:06:47