ブーブス・アークティック!!!
「孤独に塗れて、この閉ざされた極寒の地で寂しく死んでゆくのがブーブス・バンドに似合いの最後というわけね!……あら、どうしたの、エルマー?そんなにバターがほしいの?」デジーはむしゃぶりつく犬の頭を撫でた。許せない!「……ん?」その時、デジーが何かに気づいた。 39
2020-11-26 22:33:00「ウバー、どうした?」プロフェッサーKが問う。「いえ、ブーブスは3ピースバンドではなかったような気がするのですが……アイン、ツヴァイ、ドライ……」デジーが数えると、そこには確かに3人しかいない。「お前たち!何だこれは!」デジーは手下の兵士たちを厳しい声で呼びつけ、整列させた! 40
2020-11-26 22:33:00「「「ヤー!」」」「何故ブーブスが3人しかいない!?」「解りません!」「じ、自分たちが発見した時には、3人しかおりませんでした!」「脱退したのかもしれません!ロックンロールバンドにはよくあることです!」その時! 41
2020-11-26 22:36:00SMAAAAAAAAAAAAAASH!ナチスバリケードを破り、2台のスノーモービルが地下洞窟に突っ込んできた!そこに乗っているのは我らがフォクシー!そしてブシェーミ!「ブーブス!助けに来たぞ!」ブシェーミはAKIRAみたいにスノーモービルを横付け急停車し、フォクシーが威嚇射撃した! 42
2020-11-26 22:39:00ほぼ同時に、白ペンギンが危険なくちばしで三人の拘束縄を噛みちぎってくれた!「ユピユワー!」白ペンギンの声にドールハウスは耳を近づけ、その言葉を理解したかのように驚いた。「まあ……何ですって?」だいぶキマってるね! 43
2020-11-26 22:42:00「許さんぞブーブス!」「ファック!」ジェーン9がデジーを殴る!「アーッ!」倒れ込むデジーに犬が飛びつき舐め回す!「ウーン」「ジョン!何をやってる!」ブシェーミが引き剥がす。エルマーというのはデジーが勝手につけた名前で本当はジョンだったのだ!「ハウス!」犬はモービルに乗り込んだ!44
2020-11-26 22:45:00「やるよ!あんたたち!」フォクシーが促す!4匹の美女アニマルは向かってくるナチス兵を殴ったり蹴ったりして退け、働かされていた人々を次々解放!解放された人々はそれぞれ隣の人を解放!倍が倍になってあっという間にすごい数になってしまうんだ!「自由だ!」「ありがとう、美しい皆さん!」 45
2020-11-26 22:48:00「ウンモーグリッヒ!」プロフェッサーKは泡を吹いて怒った。「どうして……何故いつもブーブスが!……デジー!何をやっている!」Kは半裸のデジーを叱りつけた!「こうなればイチかバチか六次元スペクトル波照射装置を動かすのだ!」「しかし、まだ試験段階で」「時間がない!」ボタンを叩いた! 46
2020-11-26 22:51:00装置から光線が発射される!「ウウウーー」氷漬けのタコ頭巨人が身震いを始めた!氷が砕け、洞窟が崩れ始める!「「「ハイル!ハイル!ハイル!」」」ナチス兵が一斉に巨人を崇め始める!彼らは巨大なものを見ると興奮する性質があるのだ!「ファック!みんな逃げろ!」ブーブスはモービルで脱出! 47
2020-11-26 22:54:00DOOOOOOOM!間一髪!爆発崩落する地下洞窟から、ブーブスは雪原に飛び出した!猛スピードで走るスノーモービル!「このまま一気に、フェス会場まで行くよ!」「フォクシー、そのことなんだけど……」ブロンディが言いづらそうにした、その時!「ユピユワー!」白ペンギンが後方を指差し警告! 48
2020-11-26 22:57:00「CHTULTHULTHULTHULTHULTH……!」タコ巨人だ!山のように巨大なタコ巨人が地下洞窟の残骸から身をもたげ、天に向かって祈るように両手をひろげた!すると太陽は真っ黒に染まり、名状しがたい笛の音が風に乗って南極の地に荒れ狂った! 49
2020-11-26 23:00:02「な、何だあれは……!」ブシェーミはタコ頭巨人の目を正視してしまった……それがまずかった。「イイイイーッ!」彼は白目を剥いて発狂し、スノーモービルから転がり落ちてしまった!KABOOOOM!追いかけてくるナチスノーモービル隊が巻き添えになり大爆発を起こした!「ブシェーミ!」 50
2020-11-26 23:03:00「どうする!?」「あれだ!」ジェーン9が指さす先には……やった!爆発炎上したバンの残骸のすぐそばに、ギター、ベース、ドラムセット、マイクスタンドが並んでいた。バンから転がり出た楽器群は奇跡的に正しい位置関係で配置され、そのまま放置されていた格好だ!ロックンロールのチャンスだ! 51
2020-11-26 23:06:00「行くよ!」ギュギュオオーン!飛び降りたフォクシーはギターを掴むや否やパワーコードを弾き鳴らし、アンプから強いロックンロールが放たれた!さらにベース!ドラム!歌が重なり、ロックンロール衝撃波が放たれようとした瞬間……「CHTULTHULTHULTHUL!」「「「「ウワーッ!」」」」掴まれた! 52
2020-11-26 23:09:00タコ頭巨人がブーブスたちをそのヌルヌルした冒涜的な口元の触手や太い手でもって掴みあげたのだ!「ワンダバー!見たかブーブス!」ヘリに乗りこんだKとデジーがそれを見て笑う!「その偉大なるクトゥルーに貴様らのロックンロールなど通じるものか!サードライヒ!世界がひれ伏すぞ!」大変だ! 53
2020-11-26 23:12:00「クトゥルーだって!?」それを聞き、フォクシーが何かを思いついた!そしてヌルヌルの触手に耐えながら、不吉なアルペジオを奏で始めたのだ!ピロペロペロ、ピロペロペロ……。「CHTULTHULTHULTHUL……?」それを聴き、タコ巨人の動きが止まった!「ウバー!?いったい何が!?」Kが困惑する! 54
2020-11-26 23:15:00ピロペロペロペロ……やがてそこにドールハウスの不穏なベースが乗り、強烈なディストーションリフへと変わる!デデーデデデー!!凄まじいロックンロール衝撃波が生み出された!「ウバーッ!?」ロックンロール波に飲まれ、墜落を始める武装ヘリ!一方でタコ巨人は満悦し始めた!果たして何が!? 55
2020-11-26 23:18:00「ああ……あれは……!」爆発の炎にのまれて傷ついたブシェーミが、雪原からその光景を見上げ、涙を流した。「あの曲はメタリカのCALL OF KTULUだ……綴りは違うがどう考えてもクトゥルーに捧げられた曲だ……死ぬ前にこんな宇宙的光景を見ることができて、よかっ」そして満足げな顔をして倒れた。56
2020-11-26 23:21:00「CHTULTHULTHULTHULTHUL……」クトゥルーも掴み上げた四人を本来あるべき演奏位置に戻してくれた。今度こそロックンロールのチャンスだ!「いくよ!ヘル!ブーブス!レッツゴー!」ブーブスは自分たちの曲のイントロリフを奏で始める! 57
2020-11-26 23:24:00「フェアダムト!カッケ!止めろ!ロックンロールを止めろーッ!」デジーとともに落下傘脱出しながら、Kは戦車軍団に命じる!「「「ヤー!」」」無数の砲塔がブーブスを狙う!ステージを物理破壊されてしまえばロックンロールは続けられない!だがその時、さらなるロックンロールの奇跡が起こった! 58
2020-11-26 23:27:00「「「ユピユワーーー!」」」洞窟に閉じ込められ迫害されていた何千匹もの白ペンギンが現れて雪原を埋め尽くし、オーディエンスになってくれたのだ!「「「ウバーッ!」」」戦車軍団は白ペンギンの波に飲まれて身動き不能!「一体全体、これは何!?」フォクシーが驚くと、ドールハウスが答えた。 59
2020-11-26 23:30:00「さっき、あの子から聞いたんだけど……白ペンギンたちは南極のラジオに混線してきたラジオ番組でかかっていた私たちの音楽を聴いてファンになったんだって。もともとこの南極に娯楽なんか無いから、カセットテープにその音楽を頑張って録音して、何回も何回も聴いていたんだって。 60
2020-11-26 23:31:00ちなみにあのタコ巨人は氷漬けになって気持ちよく眠っていただけなのに無理やりナチスに色々させられそうになっていて迷惑していたから白いペンギンに夢を飛ばしてそれをやめさせてほしいって頼んでいたんだけど、いかんせん白いペンギンだから力がなくて、どうしようもなかったらしいの。 61
2020-11-26 23:32:00そこに私たちがやってきたっていう事らしいわ」「それ本当なの?」「すごい巡り合わせだね!」ブロンディが興奮した。白ペンギンたちが一斉に飛び跳ねる!「「「ユピユワーーーー!」」」「とにかくロックンロールするだけだぜ!」ジェーン9がまとめ、激しいドラムロールから曲をスタートさせた! 62
2020-11-26 23:33:00ズダダダダダ!ギュオギュオギュオ!ブンブンブーン!これは南極について歌ったブーブスの曲、ホット・チックス・アークティックだ!「南極はみんなのものー」ZGOOOOOOOOOOOOOM! 凄まじいロックンロール衝撃波が放たれた! 63
2020-11-26 23:36:00