ブーブス・アークティック！！！

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ブーブス・バンドだって？」ブシェーミじみた男がドアを開けて言った。「ロックンロールバンドが南極に何の用だ？」「フェスだよ」「フェス……？」　14

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「アタシたち、フェスの出演依頼を受けたのさ」フォクシーは胸元から一通の招待状を取り出した。『拝啓、ブーブス・バンド様。南極でロックフェスをしますので、ぜひご参加下さい。ミット・ヘルツリーヒェン・グルースェン』　15

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ブシェーミは目を細める。「ミット・ヘルツリーヒェン・グルースェンってのは誰だ」「誰か解る？」ブロンディが後ろを向いて問う。「さあ」「知らない」「差出人じゃない？」「そうか。まあいい。兎に角、いま南極じゃフェスの予定はない。おかしな事言ってないでとっとと帰るんだな」何だって！？　16

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「そんなこと言ったって、アタシ達のバンはブッ壊れたんだよ。楽器も回収しないといけない」「なにがフェスだ！南極に人は住んでないぞ。街もない！ここをコーチェラかなにかだと勘違いしてんのか？氷だ！一面の……ウギャーッ！」「うるさいよ！」ブロンディが勇ましくパンチを食らわせた！　17

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左パンチ！右パンチ！ビンタだ！たまらず倒れ込むブシェーミにジェーン9がマウントを取って、さらにビンタした。「アーッ！」「それぐらいにしときな！」フォクシーがやめさせた。南極大陸をあてどもなく彷徨っていた美女四人を追い返そうとするから、こんなことになる。　18

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「ウウーッ……」屁理屈ばかりこねるブシェーミが床にのびているうちに、ブーブスは観測基地に上がりこんで勝手にドーナツを食べたり、シャワーを浴びたり、ソファーでNETXLIXを見てくつろぎ始めた。今時珍しいCDラックにはメタリカのアルバムが入っていたので、それもボリュームMAXで再生した。　19

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「ユピユワー！」白ペンギンもメタリカを聴いて楽しそうに飛び跳ね、シャワーを浴びて体を洗ってもらったよ。「ほら……洗って乾かしてあげれば、こんなにフカフカ！」「ユピユワーイ！」「かわいい！」ブロンディは白ペンギンを胸に挟み込んだ。「ユピユワー！」　20

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「ダメよ、そんな事したら。何か大事な啓示をもたらしにきたのかもしれない」ドールハウスはブロンディから白ペンギンを引き離そうとしたが、ブロンディは譲らない。「ちょっと！離しなさいよ！」 21

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「ずるいよ！」二人は胸で白ペンギンをサンドしながら、争い合って、絨毯の上をゴロゴロ転がった。「ハーッ……ハーッ……」「ウウーン……」「ンーッ……ハーッ……ハーッ……」「ウーン……ウウーン……」ホットだね！　22

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「おいブーブスども、勝手に基地を荒らしやがって！ここをどこだと思ってやがる！」ブシェーミが目を覚まし、怒った。だが次の瞬間、彼の顔は青ざめた。「そ、そのペンギンは！不吉だ！」彼は大慌てで机の引き出しを開け、拳銃を取り出す！「やめろ！」ジェーン９が素早くブシェーミを殴り飛ばす！　23

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「アーッ！」「いい加減にしろ！」ブロンディがまた馬乗りでブシェーミを殴る！その時だ！SLAM！基地のドアが開き、外の冷気が吹き込む！そして寒冷地武装した謎の兵士が四人、銃を構えて踏み込んできた！「監視塔で貴様らの行動を逐一見ていたぞ。貴様ら、例の白ペンギンを保護して匿っているな？」24

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「違う！オレは巻き込まれただけで」「口答えするな！」「ウギャーッ！」ブシェーミを銃で殴り倒し、「この野郎！」反撃に出たジェーン9をスタンガンで気絶させると、謎の兵士たちは抵抗するブーブス・バンドの面々に手錠をかけてしまった。「連行しろ！」　25

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少しして。「フンフンフーン……」鼻歌とともにシャワーから戻ったフォクシーは、驚いた！室内は荒らされ、ペンギンもブーブスもいない！いるのは気絶したブシェーミだけ！「おい、起きな！」フォクシーは黒いショーツだけのホットな格好で彼の胸倉を掴み、引き起こした！「一体何があったんだ！？」26

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「ウウーッ……」頭から血を流したブシェーミは、フォクシーに告げる。「謎の武装カルトだ……数ヶ月前…あの白ペンギンたちが現れたのとほぼ時を同じくして謎の武装カルトがこの南極を支配し始めたんだ……」　27

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「観測基地の同僚たちも今では全員連れ去られ自由を奪われ、地下洞窟で強制労働を強いられている毎日だ……。オレは唯一助かり、ここで豊富な備蓄とともに平穏に暮らしていたんだ……それを、お前たちが来たものだから……」「腰抜け！」フォクシーはブシェーミをビンタした。「アーッ！」　28

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「カルトが悪さしている事がわかっているのに、見て見ぬふりをしていたら、それは平穏でも何でもない。偽りの暮らしだよ！強制労働させられている仲間の事を考えた事はないの！？アタシは仲間を助けに行く。誰一人欠けたってブーブス・バンドにはならないんだ。それが……バンドってもんだからね！」29

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「ア、アンタ……まさかひとりで行くつもりか」「そうだよ。アタシ一人でも行く」「バカな。武装カルトはかなり武装しているし、相当な陰謀だぞ。あっという間に返り討ちにあっちまう。お、オレだって……オレだって本当は……仲間達や、犬のジョンの事が……」ブシェーミは言葉に詰まり、俯いた。　30

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フォクシーは微笑んだ。「もうアンタの中で答えは出てるんだろ。そんなら、ロックンロールすりゃあいいんだ！」 31

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……いっぽうその頃！「ブリッツクリーグ、ブリッツクリーグ……！脳味噌の代わりに麦ワラが詰まったブーブスどもめ！まんまと罠にはまりおって！」スキンヘッドの軍服男がカギ爪義手を輝かせ、満足げに笑った。彼の前にはロープ拘束されたブーブスと白ペンギンが転がされている！　32

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「お前は、プロフェッサーK……！」目を覚ましたジェーン９が歯軋りする。「ここは……！？」ドールハウスが周囲を見渡し、予想外の光景に驚く。そこは南極山脈の地下にある秘密のナチス洞窟だった。南極は全体的に空洞になっていたのだ。　33

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秘密洞窟の天井からはナチス旗がたくさん垂れ下がり、捕まった哀れな住人たちがツルハシを振って巨大な氷を削るための強制労働を強いられている。その巨大な氷の中には、タコの頭と翼を持つ巨人のようなものが氷漬けにされていて、どう見ても危険だ。巨人の身長は１００メートルくらいある。　34

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「このままじゃフェスに間に合わないよ！」ブロンディが身をよじり、ファンのことを心配する。「フェスだと？まだ信じていたのか？」デジー・シュタッデルマイヤー女史が騎乗鞭をヒュンヒュンと鳴らしながらプロフェッサーKの横に現れた。「あれを送ったのは我々だ！まんまと騙されたな！」卑劣！　35

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「その通りだ。マインフューラーが残せし秘密の宝の地図を我らは解析した。そして南極のこの地に見出した……人類が海から這い出す以前にこの星に来たりし大いなる存在の痕跡をな！見るがいい、氷漬けとなったあの猛々しき存在を！」プロフェッサーKは誇らしげに、氷漬けの危険な巨人を指さした。　36

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「……氷の中から掘り出して六次元スペクトル波を浴びせることにより、かの者は目覚めるであろう。今こそ地上を彼らの手に返すのだ！この星は我々人類のものではない！」プロフェッサーKの目つきがおかしい！なんだか言っている事も変だぞ！？　37

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「そんなウソをついたってダメだよ！ファンは待ってるんだ。南極にも居るんだ！アタシたちのファンが！」ブロンディの目に涙が光った。デジーは嘲笑う。「なにをウンジンな事を！初めからお前たちのファンなどいない！ロックンロールは終わりだ！」　38