海老澤美幸弁護士による法律・判例解説

都度更新する予定です。
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海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

「劇団員は休日希望日を劇団に伝えなくちゃいけないし、劇団とバイトの両立が難しい劇団員が多かったから6万円の支給は始まったし、今はY社社長の判断で20万円まで支払われる場合もあるし、裏方業務に外部のバイトを雇ってるわけでしょ。そうすると6万円は裏方業務の対価と言わざるを得ないよね」

2020-12-06 10:04:27
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

さて①稽古・出演。 面白いことに第1審と控訴審で判断がわかれます。 第1審は、公演の出演は任意でYES/NOがいえたから、Y社の指揮命令により出演してたわけではないし、チケット売上に応じて支払われる金銭も、集客能力への報酬で、出演への対価ではないとして「労働者」にあたらないと判断しました。

2020-12-06 10:04:27
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

控訴審はこれを覆します。 「確かに出演は断ることができたよね。 でもよ。公演の出演者は外部の役者から決まるから劇団員は残った配役の出演を検討するんだけど、そもそも劇団員は公演に出たくて劇団員になってるわけでしょ。断らなくね? 仮に断ったとして、それはY社の他の業務をするからでしょ。

2020-12-06 10:04:28
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

劇団員はY社から受けた仕事は最優先でやるよう決められてて、Y社の指示に従うしかないわけだから、YES/NOの自由はないでしょ。 劇団員は他の劇団に出演OKだけど、裏方業務に追われてそれどころじゃない。バイトすらできないわけよ。 しかも外部の仕事を受けるときは必ず副座長に相談しなくちゃだし、

2020-12-06 10:04:28
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

勤務時間・場所・公演はY社が決めて、Y社の指示でやってたよね。そうすると、公演の出演・演出・稽古もY社の指揮命令の下でやってたというべきだよね」 こうしてXさんは、出演・稽古と裏方業務を含む劇団業務について労働者と認められ、Y社は、賃金と残業代を支払うことになったわけです。

2020-12-06 10:04:29
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

この判決は、正直、結構影響力が大きいのではないかと思います。 劇団以外にも、モデルやアイドルの事務所なども、出演以外に裏方をやらせたり、事務所が色々細かく指示を出して拘束することも少なくないように思います。 今回の判断からすれば、労働者と判断される可能性もありそうです。

2020-12-06 10:04:29
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

この判決には「自分の意思で好きなことしてるのに給料が欲しいなんて」「多くの劇団がつぶれてしまう」といった批判も耳にするところです。 難しいところですが、やりがい搾取が横行する業界ではあると思うので、これをきっかけに業界がよい方向に進むといいですね。 今後の裁判例の動きに要注目です。

2020-12-06 10:04:29

G&Rのパクリ疑惑(デッドコピー商品の法的問題・不正競争防止法2条1項3号)

海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

G&Rのパクリ疑惑も記憶に新しいところですが 「どんな場合にパクリ商品に当たるのか?」 というご質問をむちゃくちゃいただくので、ファッションデザインのパクリについて少し書いておきます。 ファッション関係の方々にはぜひお読みいただけましたら嬉しいです。 超長文です。 twitter.com/ebisawa_miyuki…

2020-12-24 08:54:32
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

今朝のめざましテレビで、渦中のブランドG&Rのパクリ疑惑についてコメントさせていただきました。 ただ放送を見てないので、どこが使われたのか全くわかってないのですが… もし見てくださった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございました!😊

2020-12-22 09:31:35
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

服などのデザインが他ブランドのデザインをパクってるかも!? という場合に使われる法律は何か? ケースによって色々ありますが、実は「不正競争防止法」に定められてる形態模倣(2条1項3号)という類型がたぶん一番多いかと。 これは形態(デザイン)の丸パクリ(デッドコピー)を禁止するものです。

2020-12-24 08:54:32
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

この形態模倣、注意が必要なのは、保護されるのは日本国内で販売が開始されてから3年以内の商品だけなんですよ。 なので仮にG&Rにマネされたといわれてる服が、日本で3年より長く販売されてる場合は、G&Rがこれを丸パクリしてたとしても、形態模倣としては規制できないということになります。 ただし!

2020-12-24 08:54:33
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

マネされたのが有名なデザインや業界ではよく知られたデザインの場合には、不正競争防止法の別の条文や他の法律で規制される可能性が高いので、この場合は3年の規制はかかりません。 この話は別の機会に。 マネされた服が有名でない今回のような例が、形態模倣を使う典型的なケースになりますね。

2020-12-24 08:54:34
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

さて、形態模倣ルールでは他人のデザインを参考に(依拠)してマネ(模倣)することが規制されるわけですが、模倣とはなんぞや? ここは法律上に規定があります。 模倣とは「実質的に同一」と。 じゃあ実質的に同一とは? ここから先は法律に書かれていないので、裁判例から基準を探らざるを得ません。

2020-12-24 08:54:34
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

結論からいうと、明確な基準はありません。 ただ、裁判所が判断する際の傾向というか重視してるポイントはあると言われてます。 このポイントはいくつかありますが、何人かの論者の方のご意見や裁判例から、個人的には、裁判所は特以下の2つの点を重視しているのではないかなと考えてます。

2020-12-24 08:54:35
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

その前に。 そもそも形態模倣が規制される趣旨は、事業者が時間とお金をかけてそのデザインを創って売り始めた途端、横からかっさらうように丸パクリされて売られたら、頑張ったのにその商品はその分売れなくなっちゃうわけじゃないですか。あんまりですよね。萎えますよ。だから規制するわけです。

2020-12-24 08:54:35
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

これを前提として。 1つ目のポイントは、購入者(消費者)が同じ商品と感じるかどうか。 上の趣旨のとおり、購入者が間違えて商品が売れなくなるのは困るということなので、購入者の目線が実質的に同一かどうかの判断の基準として大事になるのではないかなと思います。

2020-12-24 08:54:36
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

2つ目は、創作性のある部分がパクられてるかどうか。 特にファッションは似たり寄ったりにならざるを得ないとしても、創作的な部分は時間とお金をかけて創り出してるわけで、ここを丸パクリするのはあかんよね、ということですね。 創作的部分が似てれば購入者も同じと感じるので2つは関連してますね。

2020-12-24 08:54:36
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

これ以外にもポイントはありますが、個人的には特に上の2つが重視されているのではないかと感じています。 その上で、今回問題となったG&Rのドレス(3点のうち2点)は実質的に同一=模倣と判断される可能性がそれなりに高いのではないかと考えています。 なお個人的意見なのでもちろん異論もあるかと。

2020-12-24 08:54:37
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

なお、よく「〇箇所変えればパクリになりませんよね?」というご質問をいただきますが、これは完全に都市伝説です。 変えるときは、上のポイントを踏まえ、創作的な部分を変え、購入者が同じ商品(または単なるバリエーションや色違い)ではないと感じられる程度には変える必要があります。

2020-12-24 08:54:38
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

この形態模倣、やらかすと結構重いんですよ。 商品の販売差し止めや損害賠償請求はもちろん、悪質な場合には5年以下の懲役、500万円以下の罰金、両方のダブルパンチもあり得ます。 「可愛いし絶対売れるからマネしちゃえ」なんて安易にやると思わぬ痛手を受けます。

2020-12-24 08:54:38
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

それだけではなく、G&Rのように認めて謝罪したとしても、ブランド価値や信頼をあっという間に失います。 ファッションて、イメージやブランド価値がすべてなんですよね。模倣がバレてイメージがガタ落ちになれば、当然売上も落ちます。 パクリの影響は、みなさんが想像するよりずっと大きいです。

2020-12-24 08:54:39
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

ファッションはマネの繰り返しで発展してきました。トレンドはマネのカタマリですよね。 もっとも、ファッションを発展させる「マネ」は創作性を備えたマネであるべき。 創作性を伴わない丸パクリは、誰かの労力やお金をかすめるのと同じです。 どうかファッションが楽しい創作であふれますように。

2020-12-24 08:54:39
海老澤美幸 ebisawa_miyuki @ebisawa_miyuki

なお、不正競争防止法2条1項3号の解釈や、模倣の判断基準は、論者の方によって説明がわかれるところで、ここでご説明したのは海老澤の今現在の考えにすぎません。 ご興味のある方は、他の教授や弁護士の方々の意見などもぜひいろいろ調べていただければと思います。

2020-12-24 08:54:40
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