地政学に関して、イルシス氏がすごいわかりやすく流れを説明してくれたのでまとめ

私も全然理解できてなかったので、メモとして残しておきます。
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ウラオモテヤマネコ @uraomotewildcat

「地政学」とかいう学問っぽいものを語る人たちに疑問を感じてる私 地理学科や政治学科を構える大学は聞きますが「地政学科」って聞いたことないです 調べても地理学や政治学の講座で数時間触れる程度の話のようで、専門的に学ぶ分野でも無さそうです 地政学語る人、どこでそれ学んだんですか?

2020-12-04 22:31:40
太刀川るい @R_Tachigawa

地政学、ざっと本を読んでみたんですが、地理学の一分野って感じなんですよね。「この拠点取ると便利やね」みたいな話はまあせやな……って感じですし。あと、私が読んだ範囲で思ったことなんですが、イギリスの人が始めただけあって、イギリス中心なんですよね。

2020-12-11 14:11:24

※これは私の間違いでした。はじめたのはイギリスというのは不正確ですし、そもそも大陸側の理論が抜けている。

太刀川るい @R_Tachigawa

地政学、私が読んだ範囲の情報で、目新しいアイディアはというと「内陸国家VS海洋国家」という流れで政治を理解するみたいな所だと思うんですが、それって思いっきりイギリスの都合やん……みたいなことは思うんですよね。

2020-12-11 14:12:52
太刀川るい @R_Tachigawa

イギリス、海軍力が高かったので、逆らうやつは港を封鎖することで日干しにできる。(ので、あの小国でも世界を掌握できた)んですが、その手が通用しない相手がロシアで、何しろ海が凍っているので、元から港に依存していない。っていう。

2020-12-11 14:14:10
太刀川るい @R_Tachigawa

そこから「よく考えたら大英帝国が本気出しても、海岸沿いのちょっとした部分しか制圧できないし、最終的に内陸国家に押し切られるんじゃないの」みたいに気がついてしまった部分が大きいのかな……と思ってしまう内容でした。

2020-12-11 14:16:21
多々良釦 @tatarabutton

大陸側の理論はカール・ハウスホーファーのものがあったんだけど、ナチスに取り入れられたのでその、抹消されました……。

2020-12-11 14:31:43
多々良釦 @tatarabutton

あと重要なのはアメリカの戦略の礎になってるアルフレッド・セイヤー・マハン「海上権力史論」とか。世界中に植民地作って軍艦配備して貿易保護と敵対国に圧力かけろ、というやつ。100年前の話だけど今と大差ない。

2020-12-11 14:51:54
多々良釦 @tatarabutton

まぁ国際関係論でさえ追い出されそうになるんだからダイレクトに軍事研究な地政学はヨーロッパの大学でも結構追い出され気味らしい。

2020-12-11 14:58:28

とかなんとか言ってたら、イルシスさんがわかりやすくまとめてくれてたんでまとめ。

イルシス(雪星/イル) @Irrsys

これは地政学が歩んだ歴史的経緯が大いに関連してまして。早い話が地政学はナチスの御用学問(ヒトラーが曲解して侵略を正当化した)であったがために戦後「好ましくない学問」とされ、日本の学術会から追放されたのです。その経緯のせいか今でも正統な学問ではないという人は多いのです。 twitter.com/uraomotewildca…

2020-12-11 14:42:17
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

地政学の源流は早い話が「国家有機体説」でありまして、これは国家が個の集合や契約上の仮想法人ではなくそれそのものが国家という生命であり、生命を維持するため様々な機能が存在し、国民はその一部と考えられてました。社会契約の真逆の発想です。古くはプラトンからある思想です

2020-12-11 17:22:45
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

この国家有機体説を19世紀に発展させたのがフリードリヒ・ラッツェルです。彼は文化と地理の関係性を重視し政治地理学という学問を提唱し、一方で優れた文化は他の領域でも有効であり、生存域を拡大するため他の文化領域に進出しなければならないという社会主義ダーウィニズムの立場を提唱しました。

2020-12-11 17:22:45
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

これが有名な生存圏(レーベンスラウム)の大元です。この発想はラッツェルの弟子であり地政学の祖であるルドルフ・チェーレンに引き継がれました。チェーレンは「生命体としての国家」の中で領域としての国家は地政学で論じるべきであると述べ、必然的に地政学は国家が弱肉強食の帝国主義世界で

2020-12-11 17:22:45
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

どう生き抜くべきかという議論になり、最終的に国家は自ら経済・社会福祉を拡充し、国家国民が一個の生命体として自給自足できる状態(アウタルキー)を保持するべきであるという結論に至ります。これが地政学の起源であり、ここから地政学は米英の海上権力論とドイツの大陸権力論に分離していきます。

2020-12-11 17:22:46
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

海上権力論を展開したのはアルフレッド・マハン。海軍軍人であった彼は「海洋を支配する国は他国の海上交易をも支配し、覇権を得ることができる」とシーパワーを定義し、米国の太平洋展開を大いにプッシュしました。これは英国の長年の海上覇権にも論理的説明を与えるなど世界各国に影響を与えました

2020-12-11 17:22:46
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

(マハンの議論を受け、海上戦力は陸上における作戦を支援するものであり、最終的に陸地を保持することが重要であると述べたのがコーベットです。コーベットは保持が困難な制海権ではなく一時的であれ海上優勢を獲得する重要性を説き、現在はこちらが主流となってる印象。蛇足)

2020-12-11 17:22:47
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

さて、マハンの議論はあくまでクラウゼヴィッツやリデル・ハートの軍事戦略論の延長だったのですが、このシーパワーの議論を取り込んで地政学として盛り込んだのがハーフォート・マッキンダーです。マッキンダーは地政学に新たにシーパワーの議論を盛り込みつつ理論を展開しました

2020-12-11 17:22:47
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

この議論がいわゆる「ハートランド・リムランド」の議論です。マッキンダーは過去の人類史や世界を軸と周縁に区分しました。軸とは資源が豊富で作物生産性が高くかつ河川や陸上交通によりアクセスが容易な地域、すなわちユーラシアの中心です。一方外縁とは、大陸の外側や海岸線沿い、島嶼を指します。

2020-12-11 17:22:47
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

世界の回転軸であるハートランドは肥沃で交通路に富み、ここを支配することで国家は自給自足を達成し東西南北を結ぶ広大な経済圏を獲得できる。このためチンギス・ハンやナポレオンなど歴史上様々な人物がこれを追い求めてきた。一方で外縁であるリムランドは船舶の巨大化と海上交易によって発展し

2020-12-11 17:22:48
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

沿岸国にたいしては海上封鎖などで揺さぶれるが、陸上を支配する能力がなくばいくつかの拠点を保持するだけで、最終的にランドパワーに押し潰されるとしてランドパワー優位を語った。マッキンダーはWW1の勝利に沸く米英仏に冷や水を浴びせる心持ちで論じたのですが、この議論はドイツに吸収されます

2020-12-11 17:22:48
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

マッキンダーは「東欧を制する者はハートランドを制し、ハートランドを制する者は世界島(ユーラシア)を制し、世界島を制する者は世界を制する」と述べました。この米英の地政学と大陸の地政学を融合させたのがドイツのカール・ハウスホーファーです。

2020-12-11 17:22:49
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

ドイツのカール・ハウスホーファーはラッツェル、チェーレン、マッキンダーの議論をまとめ世界を四つの領域に分割して米独露日が支配する「パン・リージョン理論」、特にソ連とドイツが陸上・河川輸送によって経済圏を構築するユーラシアを支配するランドパワー支配を提唱しました。

2020-12-11 17:22:49
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

このハウスホーファーに師事したがルドルフ・ヘスでありアドルフ・ヒトラーです。とはいえヒトラーらは経済覇権よりも生存圏確保のための領土支配に傾倒し、武力による東欧・ハートランド支配に傾倒していったそうで、ハウスホーファーは「地政学を都合がいいように利用している」と述べました。

2020-12-11 17:22:50
イルシス(雪星/イル) @Irrsys

しかしそういったハウスホーファーらの指摘も空しくナチスドイツは社会主義ダーウィニズムに基づくアーリア人種の支配領域確保、生存圏の物理的確保を推し進めようとしWW2に至り、終了後はナチスの覇権主義を支えた学問としてパージされてしまうのです。

2020-12-11 17:22:50