【JAMA 2020.11.23】COVID-19における動脈・静脈血栓症の診断,管理,そして病態生理|★すべてのCOVID-19入院患者に対して,禁忌薬がない場合には血栓予防を考慮すべきである(2021.1.3作成) #アスピリン

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呼吸器内科医@ @neznezxmail

「COVID-19における動脈・静脈血栓症の診断,管理,そして病態生理」(11/23 JAMA) ★すべてのCOVID-19入院患者に対して,禁忌薬がない場合には血栓予防を考慮すべきである 以下要約 ●COVID-19の米国レジストリでは,非重症患者229人のうち2.6%,重症患者170人のうち35.3%で血栓性合併症が発生した 1) pic.twitter.com/pOCcm6XehD

2020-12-30 16:52:35
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Diagnosis, Management, and Pathophysiology of Arterial and Venous Thrombosis in COVID-19 | Infectious Diseases | JAMA | JAMA Network https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2773516

COVID-19における動脈血栓症および静脈血栓症の診断、管理、および病態生理学

リンク jamanetwork.com Diagnosis, Management, and Pathophysiology of Arterial and Venous Thrombosis in COVID-19 This JAMA Insights review summarizes the pathophysiology underlying the thrombotic diathesis characteristic of acute SARS-CoV-2 infection and current recommendations for the prevention, diagnosis, and management of the most common thrombotic complications 4736
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●血栓性合併症には,心筋梗塞(MI),虚血性脳卒中,静脈血栓塞栓症(VTE)などがある ●COVID-19による全身性炎症および呼吸器疾患が重症になるほど,高い血栓性合併症有病率と関連がある 2)

2020-12-30 16:53:59
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●COVID-19入院患者388人(16%が重篤例)のうち,ICUに入院している全患者およびICUに入院していない患者の75%に低分子ヘパリン(LMWH: low-molecular-weight heparin)による血栓予防が行われたにもかかわらず,患者の4.4%に症候性VTEが,2.5%に虚血性脳卒中が,1.1%にMIが発生した 3)

2020-12-30 16:54:42
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●しかしSARS-CoV-2が血栓塞栓症リスクをどの程度増加させるかは不明である. ●COVID-19に関連した退院1877人とCOVID-19以外の疾患に関連した退院18159人を対象とした英国の研究では,病院関連VTEの発生率に差はなかった(4.8/1000 vs 3.1/1000; オッズ比, 1.6[95%CI, 0.77-3.1]; P= 0.20) 4)

2020-12-30 16:55:39
呼吸器内科医@ @neznezxmail

American College of Chest Physicians(ACCP)のガイドラインでは,すべてのCOVID-19入院患者に対して,活動性出血などの禁忌がない場合には,未分画ヘパリンまたは直接経口抗凝固薬(DOACs)の代わりに,LMWHまたはフォンダパリヌクスによる予防が提案されている 5) pic.twitter.com/tSBAgehBLA

2020-12-30 16:57:29
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呼吸器内科医@ @neznezxmail

●これらの薬剤は抗ウイルス薬との相互作用のため,DOACsよりも好ましい ●2倍量または治療用量のLMWHが提案されているが,COVID-19重篤患者では標準的な血栓予防を行っているにもかかわらずVTE発生率が高いことを考えると,ACCPは臨床試験データがないことを踏まえて標準用量のLWMHを提案している 6)

2020-12-30 16:59:16
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●国際血栓症止血学会(ISTH: International Society on Thrombosis and Hemostasis)のガイダンスはCOVID-19のハイリスク患者では予防量として,治療用量の半量のLMWH(1mg/kg/日)を検討し肥満患者では50%以上の高用量を検討することが示唆されている; しかし,最適な予防治療法は明らかではない 7)

2020-12-30 17:00:48
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●COVID-19のハイリスク患者に対する予防としての全用量(full-dose)の抗血栓療法は臨床試験で評価されている ●COVID-19関連血栓塞栓症の病態生理には血小板の過剰反応が関与しているが,予防のための抗血小板療法の評価は現在進行中である 8)

2020-12-30 17:02:00
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●ハイリスクCOVID-19入院患者では,退院後もVTEのリスクが持続する ●しかし,ACCPは退院後の血栓予防を推奨していない ●対照的に,ISTHは出血リスクが低いハイリスクCOVID-19入院患者すべてに対して,退院後の血栓予防にLMWHまたはDOACを用いることを推奨している 9)

2020-12-30 17:03:02
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●ISTHは退院後の血栓予防期間を14~30日としているが,最適な期間は不明である ●入院を必要としない患者に対する血栓予防は現在のところ推奨されていない 10)

2020-12-30 17:03:50
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●現時点ではISTHもACCPもVTEの予防・治療の強度を決定するためのスクリーニングとしてD-ダイマー測定を推奨していない ●動脈血栓症および静脈血栓症はCOVID-19では一般的であり特に重篤患者でよく認められる ●全てのCOVID-19入院患者に対して禁忌がない場合には血栓予防を考慮すべきである 11/11終) pic.twitter.com/if98McqDVF

2020-12-30 17:06:19
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呼吸器内科医@ @neznezxmail

「アスピリンとCOVID-19の後ろ向き研究」 ★アスピリンの使用は,主要転帰である機械式換気リスクの低下と独立して関連していた ★アスピリンの使用はICU入院リスクの低下および院内死亡率とも関連していた 以下要約 1) pic.twitter.com/bhAdBZv8oR

2020-12-30 17:11:48
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呼吸器内科医@ @neznezxmail

●2020年3月~2020年7月において米国内の複数の病院における18歳以上の成人COVID-19入院患者を対象に,後ろ向きコホート観察研究を実施した.主要転帰は機械的人工呼吸の必要性であった(CPAPやBiPAPといった非侵襲的人工呼吸は含まない).副次的転帰はICU入院と院内死亡率であった 2)

2020-12-30 17:13:11
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●患者数は412人.年齢中央値は55歳.アスピリン投与は98人(23.7%),投与なしは314人(76.3%) ●投与患者のうち,75.5%は入院前に投与,86.7%は入院後24時間以内に投与.投与までの期間中央値は0日(IQR, 0-1日),投与量中央値は81mg(IQR, 81-81mg),投与期間中央値は6日(IQR, 3-12日) 3)

2020-12-30 17:16:59
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●Cox比例ハザードモデルで交絡変数を調整すると,アスピリンの使用は,主要転帰である機械式換気リスクの低下と独立して関連していた(調整後ハザード比[HR] 0.56, 95%CI, 0.37-0.85, p= 0.007) 4)

2020-12-30 17:19:01
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●副次的転帰では,アスピリンの使用はICU入院リスクの低下(調整後ハザード比[HR] 0.57, 95%CI, 0.38-0.85, p= 0.005)および院内死亡率(調整後ハザード比[HR] 0.53, 95%CI 0.31-0.90, p= 0.02)とも関連していた 5)

2020-12-30 17:19:38
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●主要転帰と副次的転帰のそれぞれを示すフォレストプロットを作成し,群間の調節後のハザードの違いをグラフ化した(1枚目) ●院内死亡率の生存関数はCox比例ハザードモデルから構築され,アスピリンの使用は群間の生存率の累積差を可視化するためにプロットした(2枚目) 6) pic.twitter.com/rD5lc7An65

2020-12-30 17:22:37
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呼吸器内科医@ @neznezxmail

●COVID-19患者412人を対象とした多施設コホート研究では,アスピリンの使用は機械的人工呼吸,ICU入院,院内死亡のリスク低下と独立して関連していた ●アスピリンはCOX-1阻害剤であり,トロンボキサンA2合成,血小板凝集,そして血栓形成を減少させ,抗血小板性および抗炎症性を有する 7)

2020-12-30 17:24:20
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●アスピリンの抗炎症特性は,COVID-19における肺保護効果にも寄与する可能性がある ●アスピリンは,心血管疾患患者におけるIL-6,CRP,マクロファージコロニー刺激因子の産生を減少させることが示されており,COVID-19では,これらの作用がサイトカインストームの発生率を減少させる可能性がある 8)

2020-12-30 17:25:43
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●アスピリンはCOX-2阻害作用も示し,IL-6とCRPの産生を減少させる ●アスピリンはARDSの全体的な発生率の低下と関連しているという報告もある(pooled OR 0.59, 95%CI 0.36-0.98)が,院内死亡率(調整済みOR 0.91, 95%CI, 0.46-1.78, p= 0.78)とは関連していない報告もある 9)

2020-12-30 17:28:05
呼吸器内科医@ @neznezxmail

●アスピリンの使用はCOVID-19患者において有益な効果をもたらす可能性があることが示唆された ●アスピリンの不可逆的な抗血小板作用とCOVID-19患者で高頻度に観察される高凝固性を考慮すると,これらの知見はもっともらしいものであるが,後ろ向き研究であることに注意 10/10終) pic.twitter.com/22LonYTeJj

2020-12-30 17:29:31
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