【やあ、元気か】福間健二 #k2fact280

福間健二 @acasaazul

やあ、元気か。ああ、なんとかやってる。きみはどうだ。夜明けの空を見ながら、ひとりの友のことを思った。かぎろい。炎のなかを黒い列が動いている。握手とかするとき、なにかぼくを困らせるイタズラをしたがった。ふりそそぐ光。どうか、仕掛けの糸、切れないように。（やあ、元気か１）#k2fact280

福間健二 @acasaazul

まだ溶けていない。一時間前の、あるいは大昔の、たとえば十九世紀的な復讐の星座の下の、階段の踊り場で対決した大きなボルト。そんなのが通る穴をあけられたらかなわないが、人間らしさも感じた。静かな夜にいきなり音が鳴った。だれのポケットの、雌ねじのナット。（やあ、元気か２）#k2fact280

福間健二 @acasaazul

溶けない。ちがう星座の下に目ざめる方法。それを使いすぎて居場所がわからなくなって惑う動物の、朝の食欲。コレスポンダンスあると思わないが、惑う星のひとつである金星のかがやき。そして山々。ひとり合点じゃないとしたい合図の音。ここにも交換できない硬さがある。（やあ、元気か３）#k2fact280

福間健二 @acasaazul

まあこんなものだろうと微笑む訪問者とともに用意した硬さだ。どう行使するのか。きみはうつむいていた。壁の色、窓の網、そのために遮られる視線。実は、ない。影と行為を待つ部屋。序列、作法、からっぽの金庫、どうでもいいとなって色が変わる部位から滴がたれている。（やあ、元気か４）#k2fact280

福間健二 @acasaazul

区切りとコンセプト。実は、そのどちらも。溶けてもかたまり、冷たくなり、流れない。物質的には見はなすしかない色をどう濃くしたのか。まだ息をしている過去。消えるのではなく、透きとおる。それを夢見た裏道の、いい香りの、意外な作物を両手で抱えて、立っていた。（やあ、元気か５）#k2fact280

福間健二 @acasaazul

黒い種類。赤い種類。どちらも、中はどうなっているだろう。そういう救い方。結局のところ、内側の天候はなんのために存在するかという問いだ。食ったり飲んだりして遊ぶため。だれかが簡単にそう言った。ほぼ期待どおりの、何もかぶらない寒月。ちゃんと怒っている。（やあ、元気か６）#k2fact280

福間健二 @acasaazul

錯覚、いけなかったのか。夜道の直線。雲を動かすだけでなく、落葉の山に隠れる道具にも迸るものを要求する。近づいてくる新種の生きもの。そんなものの中まで管理していない。できるはずない。エレベーターを先に作る建築現場。誤解され、誤解する。六階でも七階でも。（やあ、元気か７）#k2fact280

福間健二 @acasaazul

中まで赤いもの。中まで黒いもの。それぞれの、ひびわれる「私」にかまわず抱きあう人々を見た。呼吸が整わないまま、うしろ姿を作り、余る部分、何に奉仕する。夜と昼。夜と昼。反復、うれしいのはもうそんなこと無理だと思った瞬間におきる場合だ。リンゴはきみにやる。（やあ、元気か８）#k2fact280

福間健二 @acasaazul

やあ、元気か。コロナのせいだけではなく、不意にこぼれた涙の解釈から行きちがって、音階、別な五つを拾っていた。いいよ、そっちに合わせる。味や匂いのわからない社会からの琴を背負う使者とともに空色の石に刻み込まれる二羽の鳥だったころを懐かしがるのでなければ。（やあ、元気か９）#k2fact280

福間健二 @acasaazul

子ども時代のことじゃない。まわり道と最短距離、どちらも美しい虫にじゃまされて、こみあげるヴィニールの笑い、嵐の空、亀裂、太陽が明日のぼってこないという確信とその爆弾が行方不明になるまでの、とぼとぼ歩きの日々。思い出さない。でも、生きた。書いてしまった。（やあ、元気か10）#k2fact280