井木犴の瞬く夜に(完)

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

郝「それだと父は嬉しいかな」 瑾「…」 郝「もう喋っている時間はない。私が射る」 瑾「…」 郝「！」

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李成「なんの音だ？」 聞達「…焦げ臭いな」 李「屋敷が燃えてる！」 聞「消火だ！」 郝「騒ぎは起きたな」 瑾「…こんなことで、燕青殿たちは助けられるのですか？」 郝「信じよう」

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孫「…無駄が多い屋敷だ」 顧「ぶっ壊してやろうか」 孫「もうちょっと我慢しな」 顧「…煙の匂いだ」 孫「準備しろ」 陳「顧大嫂殿」 顧「郝嬌は？」 陳「まだ梁中書が付いていて…」 孫「時間がない。燕青に任せよう」 陳「…」 顧「心配しなさんな。私たちと燕青がついてんだ」 陳「…はい」

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食客「おい！火を消しに来い！豚！」 顧「」 孫(キレたな) 顧「この壺に水を汲んで参ります」 食「そんな高え壺使ってんじゃねえ！」 顧「へえ！そんな高価な壺なんで！」 食「てめえの重さくらい銀がありゃ買えるよ」 顧「そりゃいいね！」 食「！！」 孫(やりやがった…) 顧「豚じゃない。母大虫だ」

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食「てめえら！中書様の宝物庫で何してやがる！」 顧「…そんないい場所なんだね？」 孫(逃げる準備は、陳娥殿？) 陳娥(上々です)

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#井木犴の瞬く夜に 第五話

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李成「ちくしょう、誰の真似だ！」 聞達「中書様に報告しろ！」 梁中書「一体何事だ！」 郝嬌「火事です。中書様」 梁「助けてくれ！死にたくない！」 郝(…瓢箪矢の匂いだ) 梁「私を助けてくれ、郝嬌様」 郝「…中書様まで」 ？「…お助けしましょうか？」 梁「貴様は？」 李固「李固です。中書様」

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梁「誰でもいい！私を助けてくれ！」 李「…どうして仕事に来ただけなのに、こんな目に遭うのだろう」 梁「助けて！」 李「…あんたの屋敷だろう」 郝「可愛そうだから、一緒に出てあげましょう、李固さん」 梁「郝嬌様」 郝「よしよし」

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李「中書様！」 聞「どこに行った？」 李「探せ！」 聞「…俺は表を見てくる」 燕青「…どこに行った？」

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聞「…そこの親子」 郝瑾「！」 郝思文「…私たちのことですか？」 聞「梁中書様の屋敷に火矢を射たのはお前らか」 郝「なんのことで？」 聞「同じ火薬の匂いがする」 瑾「…」 郝「見逃しては、くれんよな」 聞「梁山泊か」 郝「その大刀は…」 聞「大刀の聞達だ」 郝「大刀は関勝殿ではないのか？」

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聞「お前は？」 郝「副官の井木犴」 聞「副官など相手にならん」 郝「どうかな」 聞「…粗末な剣だ」 郝「使いこなせん大刀よりはマシだろう？」 聞「…」 郝「…」 聞「死ね」 郝「…」 聞「！」 郝「!!」 聞「…馬鹿な」 郝「懐が広すぎる」 聞「」 郝「関勝殿が相手をするまでもない」

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李成「中書様！」 ？「やれ…」 李「…なんの音だ」 ？「…」 李「塔が!?」 ？「…」 李成「」 劉唐「塔も支えられんで天王を名乗るな」 楊林「…」 劉「どうした楊林」 楊「兄貴みてえな死に方だと思って」 劉「あいつなら支えられるだろう？」 楊「こんな罠にかからねえよ」

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孫新「もう気が済んだろう！」 顧大嫂「十万貫にゃ足らないよ！」 食客「これ以上宝物庫をぶっ壊さないでくれ！」 孫「母大虫をキレさせたあんたらが悪い」 陳娥「行きましょう、お二方」 孫「でけえ屋敷だから出口が…」 陳「嬌の地図がここに」 顧「よく覚えてるもんだ」 陳「嬌は…」

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孫「燕青を信じよう、陳娥殿」 顧「お前ら、邪魔したら叩き殺すからね」 食「…ご勝手に」

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#井木犴の瞬く夜に 第六話

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李固「この廃屋に隠れててください、梁中書様」 郝嬌「大丈夫だからね」 梁「ありがとう、郝嬌様…」 郝「李固さんにもお礼を言って」 李「どうでもいい」 郝「…じゃあ私行かなくっちゃ」 李「…そうはいかないんだ、郝嬌」 郝「そうだった。青蓮寺の人だったのよね、李固さん」 李「ああ、そうだよ」

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郝「でも、青蓮寺の人なのに、優しいのね」 李「…そんなわけはない」 郝「私まだ捕まってるの？」 李「…逃げるか？」 郝「いいの？」 李「…きっと奥様ならそうすると思った」 郝「奥様？」 李「梁山泊のせいで、いなくなってしまったが…」 郝「…そう」

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燕「…」 李「燕青！」 燕「…李固か」 李「お前らが！」 郝「李固さん？」 李「お前らが！梁山泊などに与していなければ！」 郝(すごい怖い顔に…) 燕「…」 李「何が義賊だ！何が替天行道だ！お前らのせいで！奥様は！」 燕「」 李「」 燕「…すまん」 郝「もう許してくれないよ」 燕「そうだな」

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郝「辛い、燕青殿？」 燕「…少し」 郝「帰ったら、少し慰めてあげる」 燕「…ありがとう」 李 郝「…李固さん」 燕「いい奴は、梁山泊に入れないんだよな…」

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燕「待たせた、郝嬌」 郝「待ってたよ、燕青殿」 燕「…一度だけ、言ってみたい台詞があるんだが、今言ってもいいかな？」 郝「燕青殿？」 燕「…」 郝「…どうぞ」 燕青「いつだって、あなたのそばに」 郝「…どういう意味ですか？」 燕「…いつか言ってみたかっただけさ」 郝「どうして？」

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燕「だって、悲しい台詞じゃないだろう？」 郝「…そうね」 燕「だから、そんな時に一度だけ、言ってみたかったんだ」 郝「…」 燕「…」 郝「…でもちょっぴり、悲しいね」

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郝思文「一騎討ちなど初めてだ」 郝瑾「…将はよくやるんじゃないですか？」 郝「私は副官だよ」 瑾「…」 郝「副官でも、やる時はやるだけさ」 孫新「郝思文！」 陳娥「あなた」 郝「陳娥！」 瑾「嬌は！」 顧大嫂「燕青はどこだい！」 燕青「ここだよ」 孫「いつの間に！」 郝嬌「…」

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燕「この騒ぎでよく寝てられる」 瑾「起きろ、嬌」 嬌「兄上？」 瑾「また心配かけて！」 嬌「…泣いてるの？兄上？」 瑾「泣いてない！」 嬌「じゃあおんぶして」 瑾「なんでだ！」 嬌「…疲れたの」 瑾「…しょうがない」 郝思文「一家揃ったな」 孫新「早い所ずらかるぜ」 燕「任せておけ」

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#井木犴の瞬く夜に 最終話

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燕青「…」 孫新「どうした、燕青」 燕「…一度言ってみたかった台詞を言ってみたんだ」 孫「へえ？」 燕「それだけさ」 孫「どうだった？」 燕「…本当に、言いたい人がいた」 孫「女か？」 燕「…違う」 孫「もう言えんのか？」 燕「二度と」