井木犴の瞬く夜に(完)

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

孫「そんなもんさ。言いてえことを言いてえ時に言える奴なんていねえんだよ」 燕「…そうかな」 孫「たまには女房の飯でも食おうじゃないか、燕青」 燕「…悪くない」

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

郝思文「二竜山に手紙をしたためてくる」 陳娥「私も梁山泊に報告書を」 郝嬌「…」 郝瑾「…人の気も知らないで」 金翠蓮「良かったね、郝瑾くん」 瑾「翠蓮殿！」 金「久しぶり。大きくなったね」 郝「…はい」 金「明日二竜山に帰るんでしょ？会えて良かった」

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

郝(すっかり明るく、綺麗になったんだな…) 金「弟みたいだった郝瑾くんが…」 郝「翠蓮殿」 金「どうしたの？」 郝「少し、外を歩きませんか？」 金「…いいけど」 郝「星と、月が綺麗ですから」 金「分かった」 郝「…」

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

郝「あの星が、井木犴だそうです」 金「お父さんの星なんだ」 郝「…父上ならもっと星のことを知っているのですが」 金「…今のうちに教えてもらっときなさい」 郝「翠蓮殿？」 金「教えてもらわないままだと、きっと後悔するから」 郝「…はい」 金「…」 郝「…翠蓮さんの料理が食べたいです」

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

金「作ったばかりの時は大変だったわね」 郝「全然そんな事なかったです！」 金「本当？」 郝「翠蓮さんの作った料理ですから…」 金「…家族って素敵ね」 郝「翠蓮殿？」 金「あなたたちの家族と少しだけでも一緒に暮らせて、本当に良かったと思ってる」 郝「…」 金「宣賛様とも家族になれたから」

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

郝「私は…」 金「郝瑾くん？」 郝(あなたが好きでした…) 金「…帰ろうか」 郝(きっと届かないだろうけど) 金「手、繋ぐ？」 郝(男になれ、郝瑾) 金「どうしたの？」 郝「翠蓮さんのことが、好きです」 金「…そう」 郝「…」 金「幸せだよ、とっても」 郝「…」

すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

金「その気持ち。大切にしまっておくね」 郝「…私も、この気持ちを届けられて、よかったです」 金「…帰ろう、郝瑾くん」 郝(もう二度と、一緒に歩くことはないんだろうな) 金「…忘れないから」