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前回までのあらすじ。 「俺妹であやせがお兄さんにやったやつ。そうアレのもっとキツいの」 回復の使えない僧侶は回復ではなく痛めつけることに特化した凶悪僧侶だった! でも相手が魔物だから何してもいいよね!
2021-01-18 12:27:19「少し…燃えてしまいました…」 「燃えたのはゴブリンの足だね…」 破戒僧の破戒僧による破戒僧の為のダイナミックゴブ虐から一夜明けて。 我らが勇者パーティのうち、勇者、戦士、そして件の僧侶が砦の片隅へこそこそと集まっていた。
2021-01-18 12:45:50まあ、事情聴取である。 当人がはしたない姿を見せてしまい…みたいに頬を染めて恥じらっている向かいで勇者はいまだに青い顔でげっそりしているし若いながら歴戦の戦士さえ重苦しい顔で腕を組む。 魘されている魔法使いを起こさないようそっと僧侶を連れ出したはいいものの、話は特に進んでいない。
2021-01-18 12:53:51「ええと…戦士、僕は情けないながらあの場で卒倒して魔法使い共々お前に抱えて帰ってもらったわけだけど。あの後どうなった?」 「聞きたいか?」 「聞きたくない…」
2021-01-18 12:55:29「お前が倒れたのは最初のゴブリンの足が焼き切れた時だったな。やつは事切れたように動かなくなり、その後も連続して同じことが起きた。実を言うとその時点で二人を抱えて現場を離脱、砦へ戻って少佐へ報告した後のことは覚えていない」 「そっかぁ…そっかぁ…」 勇者は心底嫌そうな顔で頷いた。
2021-01-18 13:00:01「…正直言うとショック死している方がいくらかマシだと思いたいところだ」 「僕も…」 「しかし、まさか義足を用いるわけでもあるまい。確実に戦力としては使い物にならん。そういう意味では他のゴブリンへの見せしめにもなる、か?」 「一応聞くけど僧侶さん、そういう狙いとかは?」
2021-01-18 13:13:43「私はただ、悪いことをしたものに罰を与えたに過ぎません」 一切の罪悪無し。と言った顔で、言い切る。 つまりそれは、誰の目にも明らかな、「しらばってくれている」顔であり。 悪意に基づいた行為であったと自白しているも同然である。
2021-01-18 13:17:44実を言うと二人は既に兵士から現場について報告を受けている。 「焦げ臭い悪臭と炭化して落ちた四肢、苦痛に耐え切れず事切れたと思しき外傷の少ない死体が散乱していた」 と。 四肢。
2021-01-18 13:24:51「…僧侶よ。お前は回復を使えぬ破戒僧なれど、その技と心は本物の僧侶であると確信している。…何がお前をあのような苛虐に突き動かす」
2021-01-18 21:16:56「私、元はと言えば別のパーティにいたんです」 「えっ、そうだったの」 「あの腕利きが在野に生まれるものかと、ある程度察しはついていたがな」 「あ、ずるい戦士。そのセリフは有能キャラアピールできるやつじゃん」
2021-01-19 20:36:51「でもすごいなぁ。センパイってことはこの砦を切り拓いたようなすごい勇者を知ってるかもしれないってことじゃん」 「ここの地下は私が同行した勇者が作った大穴を利用したものです」 「当事者だったか…」 「ええ。一年半前には最前線を走っておりました」
2021-01-19 20:43:21そこで一瞬、戦士は茶化すかどうか逡巡した。 やめたのはさっきまでグロッキーだった勇者がこちらに視線で強く訴えたからだ。 「私たちが至ったのはこの大森林を抜けた先、竜の屍山まで。聞いた話によれば最近さらにその先、私たちが眺めることしか叶わなかった幻海に港湾を築いたとか」
2021-01-19 20:55:00喜ばしいことでございますね、と。 まるで他人事のように僧侶は言う。言い捨てる。 立ち居振る舞いは相変わらず清楚で誠実。 だが、裏にちらつくものを隠さなくなった。
2021-01-19 20:57:55「ええ。私たちは屍山の踏破に成功し、海の発見をして魔王討伐に最も近いとすら言われた勇者の一行。ですが、それは半分正しくて全部間違えていた」
2021-01-19 21:35:02「四天王に叩きのめされたのです。文字通り。何もできず。何も残せず。何も奪えず。私の命以外全て奪われました。…まあ、そんな感じの月並みな末路でございました」 茶化した。最後の最後で。
2021-01-19 21:39:11ただ、そこはさすがの破戒僧。勇者が重たい口を開いてコメントしようとするのを見計らって畳み掛ける。 「やつは這いつくばる勇者に言いました。その女を差し出せば命だけは助けてやろう。月並みですよね。応じました。一瞬で。食い気味に。私はあっさりとやつに差し出され、ええ、凌辱されましたね。
2021-01-19 22:04:28自分で言うのも何ですが、うら若き乙女の清らかなる貞操は少々上等な程度の魔物による在らん限りの陵辱によって汚されたわけです。前も後ろも上も髪の毛から爪先まで犯し抜かれ、永遠かと思われるほど続く惨たらしい仕打ちに私、不覚にも正気を失っておりました。
2021-01-19 22:09:55おそらくその時に余計なことを言ったのでしょうね。やっと得られた休息中に正気を取り戻しわずかな魔力を振り絞って森まで魔法で転移したのが最後、私は神の加護を失っていました。おまけに気力も体力も尽き果てさらに言えば服もなく、ええ、運び込まれたあの砦では人に犯されました。
2021-01-19 22:15:36最初は警護の兵士、次はその同僚、次は冒険者、勇者だった時もありましたね。どうやら最初の兵士に売られていたようで。頻度も夜毎から昼間、時には兵士を通さず忍び込んだ連中や酒に酔って押し入ってきた勇者も。 ええ、お察しの通り私がここで見つけた知り合いとはその兵士です。
2021-01-19 22:18:41迂闊ですね。そして腐っている。あれだけ派手な汚職もあっさり隠蔽され、のうのうと仕事を続けているだなんて…ふふ。私あの老いぼれが嫌いです。未来しか見ていない豆の腐ったようなおつむと澱んだ目が屍山で倒したゾンビのようで。 私は遭遇した四天王の情報を提供した後、後方へと戻りました。
2021-01-19 22:22:49