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「皆。まずは礼を。私のような未熟者の掲げる旗の下へよく集ってくれた」 裁判の後日。リーシャはある企画をぶち上げた。 本人の演説では一時間ほどかけて灼熱の篭った説明をして耐え忍んだ騎士を何人か医務室送りにしたので要約すると、人を襲う悪い竜の親玉をぶち転がしてやろうという、
2021-02-14 21:47:50つまり「悪竜討滅隊」の結成である。 竜から剥ぎ取った素材で大儲けしている聖教的にはありえない発想だったが彼女はそんなことも露知らず、己の正義感に従い有志を募ることにしたのだ。
2021-02-14 21:49:18不思議なことに上層部も積極的に止めはしなかったようで、そうなると困ったのは騎士の方。 様々な派閥の重鎮がこそこそと寄り合い人数実力のバランス調整を行い、その上で志願希望者と面談をしあれこれ言い含めやっと志願を許した。 それだけ影響力のある人間なのだ、リーシャは。
2021-02-15 00:36:52そうして集まった志願者たちの前で、彼女はその全員を隊員として採用した。 「これより我々は悪竜の祖ニーズヘッグを討つ。今まで多くの騎士が挑み、しかし成し遂げられなかった大偉業となるだろう。しかし、これ以上竜によって人が苦しめられることはあってはならない。…諸君の中には、
2021-02-15 00:43:02親兄弟を失い聖教の施設で育った者も多いと聞く。そのような子供を出さないためにも、我々は進むのだ!…と言っても、まず居所がわからない上に脅威となる名有りの竜も多い。一つ一つ、確実に進んでいくとしよう」 きっ、と引き締めていた表情が緩み、全体が朗らかな雰囲気になった時だ。
2021-02-15 00:50:23男は現れた。 「あ…ラース!」 空気に亀裂が走るような感覚。ひりひりとした視線。その全てを受けて彼はゆっくりとリーシャに歩み寄る。整列している隊員側、ではなく。
2021-02-15 00:54:15「紹介しよう!私の知る中で最も誇り高い騎士、クロムウェル・ラース。私の副官として招聘した!」 隊員たちの顔が引き攣るのも構わずウェルは慇懃に頭を下げる。何故か漆黒の鎧は全身を覆う刺々しい意匠に変わっていた。 「…と言うのも、先だって彼が裁判にかけられた後、明確に無実の判決が出ず
2021-02-15 00:59:11結局要監視の身となってしまってな。それを私の隊へ引き取ることで解決することにしたのだ!」 「全く、リーシャ様には感謝してもしきれません」 「ふふ。ラースは必ず私の役に立ってくれると信じているぞ」 「はい、必ずや。それと、その苗字はあくまで孤児としての自分につけられた仮のもの。
2021-02-15 01:12:20どうか名前で、ウェルとお呼びください」 「…うん、わかった!ウェル、よろしく頼む!」 年の頃で言えば似たような若者二人の、それは微笑ましい光景かもしれないが。 派閥に属さぬまま重要人物の懐へ潜り込んだ危険な生物を周囲は年中
2021-02-15 01:33:20