コリアン人名の原音読み「支持」に見る田中克彦のレイシズム

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また、漢字で征服された日本語無しに日本列島で日本語（大和語）、更には大和民族が果たして圧倒的優位に立つような現在の状態もなかったであろう。琉球とアイヌを除いても、多くの言語が残存したと思う。まあ、田中にはこれが理想なのかもしれないが（笑）。

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少なくとも、漢字征服以前に「ニホン語」のようなものが存在し、それが列島の大部分で、その言語が話されていたと考えるのは全く根拠のない話である。 突き詰めて言えば、日本語は列島の諸言語が漢字に征服されることによって初めて成立した言語なのである。

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まあ、漢字に征服されて成立したというなら、日本語だけでなく、朝鮮語も漢語（漢民族の言語、いわゆる中国語）もそうであるし、最大の征服を受けて成立したのは、いわゆる中国語自身かもしれない。

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はっきり言ってコリアン人名の原音読み（正確には原音に近い読み）は当事者であるコリアンが要望しているから、それに従うのであって、別に原音読みが正しいと思ってやっているわけではない。逆に、これが「正しい」とばかりに嫌がっている当事者にまで押しつけるようなものではないと思う。

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例えば、コリアンと違って必ずしも原音読みを要望していない中国人に対しても、原音読みが「正しい」のだとばかり、それを押しつける傾向があるが、果たしてどんなものかと思う。もっとも、中国人自体がどう読まれようと感じさえ正確であれば余り気にしていないのかもしれないが。

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例えば、いわゆる「学術的」根拠を挙げて、アイヌなどの民族的独自性を否定しようという議論はネット上に氾濫しているが、最も重要なのは何らの「学術的」根拠ではなく、当事者の歴史背景に基づいた意識（アイデンティティ）であることは言うまでもない。

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人名の読み方に「正しい」基準があるわけではないと思う。正しい基準があるとしたら、それはその人の要望通りに読む以外にあるまい。実際、たとえコリアンであっても、その個人が日本読みを要望しているならば、それに従うべきであり、少なくとも日本人が「それはおかしい。朝鮮音で読むべきだ」➡

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などとはいえないはずである。 最近、さる界隈で起こった「在日」の文字表記に関する論争にしろ、「在日」はほぼ在日コリアンという民族集団を指す名称となっており、そう考えるならば、「支那」同様、相手の嫌がる呼称や表記を避けるのは原則ではなかろうか。

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これについては、表記もまた重要な要素であり、「漢字で書こうが、カナで書こうが、ローマ字で書こうが意味は変わらない。言語の本質は音声」などと開き直れるようなものではないだろう。音声だけでなく表記もまた人名・国名・民族名などの重要な表現要素であることは言うまでもないだろう。

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その点、在日の名前の原音読みを支持した田中克彦が、彼らに対して「日本人に朝鮮人の名前をその発音通りに読ませるためには、あなたがたは漢字をやめてカタカナで名前を書いてください」などと発言してコリアンの猛反発を受け、殆ど「袋叩き」のような状態になったのは当然と言えば当然の報いである。

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基本的に田中には何か漢字を使わないのが「正しい」表記法だという思想があって、その「正しさ」への信念から、コリアン人名の原音読みを支持する一方で、彼らに漢字不使用を要求して「袋叩き」にあったと思うのだが、やはりこのある種の表現法が「正しい」から支持するという思想が誤りだと思う。

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最初に述べたように、基本は原音通りに読むのが「正しい」からではなく、コリアンがそう要望しているから、それに従うのであって、逆に仮に中国人が日本読みでの漢字の発音を希望したとしたら、たとえそれは「おかしい」と思っても、それを尊重すべきである。

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なお、野間易通氏の文章によって上の田中克彦「チォエさんの要求に思う——民族呼称と差別」（『法廷にたつ言語』所収）に載せられたエピソードを知ったのだが、私自身は上のように田中克彦に対して野間氏とは、ほぼ正反対の感想を持つに至っている。

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野間氏は《田中は、言語の本質は表記ではなく音にある、ということを明快に示した。それこそが、チォエさんの要求の正当性を担保する根本的な言語の性質なのだ》と述べるが、これには全く同意できない。 チェオさんの要求の正当性は田中が示したような言語学的「正当」性によって担保されるのではない

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もし、言語学的「正当」性によって担保されるような性質のものであれば、これは容易に別の説からなる「正当」性によって覆されるであろう。 そのような「正当」性ではなく、コリアンの原音読み要求は当事者の彼らがそう要求しているという一点において担保されるべきなのである。

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大体、田中のようにある民族に対し、その文字表記法（漢字使用）をやめろなどと説教を垂れるのはレイシズム以外の何物でも無いと考えるし、その田中を当然視する野間氏にしても、控えめに言って、その反レイシズムの思想については、かなり眉に唾をつけて検討せざるを得ない。

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まとめるならば、当事者の当然の自己決定権に属する問題に対して、非当事者の田中克彦が「やめろ」と言って「袋叩き」にあったのであり、これは決して「当事者がやめろ」と言った問題ではない。 このような田中の発言に対しては、たとえ当事者が黙っていたとしても、「やめろ」というほかはないだろう

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「国家を持てる民族」=ネィション、持てない民族=エスニシティという分け方がおかしい。 そもそも、国家とは多民族なものであり、特定民族の国家という考え方がおかしい。当然、ユダヤ人国家も。