コリアン人名の原音読み「支持」に見る田中克彦のレイシズム

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ネイションとエスニシティとは日本語で共に「民族」と訳されるが、両者は違うものだという意見がある。だからといって、大和がネイションであるのに対し、アイヌなどはエスニシティであるとし、旧ソ連のように両者の間に等級をつけ、あろうことか後者を「部族」などと称するようなことには賛同できない

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私的には、たとえ圧倒的な人口差があろうと、大和とアイヌ・琉球は対等とすべきであり、言うならば皆エスニシティであって日本というネィションを構成していると考えたい。勿論、このネイションは日本の現状では、「民族」とは訳さず「国民」と訳されるべきである。

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例えば、フランスはネイションであり、フランス民族というものを構成していると思われるかもしれないが、ある意味、これは日本民族以上の「虚構」であり、フランスというネイションは多くのエスニシティの集合体である。勿論、フランス政府は国内少数民族の存在を一切認めようとはしていないが。

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なお、大和もアイヌも共にエスニシティだという見解に対しては、アイヌは大和と違って単独で国家を形成できないという反論が出るかもしれない。しかし、大和単独で国家を形成しようという試みは現実に「民族浄化」以外の何物でもなく、これこそ危険な「空論」と言うべきであろう。

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このようなことを書いたのも、ツィッターのある界隈で、「日本民族」をめぐって議論が起きたからだが、ただ世界には次のような考え方があることも紹介しておきたい。

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《上位概念としての日本民族は、大和民族の上にある。対等の概念としてアイヌ民族と大和民族があって、その上ではじめて日本民族が成立する》 これは橋本萬太郎編『民族の世界史５ 漢民族と中国社会』（山川 1983）終章の座談会「現代の漢民族」での台湾出身の研究者・戴國輝氏の発言である。

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上の場で戴國輝氏はアイヌ民族を日本民族に含めない北大の日本人アイヌ研究者（児玉作左衛門）を「それではアイヌを大事にすると言っても信用出来ない」と批判し、さらに《琉球民族を大和民族の一分枝ち位置づけ》させたがるのか疑念が尽きないと述べている。

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現在の中国では、中華民族は漢族だけでなく55の少数民族全てを包括しているという考え方が提唱されているが、戴國輝氏を見ると、このような考えた方は大陸と台湾とで共有されているようである。

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私的には、民族アイデンティティとは重層的なものであるという考え方は面白いと思う。少なくともネイションとエスニシティとを共に「民族」と訳した場合、そういう発想も出てくると思うのだが、日本の一般状況ではなかなか難しいかもしれない。

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しかし、「中華民族の民族はそもそも国民というべきものだ」などと言っている人は、「民族」も「国民」もそもそもネィション（nation）の訳語であることを忘れている。

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その点、中国が「民族」との名称を「中華民族」の場合にのみ用い、それに含まれる56の民族においては、人口10億を超える漢族から人口数千の極小民族に至るまで、すべて○○族と呼称していることは注目に値する。

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ネイション（nation）もエスニシティ（ethnicity）も共に「民族」と訳される一方で、前者は「国民」とも「民族」とも訳されるのである。

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なお、上の戴國輝氏が批判した「アイヌ民族を日本民族に含めない北大の日本人アイヌ研究者（児玉作左衛門）」については、以下のような事実を指摘しておく。 togetter.com/li/1558735

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田中克彦『法廷にたつ言語』到着。 パラ読みしだしたが、中国語のことを「シナ語」などと表現しており、この人物に対するレイシスト疑惑は深まるばかりである。漢族の言語と言いたいのなら、現代中国でそう呼んでいるように「漢語」という言い方もあろうに。 pic.twitter.com/iwxR0qVfS4

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田中克彦とは中国が嫌いなのか、漢字が嫌いなようである。上書所収『モンゴル語は漢字を使わない』。 モンゴル人が母語の表記に漢字ではなくウィグル文字を採用したのに対し、日本朝鮮は漢字以外に選択がなかった。漢字と競合するような別の文字があれば、今日とは異なった光景が現れていたであろうと

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確かにその通りであろう。その場合、現在のような日本語や朝鮮語は成立していない。そもそも「日本」も「朝鮮」も中国渡来の漢語である。良くも悪くも、日本語も朝鮮語も中国語同様、漢字によって作られた言語である。

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日本・朝鮮という名称に止まらない。漢字語によって表現される高位の概念の移植無しに果たして日本や朝鮮という千万単位の人口を数える統一体（国家や民族）は果たして形成できたのであろうか！ 勿論、遊牧地帯のモンゴルに対し、日本や朝鮮は農業地帯であったと言うことも考慮しなければならないが。

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更に田中は認めないだろうが、多数の欧米語が漢語に翻訳出来たことも、近代化促進に有利であったことは否定できない。いくら田中が賛美しても、漢字を使わないモンゴル語の造語力は限界があり、独立国を形成したはずの外蒙でも結局、ロシア語語彙を採用するほかなかったのは彼の指摘する通りであろう。

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私自身は、他の歴史学者も指摘していたように、モンゴルが農耕地帯であれば、モンゴルもまたウィグル文字ではなく、漢字を採用していたと考えている。日本・朝鮮・ベトナムのように。

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確かに日本・朝鮮が漢字を採用したのに対し、モンゴルが漢字を採用しなかったことを両者の能力の差とするのは、田中克彦が指摘するとおり間違いである。基本的には農耕と遊牧との生産力の差であると考える。これは田中が指摘していないことだが。

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結局、田中は漢字に征服された日本語に対し、されていないモンゴル語を讃えているのだろうが、既に述べたように漢字に征服されていなければ、「日本」という国号も成立していない。ニッポン・ニホンと発音される集団は存在していなかったのである。田中によれば、文字ではなく音こそ言語の本質らしい。