寺生まれの毛利

種 一＠刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「貴様もくだらない事をやっている暇があったら、居酒屋のバイトでも探すがよい」そう言って毛利は、席を立って行ってしまった。 #kaidan_bsr

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@now_fes その夜、俺は政宗の車にて男四人というむさ苦しいメンバーで、問題の場所へ向かっていた。毛利にひどい目に遭う、と言われて行く気がしなくなっていたが、ビビっていると思われるのは癪で結局参加した。 #kaidan_bsr

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@now_fes 現場が近づくにつれて道幅は細くなり、左右は茂みに覆われていた。外灯もまばらで、行き違う車など全くない。その数少ない外灯さえ、電球が切れているのか明かりを灯していないものが目立った。 #kaidan_bsr

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@now_fes 初めは騒いでいた三人の口数も少なくなり、何か感じるのか隣に座った真田の表情が強張りだす。ほどなくして、車は少女が見つかった場所に着いた。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「ここだな」俺達は車を降りた。「なーんか気味悪いね」と猿飛が言うと「おまけに、肌寒くはありませぬか？もう夏だというのに……」普段腹を出していても寒いなどと言った事のない真田まで、両腕を抱くように摩りながら同意する。 #kaidan_bsr

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@now_fes 外灯が頼りなげにやっと道路上を照らし、道の左右は濃い闇に覆われていた。昼間でも滅多に人は通らない。こんなところに僅か五歳の少女は置き去りにされたのか。 #kaidan_bsr

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@now_fes 不安げな二人に向かって「Don't worry、もし悪霊が出てもこれがあったら逃げられるぜ」政宗がわざとらしい明るい声を出しながら、紙包みを取り出す。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「んだそれ」俺が尋ねると政宗は包みを開く。それはコンビニで買ったと思われるホットケーキだった。車内で甘い匂いがすると思っていたが、これだったのか。 #kaidan_bsr

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@now_fes 政宗の聞いた噂によれば、少女はホットケーキが好きだったという。だから少女が現れたらホットケーキを投げつければいい、と。それに気を取られている間に逃げられるという事らしい。　馬鹿馬鹿しい。マジで都市伝説じゃねぇか。 #kaidan_bsr

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@now_fes 緊張が解けてきたのか、他の三人はもってきた缶ジュースやお菓子を食べながら話をして笑っている。完全に興味を失っていた俺は一刻も早く帰りたかったが、足は政宗の車だけだ。もうしばらくの我慢か。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「なんも起きないし、蚊に刺される前に帰ろうよ」飽きてきたのか猿飛が欠伸を零す。「そうだな、そろそろ行くか。カラオケでもいかねえ？」「ああ、いいねー」三人はゴミを片付け始めた。 #kaidan_bsr

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@now_fes やれやれ、やっと帰れる。車に戻りかけたとき、視界の隅で何かが動いたような気がした。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「あ？」俺は足を止め、道端の茂みに視線を移す。「What's happening?」政宗が俺の肩に手をかけながら訊いてきた。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「いや、何か動いた気がしたんだが」「どこが」　　俺が指さしたそこはまさに少女が遺棄されていた場所だった。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「ややや、やめてくだされ！」「OKOK、わかったからもう行こうぜ」あからさまにビビる真田を政宗は笑う。どうやら冗談だと思ったらしい。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「待って」猿飛もそこに目を向けて言った。「なんか、見えてこない……？」 #kaidan_bsr

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@now_fes 俺達四人は視線を一点に向けたまま動けなくなっていた。暗い茂みの中。その中に浮かび上がるようにぼんやりとした白いものが形を作り始めた。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「嘘、だろ……」猿飛の引き攣った声が上がる。ぼんやりした白いものは人のような形になり……はっきりと人の形になり……それは小さい女の子のような形になり……　　　「マジかよ……」政宗が呻くように言った。 #kaidan_bsr

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@now_fes 茂みの中からゆっくりと少女が出てきた。可愛い子だ。腰までの長い黒髪と潤んだ大きな瞳。大きくなれば間違いなく素晴らしい美人になっただろう。そんな子供が不安げながらどこか呆けたような表情で俺達を見つめていた。頬には涙の跡がある。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「ここは、どこ？兄様はどこに行かれたの……？」少女は泣きそうな、か細い不安を煽るような声で呟いた。真田がひい、と喉の奥で悲鳴を上げる。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「ねぇ、兄様は？ここは暗いの……。お家へ、帰りたい……」少女は少しずつ、俺達の方へ近づいてくる。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「消えやがれ！」政宗は声が震えるのを押し殺してホットケーキを少女に向かって投げつけた。「いやっ……！」少女は小さく悲鳴を上げる。ホットケーキは少女の顔に当たった。　　かのように見えたが、少女の身体をすり抜けて茂みへと消えた。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「怖い……怖いぃ……」少女は蹲って、泣き始める。これが悪霊？ただの女の子じゃないか。泣いて怖がって、寂しがってる女の子じゃねぇか。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「今のうちだ！」政宗の声に真田と猿飛は弾かれたように車へと駆け戻る。「おい！なにしてやがんだ、逃げるぞ！悪霊だ、殺されるかもしれねぇ！」茫然と立ち尽くしている俺の腕を引っ張って政宗が叫んだ。 #kaidan_bsr

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@now_fes 「怖い……怖いよぉぉ……」それまでか細い声だった女の子の声が急に変わった。「え……？」俺達は全員足が竦んで動けなくなった。 #kaidan_bsr