寺生まれの毛利

寺生まれの毛利さんシリーズの1話目です。 ※コピペ
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種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「ここはどこ?帰りたい……!怖いよぉぉお……!」聞いただけで冷や汗が吹き出るような恨みの篭った声で叫ぶと、少女は顔を上げた。その瞬間少女の足元からブワッと黒い影が伸び上がり、複数に分かれて長い腕のような形を作り出す。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:03:14
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「Shit!」政宗は残っていたホットケーキを投げつけようとした。少女は政宗の方に顔を向ける。それと一緒に黒い手もザワと蠢いた。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:06:33
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「馬鹿が!やめやがれ!」俺は叫んだが、政宗は勢いよくケーキを投げつけた。少女が立ち上がると、鋭い鉤爪のような手が政宗に向かう。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:07:59
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「うぉおお!」黒い腕が絡まって政宗が転倒した。真田が絶叫し、猿飛も腰が抜けたようにその場に座り込む。「怖いよぉお……!!」少女が音なく近付いていくほどに政宗への拘束が強くなる。俺は駆け寄って政宗を引きずり出そうと思ったが、身体が動かない。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:10:13
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「そこまでよ」この声。俺が振り返ると、奴が立っていた。寺生まれで、霊感の強い毛利が  #kaidan_bsr

2011-07-15 00:14:11
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes ――助かった。俺は思った。すぐに毛利は両手を上に突き上げる。そして「照」と言ってあの光を呼び出すはずだ。もうすぐだ。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:16:19
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「娘よ。こちらに来い」毛利はあの掛け声の代わりに、優しく語りかけた。俺は驚いて毛利を見た。いつもの仏頂面はどこへやったのか、毛利の顔は慈しむような表情を浮かべていた。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:17:27
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 優しく微笑みながら「これを兄から預かってきた」そう言って、手にしたものをすっと差し出した。それは白い皿に載った――手作りと思われるホットケーキだった。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:19:27
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「は?」政宗に巻き付いていた腕がかき消えたかと思うと、次の瞬間少女は毛利の前に現れた。「ほん、と……?」「ああ、お前の兄が作ったホットケーキだ」 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:22:21
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 毛利はその場にしゃがみ込むと、少女に皿を手渡す。少女の周りに咲いていた黒い腕は消えていた。さっきとよく似た呆けたような、でも不安な表情ではなく、嬉しそうな笑顔を浮かべている。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:23:46
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「嬉しい……。兄様のホットケーキ、市大好き……」「そうか」毛利は少女の頭を撫でた。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:25:01
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「あなたは、市を兄様の所に連れて行ってくれるの……?」少女はしゃがみ込んで同じ目線になった毛利の目を見つめる。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:26:21
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「今すぐというわけにはいかん。兄は遠くにおるのだ。故に、それを食べて待っておれ。きっと、すぐ参るであろう」「うん、うん……」少女は嬉しそうに頷く。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:28:42
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「良い子だ」「ありがとう……お兄さん、ありがとう……」少女の姿は薄くなり、やがて見えなくなった。毛利はゆっくりと立ち上がる。そしてその場にへたり込んだままの俺達に目を向ける。それまで優しい表情を浮かべていた毛利の顔が一気に険しくなった。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:32:03
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「この馬鹿共が!」毛利は、いつもの冷静な態度なんて嘘のようにビリビリ腹に響く声で怒鳴りつけた。突然の雷鳴に遭ったように、俺達はひっと喉を鳴らして首を竦める。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:35:06
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

「悪霊だのと阿呆な事で盛り上がりおって!生者の念に死者の念は容易く同調するのだ!特にあの者のような無垢な魂は砂漠が水を吸い込むように同期してしまう。貴様らはあの子供を本当の悪霊に仕立てようとしておったのだぞ、わかっておるのか!」鬼のような形相で毛利は言う。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:36:55
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「そんな……」「それでも生者の悪意を吸い、人に仇なす悪霊に転ずれば浄化する他ない。それがどういう事かわかるか?輪廻の輪から外れ、成仏も出来ぬ光も音もない闇に永久に一人きりよ。悪霊でもなんでもない、ただ兄に会いたいと泣いていた子をだ!」#kaidan_bsr

2011-07-15 00:40:36
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 政宗が青褪めながら頭を下げた。「すまねぇ……そんなつもりは」「面目ない……!」真田は泣いているし、猿飛も俯いている。もちろん俺も。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:44:30
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「我に謝っても何にもならぬわ」そう言うと、毛利は俺達に背を向けた。「謝罪ならば、あの子供に送るがよい」 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:46:01
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 俺達は車に乗ってその場を後にした。毛利も車で来ていたので、家の方向が同じだった俺は毛利の車に同乗させてもらった。俺は思った事を毛利に尋ねた。「あのホットケーキは本当にアイツの兄貴が作ったのか?」 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:48:30
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「あぁ、あれの兄は今も毎日仏壇に供えておる。大好物だったそうだ。仲が良い兄弟だったとも聞く」「なんでそれを?」「黙って持ってきた。あれに渡すのだから構わんだろう」それは不法侵入と窃盗じゃねぇかと思ったが、あの子本当に喜んでたもんな……。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:49:39
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 毛利はハンドルを切ると、深夜営業しているリカーショップの前に停まった。「どうしたんだ?」「あやつのために今夜は部屋で弔い酒でも用意しようと思っただけぞ」「あ……それなら俺も一緒にいいか?」毛利はニヤッと笑う。 #kaidan_bsr

2011-07-15 00:55:33
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「構わんが。やはりいい酒が飲みたいな、一本980円などという安酒ではなくて」「あぁ」「安酒はいかんな、こういう時は」「そうだろうなぁ」「最低一本一万は必要であろうよ……あぁ、我は財布を持っていただろうか」……おいおい、この流れは  #kaidan_bsr

2011-07-15 00:57:20
種 一@刀の筋肉勢美味しい @tanehajime

@now_fes 「……俺が金出してやるからよぉ、さっさと選べよ」「おぉ、すまぬな」全くすまなそうじゃない顔でそう言って、毛利は真っ直ぐ酒コーナーに向かっていった。  寺生まれってやっぱりスゴイ。改めてそう思った。 #kaidan_bsr

2011-07-15 01:00:01