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ビークマーク備忘録

ビークマークは鳥のかじり跡の意だが、トカゲなどにかじられた跡との区別はできない。相手が何であれ、その個体が捕食者から攻撃され、かろうじて難を逃れた痕跡ではある。ここでは、ビークマークを持つ個体の写真をまとめてみた。
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ビークマークは、傷つきながらも捕食者の攻撃から生き延びた個体の証だ。一方、捕食された個体は一部が食い残されるにしても、自然的環境下でそれを発見することは大抵の場合きわめて困難である。

生態としては生息数、被食個体数、ビークマーク個体数、自然死亡個体数がすべてわかれば面白い。Takakura and Yamazaki (2007)はアブラゼミとクマゼミ対象に類似の研究を行っている。セミの羽化殻数から羽化数を、拾い集めた死体から死因別の死亡割合を推定した。論文はANNALS OF THE ENTOMOLOGICAL SOCIETY OF AMERICA 100(5) 729 – 735 に掲載されている。ただ、ビークマークには言及していない。


シジミチョウ類

シジミチョウ類は小型であり、ビークマークを残すことなく捕食されてしまうのではなかろうか。前翅長はムラサキシジミが15~20mmで、最大のウラギンシジミでも20~25mmである。ジャノメチョウ類で最小のヒメウラナミジャノメの前翅長は18~25mmであり、ムラサキシジミとあまり変わらない。どの程度の小型種までビークマークがみられるのだろう?


TLの写真(カッコ内は投稿された方)から、ムラサキツバメ(Y.Osadaさん)、メスアカミドリシジミ(Y.Osadaさん)、キリシマミドリシジミ(Y.Osadaさん)、ウラギンシジミ(Y.Osadaさん)、コツバメ(さいとーさん)のビークマークが見られました。コツバメのような小型種で見られるビークマークは、小型爬虫類に襲われた跡でしょうか。


セセリチョウ類


Apostictopterus fuliginosus (Y.Osadaさん)


シロチョウ類


スジグロシロチョウ(おはるさん)、ツマキチョウ(おはるさん)


アゲハチョウ類

アゲハチョウでは毒チョウであるジャコウアゲハやベニモンアゲハとその擬態種?クロアゲハやシロオビアゲハでビークマーク個体の割合がどうなっているのか?

今井長兵衛 @medanjin

#ビークマークを見せ合いませんか カラスアゲハ♀ 大阪市大正区千島公園(桜谷さん撮影) pic.twitter.com/rHWRQ65nKj

2021-02-18 16:33:00
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今井長兵衛 @medanjin

ジャコウアゲハ♀@京都府立植物園;2022/05/08 右前後翅に顕著なビークマーク。ウマノスズクサ食いなので有毒だが、捕食者に襲われることは免れないようだ。捕食者、学習せよ! pic.twitter.com/WUoK1PyIte

2022-05-08 17:10:31
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南米のチョウ

今井長兵衛 @medanjin

#ビークマークを見せ合いませんか 樹皮にカモフラージュした南米のヤガ? 樹皮に張り付いているところを後ろからトカゲにでも襲われた?(息子撮影) pic.twitter.com/wEnMEwZlGZ

2021-02-16 17:17:18
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今井長兵衛 @medanjin

ご指摘いただいたように、触角の形からも、チョウだと思う。しかし、樹皮から離れて樹皮を見る限り、見事なカモフラージュだ。

2021-03-13 09:43:59


ジャノメチョウ類

ジャノメチョウ類は前後翅の裏面に眼状紋を持つものが多く、捕食者に眼と誤認させるのではという説は昔からある。ヒメジャノメのビークマークは2つの大きな眼状紋の間についており、捕食者が「眼」と「眼」の間を狙って襲い掛かったように見える。リュウキュウヒメジャノメでは眼状紋の近くを2回突かれたようにも見える。しかし、ヒカゲチョウやヒメキマダラヒカゲでは眼状紋のないところを突かれている。

今井長兵衛 @medanjin

ビークマークの付いた生き物は鳥などに襲われても食べられなかった「幸せ者」でしょうか。一方で、撮影者は破損のない美しい個体を好んで撮影するようです。 #ビークマークを見せ合いませんか? 写真はヒメジャノメ、羽を閉じて静止しているときに「眼」と「眼」の間を攻撃されたようです。 pic.twitter.com/4Ym44M26Si

2021-02-14 16:06:43
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