掌小説語り~自作つぃのべる集~82

自作ついのべるのまとめです。 2020年2月分。
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リュカ @ryuka511

人間の寿命など吸血鬼からすれば一瞬だ。それを覚悟で彼女を愛した。だが私は散りゆく花を愛せるほど強くない。やんわりと拒む彼女の肩を掴む。彼女を同族にすれば、散りゆく生命を止められる。「行かないでくれ」「仕方のない人ね」微笑む彼女の手が私の頬に触れて、泣いている事を自覚する #twnovel

2020-02-02 00:23:44
リュカ @ryuka511

知っている。君が僕を利用する為だけに近づいてきたと。それでも君に惹かれ、君の嘘ごと君を愛した。君の目的は間もなく果たされるだろう。これは賭けだ。目的を果たした君の、一瞬の悲しげな顔に勝算を見た。別れを告げようとする君の唇をその言葉ごと塞ぐ。君の嘘を、真実に変えて見せよう #twnovel

2020-02-03 00:46:38
リュカ @ryuka511

効きもしない痛み止めの代わりに酒を呷る。今の痛みが昔の傷の痛みまで呼び起こしていた。こんな夜は、強い酒に溺れ寝てしまうに限る。それなのに、眠りはなかなか訪れず、酒は思い出したくもない記憶を浮かび上がらせてくる。身体の傷は心の傷と直結している。いっそ、切り離してしまおうか #twnovel

2020-02-04 00:56:08
リュカ @ryuka511

世界は足元から空まで文字通り崩壊していく。人も建物も割れた大地の深淵に消えていく。神様まだ待って。異常な事態に怯える君に駆け寄り抱きしめた。もう大丈夫だよ。背に回される君の腕。踏み締めていた地面が消える。迫る闇。世界の崩壊は止められないけど、君の最期を笑顔にさせる事なら #twnovel

2020-02-04 22:07:23
リュカ @ryuka511

黒塗りした刃に滴る血を振り落とす。半端者の分際で貴族種たる私を育てたとは、分をわきまえろ。私の血を狙い手っ取り早く貴族種になろうとしたのだろう。愚かな #twnovel だが、教会の連中に囲まれ思い出した。なぜ忘れていたのだ。幼い頃、生みの親を殺され、私を守ったのは半端者のあいつだったのに

2020-02-05 23:57:13
リュカ @ryuka511

王国内は戦の勝利に沸いている。賞賛を受ける王子の胸中は複雑だった。犠牲者が多すぎる、私は未熟だと悔やむ。剣を手に戦場に立った以上、誰もが死は覚悟の上だ。それでも総大将の自分は皆を守るのが義務。憂い顔の王子に王は告げる。「血を流さず存えた国は無い。その血を継ぐ覚悟を持て」 #twnovel

2020-02-07 00:33:23
リュカ @ryuka511

魔王城最奥。倒れ伏した華奢な体を抱きとめ魔王は笑った。救世の勇者も所詮は人間。私に敵うわけがないのだ。さて、どうしてくれようか。人間共の希望とやらをすぐに殺すのもつまらぬ。捕らわれの姿を見せつけてやるか。洗脳して魔族に加えるのもいい。私を退屈させない存在に久々に高揚する #twnovel

2020-02-07 23:51:44
リュカ @ryuka511

一方的に別れを告げられた日、思わず引っ叩いた。ネイルの為に伸ばした爪が彼の頬に傷を残す。彼の病は知ってる。それが別れの理由で彼の優しさだと。でも彼を最期まで愛する。ガラスの人形と化した冷たいその腕に抱かれ、私も冷たくなるの。同じ病を発症し、歓喜した。もう私を遠ざけないで #twnovel

2020-02-08 22:29:53
リュカ @ryuka511

君を同族に迎え永遠の愛を誓った。我らを阻むものはないはずだった。人間共に屋敷を囲まれ、君に隠れているよう告げ扉を開け放つ。人間なぞに敗れる我ではない #twnovel 驕りが隙を生んだ。背に迫る銀の杭。飛び込んできた君。絶叫。その後の記憶は無い。血溜まり。この手に残ったのは灰になった君だけ

2020-02-10 00:26:54
リュカ @ryuka511

眼前にそびえる魔王城。ここへ来るのは二度目だ。あの時は一人だった。魔王に挑んで、命からがら逃げ出した。今は違う。志を同じくし、背を預けられる仲間がいる。戦いを重ねて力もつけた。それでも魔王に敵うかわからないけど、僕らは戦う。一人の時は見なかった未来を、夢を、叶える為に #twnovel

2020-02-10 23:18:36
リュカ @ryuka511

この身に流れる太古の血。狩尽くされ滅びゆく最後の血。番いもおらず他と交わる事もできず、消えるのみの運命を、受け入れたつもりだった。なぜ私だけが、誰かを愛する事も愛される事も許されず、消えなくてはならないのか。私の愛を憤りを絶望を、誰か聞いてくれ。私は確かにここにいるのだ #twnovel

2020-02-12 00:20:55
リュカ @ryuka511

叛逆者の濡れ衣を着せられ、俺は磔刑にされ死んだ。だが今、俺を救った男と共にいる。濡れ衣とはいえ、罪人を吸血するとは変な奴だ。そう言うと奴はお前こそ変わってると返す。てっきり復讐するのだと思ったと。半吸血鬼になったら人間の争いなどどうでもよくなった。あんたといる方が面白い #twnovel

2020-02-12 23:44:00
リュカ @ryuka511

毎夜ほぼ変わらぬ位置に輝く北極星は旅人の道標だと言うと、君は不安げな顔をした。「でも、星だっていつかは死ぬのでしょう?北極星に代わる星は無い。道標を失ってしまったら、どうしたらいいの?」「僕が道標になる」「星になってしまうの?」「違うよ。今と変わらず君の手を引いててあげる」 #twnovel

2020-02-13 23:48:40
リュカ @ryuka511

自由を尊ぶ貴方は、愛なんて形で縛られる事を厭うだろう。自由を無くした貴方は貴方でなくなるのかもしれない。それでも私は貴方を愛で縛りたいのだ。愛情とは病に似て、拗らせては取り返しがつかなくなる。ならば愛も病のように、感染すればいい。縛られ共に溺れるなら、本望 #感染チョコラ #twnovel

2020-02-14 23:36:47
リュカ @ryuka511

古傷が疼くと同時に、忘れようとしている胸の痛みも蘇る。あの日、理不尽に殺された家族の復讐を決意し、深傷を負いながらも奴を殺した。世間は俺を悲劇のヒーロー扱いする一方で、加害者と同じ人殺しだと蔑んだ。それは事実だし、情状酌量など不要だったのに。俺が憎いなら殺せよ偽善者共。 #twnovel

2020-02-16 00:23:27
リュカ @ryuka511

半吸血鬼にされた友を救うべく身体を差し出す。見境なく人を襲わせない為だ。何度やられても慣れない痛みと吸血に伴う快楽が、俺の正気を奪っていく。衝動が治まると、こいつはぐったりした俺を抱きしめ詫びながら泣く。お前が俺に縋るのを嬉しく思う辺り、俺はもう正気を失っているのだろう #twnovel

2020-02-17 01:25:12
リュカ @ryuka511

信じられるのは自分だけ。そう信じ戦線を生き抜いた。兵は駒、減れば補充して数的優位を保つ。兵士達の忠誠など、褒賞や出世を求めての事。やがて大陸を制し覇権を手にした時、胸に湧いたのは喜びではなく、虚しさだった。孤独に塗れた勝利。何の為に戦っていたのかも忘れてしまった。 #twnovel

2020-02-18 00:08:09
リュカ @ryuka511

魔王に敗れ満身創痍で帰還した貴方は、私の腕の中で事切れた。私達の子を、真の勇者を頼むと言い残して。神託を受け旅立ったのに、貴方は真の勇者ではなかったの?貴方の死は、最初から決まっていた結末だとでもいうの?幼い私達の子を見つめる。無垢な笑み。魔王にも神にも、この子は渡さない #twnovel

2020-02-19 00:38:17
リュカ @ryuka511

吸血鬼に効く薬かい?色々あるよ。これは筋弛緩剤、こっちは睡眠薬、これは……え?そうじゃなくて吸血鬼にも効く傷薬?吸血鬼を助けたいのかい?あんた変わってるねぇ。本気なんだな?気に入った。どんな傷だ?すぐに調合してやるから待ってな。よし出来た。頑張れよ。世の中捨てたモンじゃないな #twnovel

2020-02-20 00:47:36
リュカ @ryuka511

待ってくれ、まだ沈まないでくれ。日が沈んでしまったら、彼女は人でなくなってしまう。夢中で沈む日を追いかけて道をはずれた。ここはどこだ。帰らなくてはならないのだ。彼女は待っている。私の帰りを、彼女を人に留める術を。私が帰らなくては、彼女はーー #twnovel

2020-02-21 00:02:11
リュカ @ryuka511

身体はシリコン、瞳はグラスアイ、髪 は化学繊維、思考はプログラム。これは人に似せて作られた、機械仕掛けの人形。肌の温もりも優しい言葉も、ただの作り物。それでもその温もりと優しさに縋った。他の誰もくれないものをくれたから。欲しいものだけをくれる、今の私にはそれでいい #twnovel

2020-02-22 00:12:20
リュカ @ryuka511

人間と世界の拗れに拗れ壊れた関係は、世界が人間を見限る事で終末を迎えようとしている。割れる大地、消える太陽。数多の天変地異に人間は恐れ慄き、こぞって祈り許しを請うが、世界にとって人間の存在は有っても無くてもどちらでもよかったのだ。人間の歴史は終わっても、世界は有り続ける #twnovel

2020-02-22 23:23:46
リュカ @ryuka511

遺跡の壁画には、自由を求め決起した人々の戦いが綴られている。怒りと悲しみに満ちた街。武器を手に城へ向かう人々。放たれた火が城を焼き尽くす。処刑される王。歓喜する人々。新たな指導者が導く街は、仇討ちに燃える王子の手で滅ぶ。壁画に事の顛末を刻んだ王子は、街を包む炎に飲まれる #twnovel

2020-02-24 00:00:50
リュカ @ryuka511

君からの溢れる程の愛を捨てた。酷い奴だろう?僕の事など忘れ他の誰かに愛されてほしい。僕の愛が君に向く事は無い。君の愛に包まれながら、あの人を愛し続けるという残酷な事ができる僕は、君の愛を受け取る資格など無い。そしてあの人の愛も決して僕には向かない。それでいいんだ、僕には。 #twnovel

2020-02-25 01:06:47
リュカ @ryuka511

君の術は君の生命が代償にされてると気づいた。君をこれ以上行かせてはいけない。僕に駆け寄り治癒術を施そうとした手を止めた。「魔王討伐は僕の使命、君は国へ帰れ」傷を負ったまま平然を装い敵に留めを刺す。「ほら、君が居なくても何も変わらないさ」魔王城は目前、もう覚悟は決めたんだ #twnovel

2020-02-26 00:07:48