掌小説語り~自作つぃのべる集~83

自作ついのべるのまとめです。 2020年3月分。
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リュカ @ryuka511

「世界の有り様を見よ」少女は厳かに告げる。「神は我らを見捨てたもうた」嘆く聴衆に手を掲げる。「古き世界は終わり新しき世界が始まる。新世界に生きたくば、新たな神に贄を捧げように!」歓声を上げた聴衆に密かに笑う。神は我らなど初めから見ていなかっただけ。民衆を扇動するのは容易い #twnovel

2020-03-25 23:59:49
リュカ @ryuka511

「救世の勇者様が野宿かよ」黙々と野営の準備をする勇者に戦士は溜息を吐く。「まだ使命を果たしてないんだ、贅沢言えないよ」こいつは人が良すぎる。神託なんて胡散臭いものを信用し、碌なアイテムもないまま危険な旅に出るなんて。こいつに危険な使命を負わせた世界から、俺がこいつを守る #twnovel

2020-03-26 23:16:17
リュカ @ryuka511

蜂起した革命軍の規模は少しずつ大きくなり統率が取れなくなってきた。指示系統が乱れ、諍いも頻発し始める。自陣で響く銃声。味方同士で争っている場合ではないのに。これでは国王軍の思うつぼだ。「何をしている!」咎める俺に向けられる銃口。抑圧からの解放を求めた戦い、のはずだったのに #twnovel

2020-03-28 00:30:15
リュカ @ryuka511

深海にある城から指輪を持ち出し、人魚の少年は人間の少女の下へ急いだ。指輪を見て少女は嬉しそうに笑う。「これで王子様は私のものね」少年は少女に恋していた。指輪を渡して想いを告げるつもりだった。だが少女が喜ぶのなら。「君に海神の加護を」少女の恋を祝福しながら、少年は心で泣く #twnovel

2020-03-28 23:30:34
リュカ @ryuka511

家族を亡くし故郷を失くし、魔王を討つ使命と「共に行く」と言ってきかない貴方だけが残りました。「君なら世界を光で満たせる」と、貴方は私を励まし続けます。その想いは本心なのでしょう。けど全てを失った私にとって、貴方はただ重荷でした。貴方を裏切る事に、躊躇いはありませんでした #twnovel

2020-03-30 00:32:11
リュカ @ryuka511

神託だなんて胡散臭いものを受け入れ、魔王討伐の旅に出ようとするお前を止める術はないだろうか。真面目なお前は「自分の力が役に立つなら」と使命に燃えているが、お前は人間が希望を失わない為の生贄でしかないんだ。危険な目に遭わせるならいっそのこと、お前を監禁してしまおうか #twnovel

2020-03-30 22:40:13
リュカ @ryuka511

「ほら、景色が綺麗だよ」列車に揺られながら、猫撫で声で窓の外を指差す。だが君は無表情で真っ直ぐ前を見ている。君を楽しませたくて連れ出したのに、君はずっと硬い表情で拳を握り締めていた。どうしたら君は笑ってくれるんだろう。君を攫ったのは君が憎いんじゃなくて愛しいからなのに。 #twnovel

2020-03-31 23:36:59