掌小説語り~自作つぃのべる集~45

自作つぃのべるのまとめです。 2017年1月分。
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リュカ @ryuka511

怪我を負った姉の代わりに双子の妹が舞台に立った。観客に代役の事は知らされず、彼女は姉として舞台に立った。公演は大成功を収めたが、耳を裂く拍手喝采は自分を責めるように響く。密かに怪我を負わせ姉の役を奪った。必死に稽古を重ねたが、姉には遠く及ばないと解ってしまった #twnovel

2017-01-02 00:33:39
リュカ @ryuka511

神託を受け救世の勇者と祭り上げられ、慣れない剣と未熟な魔法で戦った。なぜ運命は僕を選んだのか。僕は弱くて弱くてどうしようもないんだ。見限られてもおかしくないのに、仲間はなぜ僕を慕うのか。ある日耐え切れず問うた答えに、あの日以来初めて泣いた。「必死な君を助けたい」 #twnovel

2017-01-02 23:52:00
リュカ @ryuka511

スラムの寂れた教会で、天使なんていやしないんだと少年は朽ちた天使像に毒突く。正しく在れば天使が僕達を救ってくれる、そんな幻想にすがって生きてきた。だが、正しく在る事など不可能なのだ。ひび割れた天使像がそれを示しているように思えた。「僕は生きてやる。何をしてでも」 #twnovel

2017-01-03 23:54:44
リュカ @ryuka511

魔王を討つと予言された赤子を探し殺せと命じられた。辺境の村で青年は赤子を発見し、ゆりかごからそっと連れ出して見つめる。何とか弱い生き物だろう。殺すまでもないのでは。そんな考えが脳裏をかすめ赤子を抱き走り出す。魔王様は殺させない。だがこのか弱い生命を絶たせもしない #twnovel

2017-01-04 23:53:47
リュカ @ryuka511

終わってしまった愛を見たくなくて、バラバラにして暖炉の中に火葬して、燃え残りは灰と一緒に砕いて川に流した。これで完全におしまい。過去は忘れて、傷が癒えたら新しい恋が出来るだろうか。あぁ、その前に、暖炉の中を綺麗にしておかなくては。鋸と金槌の処分も忘れないように。 #twnovel

2017-01-05 23:47:23
リュカ @ryuka511

一目惚れだった。祈りを捧げる所作は美しい。あのひとは魔族の侵攻を抑えるためだけに存在しているのだと知り憤りが沸いた。あのひとを救いたい。神殿からあのひとを攫い、手厚くもてなした。泣き顔さえも美しいひと、なぜ帰りたいなどと。その高潔さを利用する人間共を私は許さない #twnovel

2017-01-07 00:18:59
リュカ @ryuka511

舞踏会の夜。上流社会でステップを踏む、くるくる回る、あなたはいない。その手を拒んだから。背負ったものが、生きる世界が、違い過ぎると気付いてしまった。逃避行は愛を貫く事じゃない、ただ現実から逃げるだけ。その行き着く先は破滅。私を恨んでも構いません。これが私の愛の形 #twnovel

2017-01-07 23:58:14
リュカ @ryuka511

サングラスに黒いスーツ姿の男達が集まっている。険しい顔つきで話し合うのは、誰が『タルト』を盗んだか?という事。無論、タルトは隠語である。得物を独り占めしようとしている裏切者は誰だ。だが、紳士的な彼らは決して罵り合わない。静かに銃口だけを向け合い、裏切者を炙り出す #twnovel

2017-01-09 00:37:27
リュカ @ryuka511

古代遺跡には竜が棲んでいるという。その鱗は不老長寿の薬材として、その卵は幻の高級食材として狙われていた。富豪から依頼を受けた冒険家は遺跡を進む。遺跡最奥地、竜と視線が合った瞬間、落雷が起きた。 #twnovel 収穫無く冒険家が帰還すると、屋敷から感電死した富豪の遺体が見つかった

2017-01-09 23:25:08
リュカ @ryuka511

「ごめんね」幼い少女の悲しげな声を思い出す。新しいロボットが来て、少女のお気に入りだった古いロボットは廃棄されてしまった。戻れない、戻っても居場所がない事は解っている。それでも古いロボットは少女の家を目指す。鋼鉄のがらくたと化すなら、せめて少女の傍で朽ちたくて。 #twnovel

2017-01-11 00:36:18
リュカ @ryuka511

「可愛い奴だな」「喧嘩売ってんのか、お前」「戦いを挑みに来たのはそちらだろう」魔王は悠然と佇む。「私に勝つ事でしか存在意義を認められないのは悲しい。健気で可愛い勇者、私ならお前をありのまま認めてやれる」勇者の瞳が揺れた。「人間を苦しめるのは人間だ、そうだろう?」 #twnovel

2017-01-12 00:54:32
リュカ @ryuka511

王をこの手で殺した。幻術にかかり操られていたのだが証拠など無い。死罪は免れないだろう。一体誰が私に王を殺させたのか。疑わしい者は多いが幻術を扱える者となると限られる。更に、幻術は警戒している相手には効かない。まさか。私を駒にして王を殺し何を企んでいるのです、師よ #twnovel

2017-01-12 23:54:12
リュカ @ryuka511

穢れは静かにやってくるとはよく言ったものだ。王が採用した軍師は豊富な知識と確かな戦術で王国に利益をもたらした。寡黙で実直な人柄を装った奴の瞳に宿る邪悪に気付き王に進言するも、若輩者な私の言葉は王に届かない。奴にすっかり心酔した王は、民心が離れていく事に気付けない #twnovel

2017-01-13 22:44:21
リュカ @ryuka511

自由になりたくて翼が欲しいと願い、白鳥の翼を自分の背に移植する。これで逃げ出せると思った。だが、身体は異物を排除しようとする。激痛に耐えながら必死に羽ばたき、助走をつけ崖から飛んだ。浮いた身体は滑空し、崖底に激突した。遠のく意識。だが逃げ出す事には成功したーー #twnvday

2017-01-15 00:15:52
リュカ @ryuka511

剥がれ落ちた仮面が立てた音がけたたましく響く。気味が悪いくらいの完璧な笑顔。泣く事も怒る事も許されず、いつの間にかこんな仮面を着けて生きていたのだ。頬に触れる風の冷たさを優しいと感じる。涙は温かいのだと知る。こんなものはいらないのだ。仮面を踏み砕き歩き出す #twnovel

2017-01-16 00:01:34
リュカ @ryuka511

死んでしまった君を蘇らせたくて試行錯誤する。血の巡らない身体から動かない心臓を取り出し、鉱石の心臓を埋め込む。心臓を動かす必要は無いと気付いてからは早かった。鉱石の力で生きる君は穏やかで、夜の静謐さが似合う。静かに遠くを見つめる君。いつか君の鉱石の故郷へ行こうか #twnovel

2017-01-17 01:18:28
リュカ @ryuka511

呪文一つで記憶を失うお姫様。解呪の方法は私だけが知っている。王宮は混乱するに違いない。頃合いを見計らって城を訪れ、解呪を施せばいい。王は私に詫び城へ戻らせるだろう。私は大事な一人娘の恩人なのだから。お姫様、君には直接関係無いが、私の復讐と謀略に付き合ってもらうよ #twnovel

2017-01-18 00:21:38
リュカ @ryuka511

遺跡の宝物を守る獣が一同に牙を剥く。怖気付く一同を尻目に隊長が獣に歩み寄った。「ここにあっても無意味な代物だ。我々が有効活用してやるから寄越せ」剣を抜き号令を発する。「私に続け!」響く断末魔の声。侵入者達を殲滅させた獣は、安堵の表情で宝物をひと撫でし眠りについた #twnovel

2017-01-19 01:29:41
リュカ @ryuka511

スラムの寂れた教会前で身を寄せ合って座る。今日は僕らが出逢って1年が経つ日で、だから今日を僕らの誕生日だと決めた。古びたパンだけのご馳走のない晩餐会だけど幸せだった。この日をずっと覚えておこう。とても寒い夜だから忘れないだろう。次の朝に目を覚ます事が出来る限りは #twnovel

2017-01-20 00:14:30
リュカ @ryuka511

みんな消えてしまえと思いながら眠りに落ちた。朝になったら本当にみんな消えていた。憎い奴だけじゃなく好きな人も知らない人もみんな消えていた。誰もいない世界で、静かすぎる朝を目一杯吸い込んだ。昨日より空気が冷たく澄んでいるような気がした。世界に一人きり、存外悪くない #twnovel

2017-01-21 01:22:50
リュカ @ryuka511

僕が伝説の勇者の生まれ変わりだなんて、そんなの嘘だって知ってたよ。亡き前王妃の息子が邪魔になっただけだ。この剣だって本物の聖剣か疑わしい。だからこそ魔王を討って生還してやると誓う。嘘を真実に変えてやる。救世の英雄に誰が逆らえる?あぁ、本当の魔王は僕かもしれないね #twnovel

2017-01-21 23:45:23
リュカ @ryuka511

周囲の反対を押し切り、神秘的な珊瑚礁を湛えた無人島を買う。幼い頃、海に落ちた私を救ってくれた人魚にもう一度会いたいのだ。言えなかった礼を言いたくて、ずっと再会する方法を探していた。長い人生の中、私を助けてくれたのはあの人魚だけ。敵だらけの寂しい人生の拠り所なのだ #twnovel

2017-01-23 01:37:11
リュカ @ryuka511

旅立ち前の祈りを捧げながら、恩師の言葉をふと思い出した。「神に祈るくらいなら魔道師の勉強くらいしたらどうだ」とよく言われたものだ。今なら解ります。人を救うのは人の力。だけど私は祈るのをやめられない。神の奇跡にすがるつもりは無いけれど、私はそこまで強くはなれません #twnovel

2017-01-24 00:38:26
リュカ @ryuka511

あの人は戻れない所まで行ってしまった。あの人の崇高さが自身を縛り歪めたのだろう。人として踏み入ってはいけない領域へ足を踏み入れてしまった。止められなかった責任は私にもある。だから、この手で殺した。それが正しかったかは、後の世が判断する。私がそれを知る術は無いが #twnovel

2017-01-25 00:27:46
リュカ @ryuka511

救世の勇者と讃えられても、数多の褒美を与えられても、心の隙間は埋まらない。滅びた故郷。失った仲間。魔王の悲痛な叫び。悪いのは誰だったのか。誰を憎めばいいのか。私のした事は正しかったのだろうか。人々の歓喜の声が、答えを更に遠ざける #twnovel その後、勇者の姿を見た者はいない

2017-01-26 00:56:38