掌小説語り～自作つぃのべる集～88

リュカ @ryuka511

この辺りへ埋めたはずなのに、いくら探してもタイムカプセルは見つからなかった。浜に埋めたのがいけなかったんだろう。埋め立てられてきっと今頃コンクリートの下だ。あの日、一緒にカプセルを掘り出そうと約束した友達は誰も来なかった。諦めて戻る。あの日と変わらないのは見上げた月だけ #twnovel

リュカ @ryuka511

「この作戦には俺とお前の2人で行く」「了解」「私は?」「君はここに残ってくれ」「私も戦う!」「君には別の任務がある」憤る少女に青年は声を潜めた。「基地内の動きが不穏だ。探ってくれ」「裏切り者がいると?」青年は頷き少女を見据えた。「信じているから置いていくんだ、頼んだぞ」 #twnovel

リュカ @ryuka511

冷房の効いたホールにホッとしながら、パンフレットを購入し席に向かう。彼が生命を絶ったのもこんな暑い日だった。どん底にいた私を救ってくれたロックスター。彼の生き様を綴ったドキュメンタリームービーは、海の向こうの彼が何を思い、何を抱え生命を絶ったのかを、教えてくれるだろうか #twnovel

リュカ @ryuka511

幸せそうな君達から目を逸らしても、理性が崩れていくのを止められない。僕を裏切った2人を、もう許せたと思っていた。来るんじゃなかった。こんな華やかで祝福に満ちた場所は、僕には似合わない。「来てくれてありがとう」「お幸せに」そう、君らの幸せは、僕の手により時を止め永遠になる　#twnovel

リュカ @ryuka511

苦いコーヒーやビールを美味しそうに飲み、車を運転してどこへでも行ける。あの頃オトナは『トクベツ』だった。自由で楽しそうで輝いて見えた。僕もあんな風になるんだと思っていたのに。何がいけなかったんだろう。生まれた時代が悪かったなんて言わないでよ。僕の過ちなら正せるんだから #twnovel

リュカ @ryuka511

長い呪文を一節ごとに丁寧に詠唱する。指先に全神経を集中し、慎重に印を結ぶ。あの人を蘇らせる。今度こそ身罷らぬよう。死者の蘇生は禁呪だ。失敗すれば魂魄ごと破滅、二度と生者の世界には戻れない。だがそれはそれで、あの人と共に在れるのなら良いかもしれない。願うのはただ一つの永遠 #twnovel

リュカ @ryuka511

願いは王国の繁栄と平和。その為に剣を取り戦うのは矛盾しているだろうか。私は王に忠誠を誓い、君は民に忠義を立てた。同じ空を見ているはずなのに、目指す場所はまるで違う。革命軍と王国軍。どこで我らの道は分たれたのか、どちらが真の道なのか。共に生命と信念をかけたこの剣で示すのみ #twnovel

リュカ @ryuka511

逃げるように故郷を出てこんなに遠くまで来てしまった。君と生きる為に故郷を捨てた。追われる貧しい暮らしも愛があれば乗り切れると思ったのは、僕の青臭い思い上がりだった。追手に諭され君は故郷に戻る事を選んだ。帰る場所も向かう場所も失った僕は、ひたすら故郷から遠ざかろうと彷徨う #twnovel

リュカ @ryuka511

国難に際する王よ、私だけは貴方の手腕を信じております。貴方の周りは敵だらけ。誰も彼も立身出世の為だけに貴方へ仕える者ばかり。さぁ、貴方の信念で、王国に繁栄を民に幸福を。王国第二の権力者である私を陥れ、王国に仇なす私の追放に成功した貴方の手腕を、是非とも奮って頂きたい。 #twnovel

リュカ @ryuka511

「それが欠陥品なら製作者である私の責任だ。引き取らせてもらう」兵器を私物化する気かと騒ぐ遣いの男へ「そうだ」と言い放ちラボへ帰る。これは私の物だ。おかえり、私の最高傑作。 #twnovel 私物化された兵器が兵器として作動する事はついになかった。当然だ、私はこれを兵器として作った覚えは無い

リュカ @ryuka511

上京し夢破れて、逃げるように故郷へ戻った夜。それ見たことかと言うような大雨の中を歩く。錆の浮いた見慣れたポストが見えた。初恋の人への手紙、新人賞への応募作、沢山の青い夢をこのポストに託した。あの頃夢見た十年後は何一つ叶わなかった。泣くまいと唇を結ぶ。まだ、負けは認めない #twnovel

リュカ @ryuka511

魔王の術で生まれた私は、戦う為だけに存在する。敗れても幾度でも蘇り戦う。私の上官である騎士は、王に忠誠を誓い命がけで戦う事は自分の誇りだと言う。私のこれは命ですらないが、想いは同じだ。「また行ってくれるか」と私を蘇らせる王の表情は、命無き私に想いを宿らせるには充分だった #twnovel

リュカ @ryuka511

陛下は私を救って下さった。孤独と罪にまみれた私に、王国民の為に働く事で罪を許すと仰った。更に名を与えて下さり、王国民として存在を認めて下さった。大恩ある陛下に、私が差し出せるものは命だけ。陛下が許して下さっても、犯した罪は消えないから、危険な任務に散らす覚悟はできている #twnovel

リュカ @ryuka511

蛍は切なく身を焦がし、孔雀は豪奢な羽を惜しげなく広げる。光も羽も持たぬ私は、この身一つで踊りましょう。ダンスのパートナーに相応しいのは誰かしら。次々に相手を変え踊る、踊る。初めてのフリで恥じらって。傷も涙も隠して。神様にしか引き離せない運命の人に、ベールを上げてもらうの #twnvday

リュカ @ryuka511

そうか、分かった。ご苦労だったな、下がってよいぞ。屋敷周辺の状況を鼠達に調査させ、危険がすぐそこまで迫っているようなら、結界を張り念の為に罠もしかける。今日は何事も無いようだ。配下の鼠達を下がらせ私は棺の蓋を閉めた。闇を取り戻し安堵する。もう、あんな思いは二度と御免だ。 #twnovel

リュカ @ryuka511

秘密裏に旅をしているのに、魔王軍に情報が漏れている。行く先々に魔王軍幹部が先回りし苦戦を強いられている。情報を流したのは誰だ?仲間に裏切り者がいるとは考えにくい。神託を告げた予言者か、魔王討伐を命じた王宮か。誰であろうと、魔王を討ったらじっくり炙り出してやるから待っていろ #twnovel

リュカ @ryuka511

貴方の背に向けられた銃口に気づき、考えるより先に身体が動いた。銃弾は僕の胸を貫く。熱さと痛みに意識が遠のく直前、貴方が僕の名を叫んだ気がする。見苦しい声を上げぬよう唇を噛む。無様に貴方へ縋らぬよう服の裾を握る。想いを告げられぬまま、貴方を庇って死ぬ、これが、運命、かな #twnovel

リュカ @ryuka511

商売人も冒険者も逃亡者も、海の向こうの地に夢を見た。風を受け膨らむ真っ白な帆に、高波へ立ち向かう舳先に、己の未来を重ね見た。海を渡るなら死はすぐ隣にある。満身創痍で入港した彼らを、港の人々は驚きと共に迎えた。進め、戦え、生き延びろ。そんな声を、海を渡る者達は聞いたという #twnovel

リュカ @ryuka511

大きくなったら結婚しようなんて、意味も重みも解らず約束した。白いハンカチを被って結婚式の真似事もした。あの時おもちゃの指輪に誓った永遠を、僕ら大人になったら笑うのかな。お嫁さんだの結婚だのに夢を見られなくなって、それでも君が好きで。あの時交換した指輪、君はまだ持ってるの? #twnovel

リュカ @ryuka511

「人と化物の相違点は何だろう」化物退治を請負い向かった森で相棒は唐突に言った。「何だよ急に」「最近わからないんだ」森を見回し首を振る。「僕らこそ化物かも」「そんな」「一つ言えるのは」俺の手を掴んだ相棒の手は震えていた。「化物は己を偽らないが人は違う。お前は、お前だよな?」#twnovel

リュカ @ryuka511

凶器のナイフ、犯行時刻、被害者の過去、鍵は全て出揃った。なのに犯人が解らない。この山荘にいるのは確かだ。だが凶器の入手経路、アリバイ、動機、一つの鍵が示す事実は、他の鍵が示す事実を否定する。これらが導く唯一解は、彼ら全員がー #twnovel ある山荘で起きた殺人事件は、被疑者死亡で終幕。

リュカ @ryuka511

捨てられた絵本から天馬が飛び立つ。自分を気に入って何度も読み返してくれた小さなあの子。引き離されて、今頃泣いているだろう。行かなくちゃ。あの子の姿を声を、温もりを辿る。見覚えのある家、だがそこにあの子の気配は無い。大人しかいない家に天馬は悟る。“小さなあの子”はもういない #twnovel

リュカ @ryuka511

私が手を握れば潰されて死んでしまうというのに、掌に囲った蛍は逃げもせず静かに明滅を繰り返す。その潔さに心奪われ、光る蛍をぼんやりと眺めていた。しばらく掌で明滅していた蛍は、唐突に飛び立ち夜空へ消えた。光の尾も儚く消える。結局、私の手は何も留めてはおけないのだと自嘲する #twnovel

リュカ @ryuka511

暴君に牙を剥く時だ、時代に波紋を起こし、歴史に名を残せ。集まった民衆を煽ると一様に雄叫びを上げる。武器は粗末なもので、戦い方も碌に知らない、言ってしまえば烏合の衆だ。だが、日々の暮らしに困窮する彼らの、死を覚悟しながらも未来を諦めていない瞳に、奇跡を約束したくなったのだ #twnovel

リュカ @ryuka511

魔王軍の侵攻になす術なく、人々は降伏、あるいは滅ぼされた。魔族に使役するしかない過酷な日々。絶望する人々の間にある噂が流れた。魔王を討つ力を秘めた者が誕生したと。一面の絶望の中に差し込む一筋の希望に、人々は縋った #twnovel 魔王は嗤う。従順なだけの者を使役させても面白くないだろう?