これからの「悪堕ち」の話をしよう

これからの「悪堕ち」の話をしよう
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悪堕研究機構 @utakuochi

『これからの「正義」の話をしよう』って話があるのなら「これからの悪の話をしよう」って話があってもいいってこれまで4回くらい言ってる。

2021-04-03 23:03:13
悪堕研究機構 @utakuochi

最近「うっせぇわ」が流行っている、という話を聞いたことがあると思いますが、これは現代の若者の心情を歌った歌ゆえに若者を中心に共感を得ているという事実は間違いないと思います。ということは、この歌の中に「これからの『悪』」を読み解くヒントが隠されているのではないかと考えています。 twitter.com/utakuochi/stat…

2021-04-03 23:09:53
悪堕研究機構 @utakuochi

弊研は悪堕ちを解析するときに、よく「彼岸此岸理論」を挙げます。詳しくは既刊を確認いただきたいのですが、此岸とはこちら側の世界で現実であり、反対に彼岸とはあちら側の世界で理想であり、例えば現実と理想の対比の他に、味方と敵の対立、子供と大人の対比、結果的に正義と悪の対立になります。

2021-04-03 23:17:09
悪堕研究機構 @utakuochi

こちら側は実際の自分であり、あちら側は理想的な世界であるので、あちら側に憧れ、こちら側を脱却しあちら側に堕ちていきたいという気持ちが悪堕ちの原動力になっているのではないかという話です。しかし両世界は三途の川によって隔てられており堕ちたら戻ってこれない不可逆性をにおわせます。

2021-04-03 23:20:48
悪堕研究機構 @utakuochi

前述の「うっせえわ」は、若者と大人・世界の対立を表していると考えられます。これによって、此岸(「うっせえわ」に代表される若者の現状)と彼岸(大人・世界=悪)を当てはめることができ、これを紐解くことでなにが「これからの悪」になるかが分かるのではないかという話です。 考察を続けます。

2021-04-03 23:23:31
悪堕研究機構 @utakuochi

では、実際に「うっせえわ」から若者は世界のことをどう見ているかというと「自力では変えられない巨大なもの」と思っているようです。ですが、その「巨大ななにか」によって干渉されることを異常に嫌う。そして、自分(自分たち)は有能な人間である、という自信に満ち溢れていることが分かります。

2021-04-03 23:26:35
悪堕研究機構 @utakuochi

尾崎豊氏の曲と対比になっている、という意見を多く見掛ける通り、氏の歌が流行った頃の若者と現代の若者は対比になっていることが挙げられます。 ※この「対比になっている」というのは、描かれている若者の姿が対比になっているということであって「歌をオマージュしている」という話ではないです

2021-04-03 23:30:20
悪堕研究機構 @utakuochi

例えば、尾崎豊氏の歌の頃の若者は、自己表現として、世界に何かを語り掛けたいときは、世界に対して暴力的な、不合理な力を叩きつけるということをしたのだと思います。「バイクを盗む」などはその通りで、そういう犯罪を犯すことで世界に対してアピールをしていた時代だったのでしょう。

2021-04-03 23:32:22
悪堕研究機構 @utakuochi

ただ、若者がそういう行動を起こしても、社会はそれを受け入れる余裕があって、なんとかこういう若者を更生しようという親を始めとした大人たちの包容感というか、そういうのがあったと思います。 いまはそういうのないです。犯罪を犯せば犯罪者です。断罪されます。助ける余裕もないです。

2021-04-03 23:34:55
悪堕研究機構 @utakuochi

「いまの日本は失敗に不寛容になった」と言われる通り、若気の至りといいますか、そういう「社会に対する若者の暴力的な行動」を断罪し、一度失敗してレールから外れてしまった人間を最底辺まで追い込んでしまうような構造になってしまいました。これでは若者は社会に対する自己表現ができません。

2021-04-03 23:37:13
悪堕研究機構 @utakuochi

こういう「社会に対して自己表現をしても社会は変わらない(反応してくれない)」という無気力が、前述の社会は「自力では変えられない巨大なもの」という感情に繋がっています。しかし、それに従順かというと、社会や大人、上司によって干渉されることは異常に嫌います。

2021-04-03 23:38:55
悪堕研究機構 @utakuochi

これはゆとり教育を始めとする日本の教育の「成功例」であると個人的には考えています。皆さんは「ゆとり教育」やその次の「さとり世代」と聞くと、日本の教育の失敗だ、みたいなイメージを持たれるかもしれませんが、そもそもの目的の1つに「個性を重視する」というのがあり、その結果が出ています。

2021-04-03 23:40:46
悪堕研究機構 @utakuochi

それまでの日本が「没個性」といった感じであまりにも画一的な人格を強制していたのだと思います。男女不平等、男が働き女は専業主婦、新卒一括採用、年功序列(年上が無条件で偉い)、そういう諸外国から見れば後進的な押し付け価値観を脱却できたのは十分な成果だったのではないでしょうか。

2021-04-03 23:44:01
悪堕研究機構 @utakuochi

じゃあ逆に、個性を重視するというのはどういうことかというと ・学校に行かない(進学しない) ・働かない ・結婚しない ・子供を産まない ということを認める社会になるということです。勤労と教育を受けさせる義務はありますが、罰則はないのですから、選ばない人は当然出てくる。

2021-04-03 23:47:15
悪堕研究機構 @utakuochi

こうなると、若者の周りにいる大人が言ってくる「こうしろ」という類の言葉、「働け」「結婚しろ」「子供を産め」という言葉であるかもしれませんが、それ自体が若者の価値観にそぐわないものであり、当然反発します。個性を重視するように育っているのですから、そういう過干渉を異常に嫌うわけです。

2021-04-03 23:49:07
悪堕研究機構 @utakuochi

さて、自分たちが生きている社会は自分たちの力では変えようもできない「無気力」「不干渉」と、自分たちは他人と違うし他人も尊重しようという価値観である「個性」が合体するとどうなるかというと、自己を確立するために「自分は優れた人間である」という厨二病チックな考え方に回帰するのですね。

2021-04-03 23:53:43
悪堕研究機構 @utakuochi

いまの作品のトレンドとして、「異世界に行ったり転生したりして強力な力を得る」異世界転生から、「実力者なのにその価値が認められず追放されたけど後で実力が判明して取り戻しに来てももう遅い」というのにシフトしていますが、正にそういうことだと思っています。

2021-04-03 23:55:56
悪堕研究機構 @utakuochi

「実は実力者である」というのは厨二病。 「価値が認められない」というのは、価値は自分で示すものではなく社会が認めるべきものであり、認めなかった社会は節穴である。 「もう遅い」っていうのは、その世界に対するささやかな復讐の態度といった感じで、これが見事に若者の心情と合致します。

2021-04-03 23:58:40
悪堕研究機構 @utakuochi

さて、ここまでで「うっせぇわ」から読み取れる若者の心情が理解できたでしょうか。 悪堕ちの彼岸此岸理論と結びつければ、この「若者から見た変えようもできない社会」というのがこれからの「悪」になってくるものと考えられます。

2021-04-04 00:00:49
悪堕研究機構 @utakuochi

90年代までの「悪」というのは、正義側が主人公であって、「悪」という敵がいて、正義側が悪を討伐するというのが主目的になっていました。これが2000年代も中盤に入り、「悪」は考え方が違うだけで同じ人間であり、どちらが正しいかは判断できないという「会社」という考え方が入ってきました。

2021-04-04 00:06:34
悪堕研究機構 @utakuochi

ですが、いずれの悪も、前者の「悪」を「悪の組織」、後者を「悪の会社」としましょうか、どちらも「潰そうと思えば潰せる」という関係性にあります。悪の組織は壊滅させられますし、悪の会社は、物理的な消滅もありますが、更生したり吸収されて傘下に入る、解散というのも普通に起こりえます。

2021-04-04 00:09:12
悪堕研究機構 @utakuochi

こういった具体的に見えていた悪が、これからは「具体的な形を持っていないから物理的に干渉できないけど自分たちを従わせている悪」という「不明瞭な悪」として存在してくるのではないか、と考えています。そしてその「悪」に抗うのは、期待された勇者ではなく、何気ない普通の「実は超人」だと。

2021-04-04 00:14:25
悪堕研究機構 @utakuochi

この観点でいくと、実は10年くらい前から既にシフトしてきていて、例えば「魔法少女まどかマギカ」は、実際には正義の組織も悪の組織もなかった世界観で、でも「魔法少女構築システム」を悪とみなして、そのシステムに対して反旗を翻している構造になっています。

2021-04-04 00:18:03
悪堕研究機構 @utakuochi

こういう観点でいくと、なにかこう巨大な「不明瞭な悪」に対して、その価値観に染まって取り込まれていくことが「これからの悪堕ち」になっていくのかな、と推測します。現代社会で言えば、自分たちを抑圧してくる社会が「悪」であるわけで、社畜になる、歯車になるのも悪堕ちなんだろうなと思います。

2021-04-04 00:20:30