ゲーテの色彩論は常に身体の「内的世界」を反芻させる。外にあるものは内にもある、と考えるゲーテの思想には深く共感する。マンセルやオストワルドの標色系はある意味で退屈。色彩を感じるのは光の周波数も大事だが、それを感じる感覚や身体というもうひとつの自然を見つめることも大事。
2011-07-31 16:21:30眼球を指で押すと、複雑なパターンや色彩が見える。ここに人間の感覚や身体に内在する色とかたちの宇宙を感じる。色は人間の脳の中に立ち現れる現象である。
2011-07-31 16:24:33幼少期に12色の色鉛筆を与えられた。「そらいろ」とか「はだいろ」という「色の名前」は、色という概念の生成に劇的な影響を与えたが、もしそういうことが永久にないまま、つまり「色を」名指すことをしないまま生きてきたとしたら、世界はどういう風に見えているだろうか。
2011-07-31 16:27:43大岡信ほかによる共著『日本の色』によると、古代の日本人は色を示す言葉を四つ持っていたそうだ。「あかい」「あおい」「くろい」「しろい」。下に「い」がついて色の形容詞となるのは現代でもにこれだけかもしれない。
2011-07-31 16:40:15下に「色」をつけて形容詞にすれば、何でもそうなるでしょ。黄色いとか、茶色いとか。だからそれは例外。「色い」意外で純粋な色の形容詞として。
2011-07-31 16:46:00「あかい」は燃え立つような印象、「あおい」は茫漠とした様相。「くろい」は夜の闇のように光のない様子。「しろい」いちじるしく何かが際立ち、屹立する印象。
2011-07-31 16:52:41「肌色」はたしかにデリケート。ロンドンでバンドエイドのような傷テープを買ったらビビッドな「ブルー」しかなくて、「宇宙人用か?」と怪訝に思ったが、人種の坩堝で「肌色」を想定すると、いろいろ用意しないとまずい。で、いっそブルーにしたのだと。
2011-07-31 17:34:13「肌色」を「人種」と「年齢」を軸にマトリックスをつくると、おそらく感慨深い色の世界が見えてくるだろう。しかし「はだか」研究のとき、「はだか色」を研究したゼミ生の遠山藍が、肌の色を肉や血管、脂肪や骨の半透明のレイヤーとして分析/表現していて面白かった。
2011-08-01 08:41:15肌の色は、骨、血管、脂肪などのレイヤーを半透明の皮膚が覆って出来ているのでとても複雑。その上にシミ、そばかす、うちみ、しみなどが現れ、時にほくろなどでアクセントがついている。実は非常にカオティック。ファンデーションはこのカオスを隠蔽し、単一化しようとするもの。
2011-08-01 08:49:30遠山藍は「はだか」色を肉の赤、静脈の青、脂肪の黄を細かなパターンとして組み合わせ、微細な辺縁対比を持つ夥しい混色の現象として肌を表現た。さらにユニークな点は、このパターンの形態として、およそ生命の有機性とはほど遠い、国旗や千鳥格子などの幾何学的パターンを運用した点である。
2011-08-01 08:52:43微細なレベルではヴィヴィッドな色彩の幾何学図形に還元されながらも、遠目に見るそれは、明らかに皮膚の色彩のリアリティを持っていた。このあたりに、肌の色の不可思議を解き明かしていく糸口があるように思う。
2011-08-01 08:53:49