掌小説語り~自作つぃのべる集~87

自作ついのべるのまとめです。 2020年7月分。
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リュカ @ryuka511

その名匠の刀には神気が宿るという。最期の作ともなれば、抜いただけで見る者を圧倒する気を放つそうだ。人を斬らない刀。血を求めるのが妖刀であれば、血を流させないそれは神刀と呼ぶべきか。多くの者が彼の作を手に合戦場に散った。彼は何を思い刀を打ったか、今となっては誰にも解らない #twnovel

2020-07-01 00:00:02
リュカ @ryuka511

勇者には相棒のドラゴンがいた。数多の死戦を共にし、魔王城の結界を破り勇者を勝利へ導いた。魔王討伐後、ある王国がドラゴンを引き取ると言う。別の王国は勇者を王家直属騎士にと誘う。勇者はドラゴンと共に地底へ繋がる星の洞窟へ向かった。「誰にも君を利用させないよ。さぁ、行こうか」 #twnovel

2020-07-01 23:28:50
リュカ @ryuka511

お守りを懐に花街を行く標的を追う。贔屓の遊女がいるのだ。閨事の最中、始末は容易かった #twnovel お守りを無くしたと気づいた満月の夜。「あなた様のでしょう」遊女がお守りを手に現れた。「あの人、身請けしてくれる約束でした」遊女の香が染みたお守りを、捨てた。仕事人は善悪の判断など、しない

2020-07-02 23:59:44
リュカ @ryuka511

春は出会いと別れの季節だという。君が他の人と出会い惹かれ合ったのも、僕と別れたのも、ぜんぶ春のせいだ。春なんて無くなればいい。ずっと冬のままなら、溶けて無くなろうとする君の愛も、縋り付いて泣くしかできない僕の情けなさも、永久に氷の中へ閉じ込めて、時を止めてしまえるのに。 #twnovel

2020-07-03 23:51:47
リュカ @ryuka511

彼女の選択肢は二つ。深海での平穏な暮らしに戻るか、報われぬ愛を抱え戦火の広まる陸に残るか。彼女を待つ者は皆、戻ると信じていた。陸に何の利も無いと。だが彼女は陸に残る事を選んだ。愛する者の勝利に尽力し、血と炎に煙る地上で泡にもなれず散った #twnovel 戦の功労者とされる人魚像の伝説。

2020-07-05 00:14:00
リュカ @ryuka511

「ワイン、零しちゃった」精一杯可愛らしく言うと、彼は笑って布巾を取る。指先を傷つけワインに血を混ぜた。床を拭く彼が表情を変えたら彼は吸血鬼。袖に隠した銀の杭に意識を向ける。平然と立ち上がり微笑む彼に安堵した #twnovel こんな事で我を謀ろうとは、愛らしい人だ。どう可愛がってあげようか

2020-07-05 22:30:15
リュカ @ryuka511

恋をしたら力を無くすなんて、その人は本物じゃなかっただけ。修業中の少女は師の言葉に反発を覚えた。私は違う。恋をしてても私の力は失われていない。私欲に力を使わなければいいのだ #twnovel 弟子の反発を師は察していた。お前も直に解るだろう。人智を超えた力を持ちながら、何もできない絶望が。

2020-07-06 23:35:46
リュカ @ryuka511

黄昏時の橋の上は、此岸と彼岸の境界のようであった。そこで都を荒らす鬼と対峙する青年もまた、生命の香を感じぬ程に澄んでいた。「滅せよ」青年の口から放たれた言葉は、白紙の呪符に破邪の文言を記し、瞬く間に鬼を霧消させた。口角を上げ笑む青年も、端から居なかったかのように雲散する #twnovel

2020-07-08 00:10:13
リュカ @ryuka511

古い友人を訪ね街を歩く。歴史ある建物が残る街は静謐で居心地が良い。終の住処はやはりここにするか。街外れの鬱蒼とした森を背後に構えた屋敷は、昔から幽霊屋敷と呼ばれていた。出迎えてくれた友人は微笑む。「やっと君もこの屋敷に相応しくなったね」「長かったよ」「永遠はこれからさ」 #twnovel

2020-07-08 23:43:49
リュカ @ryuka511

王子様は内向的で、狩や決闘を嫌い本を読む事を好みました。王様は心優しい王子様に期待していましたが、王子様の発言に頭を抱えます。「僕は政に興味がありません。僕は小説家になります」甘やかし過ぎたようです。「小説も政も人なくしては存在しない。お前はまず人に興味を持ちなさい」 #twnovel

2020-07-09 23:55:01
リュカ @ryuka511

君は家族も友も捨て、私と生きると言ってくれた。私に血と純潔を捧げ、永遠に共に在ると。それを嬉しく思うと同時に恐ろしかった。いつか後悔するのではないか? 熱情に浮かされ、性急に私の肌に這う君の手を、震える指で押さえた。「本当に、良いのか?」「もちろんよ」ならば、何故君は泣く? #twnovel

2020-07-11 00:33:48
リュカ @ryuka511

吸血鬼狩に追われ瀕死の私を助けてくれたのは人間の子供だった。「血がほしいならあげる」と言う。飢えていないから大丈夫だと答えると「親はいないから安心して」と私を家に匿い介抱してくれた。傷が癒えた頃、その子はいなくなっていた。不思議な子供。もう一度会いたいとずっと探している #twnovel

2020-07-12 01:00:56
リュカ @ryuka511

旦那様は、なぜ人間を伴侶になどとお考えなのでしょう。今日も街へ繰り出されては、理想の伴侶は見つからなかったと、溜息を吐かれる。旦那様に相応しい伴侶など、人間の中にいるはずがないだろうに。旦那様の外套を受け取り、その背を見つめる。下等な人間より、召使いの私は劣るのですか? #twnovel

2020-07-13 00:35:46
リュカ @ryuka511

恋人を寝取ったのは親友だった。関係がバレて謝りつつも、解消する気がないのは見え見え。「人の心は縛れないから仕方ない」などと、殊勝な顔で許したフリをする。どうせもう別れようとしていた所だ。こんなクズだと見抜けず惹かれる辺り似た者同士なのだろう。謝罪はいいから、黙って苦しめ #twnovel

2020-07-13 23:07:38
リュカ @ryuka511

隕石から作られたその剣に斬れないものは無かった。名剣と謳われ、長い年月の間に幾度も持ち主を変え、数多の殺戮と破壊の道具にされた。「この剣は泣いている」現在の持ち主の青年はそう語る。帰れぬ宇宙を想い、意に沿わぬ扱いに泣いていると。「我が手にある限り泣かせはせぬ」 #twnvday #twnovel

2020-07-14 23:47:49
リュカ @ryuka511

生家の者は人間を憎悪し、殲滅を狙っている。人間との共生を目指す私は異端視され、堪らず家を出た。人間に与した裏切者として、彼らは私を消そうと追ってくる。貴族種たる資質を備えたとはいえ、我家のルーツは半吸血鬼。人間がいなければ我々は存在しなかったというのが何故わからないのだ #twnovel

2020-07-16 00:07:25
リュカ @ryuka511

終わらせてしまえば何とあっけないのだろう。長らく私は単なる傀儡であった。傾く国を立て直すべく手を尽くしたが、私の出した布令は民に届かず消えていた。民衆の不満や怒りは君主の私に向けられる。ならば、それを受け止めよう。目論見通り私は革命に倒れた。崩れゆく砂の城に、ひとり笑う #twnovel

2020-07-16 23:41:49
リュカ @ryuka511

「そういうの、死亡フラグっていうのよ」「そんなのへし折ってやるさ」最終決戦前。勇者は私を愛してると、帰ったら結婚しようと言う。こんな時に愛してるなんて言わないでよ。「私が実は魔王の手先だったら?」「君を利用した魔王をぶっ殺して君を貰う」王は私を許さないだろう。それでも私は #twnovel

2020-07-17 23:33:18
リュカ @ryuka511

「貴方の幸せを祈っています」そう言ってあの人は行ってしまった。王命には逆らえないと、戦の最前線へ。別れは冷たいものだと思っていたのに、温かなそれは一層胸を裂く。許されない恋だった。けどこんな結末にならなくても。最後の温もりを抱えながら、戦を始め彼に出陣を命じた父を憎んだ #twnovel

2020-07-18 22:34:23
リュカ @ryuka511

あの日交わした約束を、君は覚えているだろうか。卒業から10年経った時、互いに独身だったら結婚しようなんて青臭い約束を。あれから10年。僕は独身で、やっと君を迎えに行く自信がついた。約束の場所へ。君はまだいない #twnovel 黄昏に包まれ知る。逃げただけの僕を、君はとっくに見限っていたのだと

2020-07-19 23:25:51
リュカ @ryuka511

「メビウスの輪は一度切らないと作れない」「どういう意味?」「永遠を手に入れるには一度断ち切らないといけない。まぁ、君は知らなくていい事だ」「またそうやって子供扱いするのね」むくれる少女を見つめる。死から救う為とはいえ、彼女の人としての生を終わらせたのは正しかったのだろうか #twnovel

2020-07-20 23:38:07
リュカ @ryuka511

きみはぼくが困ってるとすぐに来て助けてくれる。淋しい時は抱きしめてくれる。きみはぼくの天使だ。絵本で見た天使とちょっと違うけど、天使にもいろんなのがいるんだろう。みんなはきみを怖がるけど、大きな口も目のない顔もたくさんの手と足も、ぼくを痛めつける奴よりずっときれいだから #twnovel

2020-07-21 23:34:34
リュカ @ryuka511

苦しくて悲しくてたまらなくて、応えないあなたの唇を塞いだ。強引に口づけられても、あなたは拒みも受け入れもせず、戸惑いすらせず佇んでいる。劣情のままに抱き竦めあなたの唇を割り吐息まで貪り、熱に浮かされあなたを見つめれば、その瞳には憐憫の色。憐むくらいなら拒んでほしいのに #twnovel

2020-07-22 23:40:31
リュカ @ryuka511

「頼む、これを教会に」そう言って息絶えた男から託されたのは、吸血鬼の血が入った小瓶だった。不治の病の特効薬と言われている。教会が何の為にこれを入手しようとしてるかなんて知らない。これがあれば、彼女を救える。誰もいないのを確かめ、小瓶を奪った #twnovel 元気になった彼女の口元に、牙が

2020-07-23 21:53:08
リュカ @ryuka511

「半吸血鬼は人間からはもちろん、一部の吸血鬼からも狙われます。自分の身は自分で守るのです」私の話を子供達は真剣に聞き、武術を学ぶ。半吸血鬼狩の恐怖を身をもって知っているのだ。「私達は半端者などではありません。貴族種のルーツは半吸血鬼なのですから」追われる子供達に、希望を #twnovel

2020-07-25 00:16:21