渡辺浩弐さんのNFTノベル「10年後の小説」

渡辺浩弐さん(@kozysan)によるツイッターとNFTを使った長編小説「10年後の小説」の本文と紹介です。(2021/05/12更新)
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第3回落札終了時

総落札金額: 2350ドル
総落札回数: 3回
総入札回数: 12回

 

本文

渡辺浩弐 @kozysan

#NFT これは小説だ。この冒頭部は十年前に書かれ競売にかけられた。落札者が決まるとその人物が小説の続きに登場し、話は先に進んだ。そしてまた売りに出されると次の落札者が登場し、さらにそのまた次の落札者が登場し…そうやって小説は成長し、今遂に完結に至った。話を戻そう。最初の落札者の名は

2021-04-17 00:25:37
渡辺浩弐 @kozysan

@CryptoKoala555氏だった。そして雪玉は転がり始めた。だが「並行世界」の人々は考えた。この第一落札者は果たして購入したツイートをすぐにまた競売に出品してくれるだろうかと。その判断は@CryptoKoala555氏一人に委ねられていた。つまりこの人次第でこのプロジェクトは絶命することになるわけだが

2021-04-24 00:20:21
渡辺浩弐 @kozysan

@w_cat氏のもとへとツイートは無事に手渡され、物語はさらに進んだ。そして進むにつれ、裏側に秘められた仕掛けも明らかになっていくのだった。そうこれは購入者の全てが登場人物になる「本」なのだ。当然、登場人物の全ては実在の人間であった…と同時に、もう一つの世界にも、彼らは存在していた。

2021-05-01 21:37:44
渡辺浩弐 @kozysan

この宇宙とは別のとある並行世界に、分身たちは存在していた。たとえばこちら側に存在する@ENN氏と同じ@ENN氏が、あちら側にも存在していたのだ。彼らの目的とは、量子通信を使ってこちら側にアクセスすることだった。その方法が一つだけあった。電子メディア上の、変異し続ける「小説」への干渉だ。

2021-05-12 13:02:36

ツイート販売ページ

オークション形式での販売です。
渡辺浩弐さんの手元から離れたため、以降は各落札者(=出品者)の判断で終了されます。

Valuables
https://v.cent.co/tweet/1383079138030882827

現在のツイートオーナーは@ENN (EXCALIBUR)さんです。@ENNさんもまた、NFTアートを作成している方です。

EXCALIBUR 🪩 @ENN

Japanese contemporary artists #urbanart #cryptoart #pixelart / MOCA Busan / Phillips / ASIA NOW / SuperRare / Urban Art Fair / KnownOrigin

https://t.co/24vsl1d1Wf

企画の説明

渡辺浩弐 @kozysan

#NFT ツイッターとNFTを使って長編小説を作り上げようという試みです。このツイートは2031年4月17日に完成「した」小説の冒頭部分です。これをオークションに出します。もし誰か落札してくれたら実験はスタート。小説は当該ツイートへのリプライの形で伸長していきます。 v.cent.co/tweet/13830791… twitter.com/kozysan/status…

2021-04-17 00:35:33
渡辺浩弐 @kozysan

#NFT 購入者=読者の全員が登場人物になる「本」。ブロックチェーン技術で、そんなことが可能になったわけです。

2021-04-17 00:36:29
渡辺浩弐 @kozysan

#NFT そろそろ小説のタイトルが必要でしたね。今後変わるかもしれませんが、『10年後の小説』でいきましょう。 togetter.com/li/1699692

2021-04-24 01:42:22

もう少し詳しい説明

時間がある方は、渡辺浩弐さんが自身でこの企画について語った文章、動画をご覧ください。動画(トーク・エッセイ)は説明が始まる部分までの秒数指定がされたリンクになっています。

渡辺浩弐の日々是コージ中 第577回 4月22日「NFTで小説を書く!?」

渡辺浩弐のトーク・エッセイ4月16日

渡辺浩弐のトーク・エッセイ4月23日

 

1. NFTとツイッターの連動小説

以前、ツイートが高額で落札されたってニュースがありましたよね(ツイッター創業者が投稿の初ツイート競売 3億円余で落札)。

これと同じようにNFTを用いたシステムを使い、冒頭にまとめた「本文」の最初のツイートが販売されました。

このツイートを落札した人は、このツイートを販売サイトの正規の機能で転売することができます。もう少し詳しく言うと転売してほしいと渡辺浩弐さんは言っています。

小説の本文はこのツイートが転売されるたびに、ツイッターのリプライ機能で書き加えられていきます。転売されるたびにページが1枚ずつめくられていく本をイメージしてください。

転売履歴は販売ページに記載の履歴で確認ができます。ブロックチェーン技術が使われているため、これらは偽造改竄ができません。

 

2. 小説の完成は10年後

もう一つ大きな点として、物語の完成日が決まっています。

上記ツイートにもありますが、作者さんの言葉を借りるならこの小説は"2031年4月17日に完成「した」小説"です。作者の渡辺浩弐さんは転売が成立する限り、10年間はこの企画を続けると宣言しています。

10年間に何回の書き加え(ツイートの転売)が行われるのか。

最初に落札した人がそこで止めてしまえば「最初のツイート」「一回目の販売成立ツイート」「完結ツイート(これは譲渡に関係なく書くのでは?)」の3ツイートで完結する小説になります。

1000回譲渡が行われれば、単純計算でツイート1回140文字×1000回=最大140000文字の長編小説になります。

この小説はどこへ向かうのか、みんなの力で確かめましょう!

 

Q&A

 

仮想通貨についての取り扱い、オークションサイトValuablesの利用については、各サイトの説明を熟読したうえでこの企画に参加しましょう!

Togetter編者が作成した『10年後の小説』の参加方法の記事もご確認ください。
https://note.com/w_cat/n/n8b1ef16464d9

 

Q: つまり、お金を払って参加するリレー小説ってこと?
A: 違います。執筆者は渡辺浩弐さん一人です。一人で書くので、いわゆるリレー小説のような支離滅裂さはうまれないと語っています。

Q: 一度オークションが終わったら、また渡辺浩弐さんが書き足した新規ツイートをオークションにかけるんだよね?
A: 違います。オークションにかけられるのは常に親ツイートのみです。落札者が手に入れた親ツイートをオークションに再度出品し、それがまた落札されることで物語は進んでいきます

Q: じゃあ落札価格はどんどん値上げしていくってこと?
A: どちらとも言えません。落札者がオークションに再度出品した際に、自分が落札した購入額よりも安価で販売することも可能ではあります。ただし、基本的には損をしない価格で販売する落札者が多いのではないでしょうか。なお、落札者の再出品では、出品者(=ひとつ前の落札者)にいく金額は落札額の87.5%です。出品者が損をしない販売額はひとつ前の落札価格に15%程を増した額になります。

Q: 支払方法はクレジットカードでいける?
A: いいえ、クレジットカードでは支払えません。オークションサイトが仮想通貨イーサリアム(Ethereum)のみに対応しているため、イーサリアムでの支払いになります。

Q: オークションだけどイーサリアムの支払タイミングは入札時? 落札時?
A: 正式な支払いは落札時になります。しかし、入札時にデポジットのようなかたちで入札額がウォレットから差し引かれます。入札後24時間たっても出品者にアクセプトされない場合、入札のキャンセルが可能です。この場合gasと呼ばれる手数料をマイナスした分の額が返金されます。

Q: オークション終了のタイミングは?
A: 出品者が入札を見て「この入札に決めた」と決定ボタンを押すタイミングです。出品者が「これ以上の入札額になったら」、「〇月〇日を締切にする」などを決めていてもオークションページ上からはそれらは判断できません。入札後長い間アクセプトされない可能性もあります。

Q: とんでもない回数、転売されたらどうなるの?
A: とんでもない回数、物語が書き加えられます。

 

おまけ

今回の企画の執筆者、渡辺浩弐さんは、以前にもツイッターを利用した文芸作品を書いています。それらは、ツイッターやネットの特性を利用したものでした。今回の作品もNFTを使って、落札者の名前が登場するだけではなく、内容にもNFTが関わってくるのではと推測しています。

次の落札者が決まるまでのお暇に是非。

死ぬのがこわくなくなる話
単行本化もされたツイッター長編。「今」を切り取るためにツイッターを使用。

ツイストーリー
140文字ピッタリで語られる掌編小説。本人いわく「ツイッターサイズ(140字)で、ちゃんとツイスト(オチ)のある小説」。今では珍しくないフォーマットですが、2009年時点では珍しかったのです。