#34 幸福な死を

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ゆっくりとその蓋を撫ぜる。

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｢ごめんね、逢馬。｣ pic.twitter.com/rmoTM7JI7M

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僕の“世界”では、君を救えなかった。

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『彼方者、野々瀬逢馬、死亡。』

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重苦しい空気の中で目が覚める。

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目が覚めた？

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僕は死んだはずなのに。 pic.twitter.com/mE3Jr6SlCG

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生まれ変わったにしては身体中が痛いし、血が足りない時の耳鳴りがキィンとうるさいし、噎せ返るほどの血の匂いがする。

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死ぬ前の時間に戻ってるみたい。

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ここはどこなんだろう。

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箱の中、みたいだけど。

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僕は今寝転んでるのかな。 うん、そんな感じがする。

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それで、顔の上からちょっとだけ光が届いてて。

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僕の目の前にあるものは。

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野々瀬逢馬、その人だ。 pic.twitter.com/nw96E4TiQq

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よく見ると僕の手は彼の手に握られていて、その温度は彼が生きている時よりも冷たくって、僕の手の温度と混ざりあって温くなっている。

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彼の顔には血がべとりと付いていて、首には僕の知らない大きな傷がある。

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ラキさんがやったのかな、逢馬はそれで死んだのかな。

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自分の中に嫌な感情が湧き上がってくる。

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その感情はあまりにも、

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｢───ずるい。｣

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僕と一緒に死んでくれるって言ったのに。

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僕が殺してあげるんだと約束したのに。