【2021年4月】1日1SSセルフまとめ

すべてフィクションです
0
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

まるで息をするように平気で嘘を吐く君が、神妙な顔つきをしている。訳を尋ねても「何でもない」って首を振る。実はね、と声を潜めるから耳を寄せたら「わっ!」って叫ばれた。 「だって何にも思い付かなくて」 まさかのエイプリルフール。 いろんな意味で心臓に悪いから勘弁してください。 #TwitterSS

2021-04-01 07:06:33
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

じゃあ、またね。 言ってぎゅうっと抱きしめたら同じように抱きしめてくれて、うれしくてこっそり涙を拭いた。このあたたかさは絶対に覚えておく。 たとえ魂だけになったとしても、たったひとつ、ひたすらに願い続けるよ。 大好きで大好きなキミが、きっとずーっと、しあわせで在るように。 #TwitterSS

2021-04-02 07:02:45
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

きらきらと音を立てて光の輪が散る。これでもう君とは会えないのか。込み上げる涙を堪えることもせずみっともなく泣いていたら、柔らかい手が背中を撫でてくれた。 『大丈夫、これは粉々になっても心を照らし続ける光だから』 それが最後の言葉で。 ただただ涙を落とす。それしかできない。 #TwitterSS

2021-04-03 07:12:34
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

そんなの自己満足だ、とばっさりやられた。 「理解しようってところ。解らなくても、受け入れることはできるよ」 何を言っているのか解らない。 「いいよ、解らなくても。それが当たり前さ」 もちろんこれも、ただの自己満足だし。 そう付け加えた笑顔は清々しい。 やっぱりよく解らない。 #TwitterSS

2021-04-04 07:07:09
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

隣にいる彼を、ねえ、と呼んでみた。んー、と返事をするだけで視線はずっと手元に注いだまま。全然こっちを見ようともしない。 わざとらしくため息をついても彼は気付かなかったみたいで、あたしは静かに部屋を出た。 ふたりでいるのにひとりぽっち。 やるせなくてSNSに愚痴を垂れ流した。 #TwitterSS

2021-04-05 10:48:10
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

またやっちゃったよ。もっとちゃんとしたいって気持ちはあるし、自分では慎重にやってるつもりなのに。しゅんとしてると先輩が慰めてくれた。 先輩の気持ちはありがたいけど余計に落ち込んじゃう。 先輩がこんな失敗したとか信じられないし。 早く先輩みたいに、出来るひとになりたいなあ。 #TwitterSS

2021-04-06 19:41:33
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

お隣に住んでいるお兄さんにもらった卵が孵った。うれしくて見せに行った。 「よく孵せたね。でもほんとうに大変なのはこれから。この子に食べられないようにね」 どうしたらいいのか尋ねたらお兄さんは笑った。その目許はまるで氷のように冷たくて鋭い。 「いつも誰かを憎んでいればいい」 #TwitterSS

2021-04-07 07:15:58
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

ボタンを押してもうんともすんとも言わなくなった。メーカー曰く、古いモデルで修理は難しいそうだ。そのまま回収依頼をした。 きみのほんの一部でも、巡り巡って他の何かに姿を変えて、僕の所へ戻ってくればいい──なんて、感傷的過ぎるかな。 さて、新しいお掃除ロボットを探さなきゃ。 #TwitterSS

2021-04-08 07:13:05
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

まるで旋風のようだった。 前触れもなく現れ、私のこころを叩きつけた。 だから、惹かれた。 炎のような熱さも大地のような寛さも水のような清らかさもなく吹き荒んで、私に傷をつけ消えた。 傷は癒えても痕が残るだろう。それでいい。 この傷痕さえあれば私は、この先を生きてゆけるから。 #TwitterSS

2021-04-09 07:24:05
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

旅立つ君を見送ったのはずいぶん前だ。その前夜、闇に紛れて訪れた君に餞を贈ることもできなかった。その瞳は希望に燃えていて、羨ましさの裏に妬みを隠すのに必死だった。 何処で何をしている? 望みは果たせた? ──僕はここで、君が夢に破れ傷つき戻るのを待っているのかもしれない。 #TwitterSS

2021-04-10 07:10:11
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

寒いと思ったら雪。こんな日は家でぬくぬくしておけばよかったねえ。答える代わりに君は黙って、僕の手を握った。 「あったかいかと思ったのに」 責めるような言い方。でも目許は柔らかい。冷えた僕の手をあっためようとしてくれたのかも。嬉しくて強く握り締めたら「痛い」って怒られた。 #TwitterSS

2021-04-11 07:05:10
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

夕暮れの空の色が好きだ。 共にこの空を見上げてくれていた君は、僕より先におとなになって、気がついたら隣から消えていた。 ひとりになってもやっぱり僕は、夕暮れの空を見上げている。 君はどうだろう。たまには夕暮れの空を見上げているといいな。 一緒におとなになれなくて、ごめん。 #TwitterSS

2021-04-12 18:03:59
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

きらきら眩しかった君が、小さく萎れている姿を見るのは辛かった。慰めようにも見つかる言葉はどれも薄っぺらで、とても君の心に届くとは思えない。 何ができるだろう。 答えは見つからず、だから黙って座ってた。 きらきらの君じゃなくていいよ。 だから消えないでね。 そう、思いながら。 #TwitterSS

2021-04-13 18:18:00
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

世界を疑え──師匠がいつも口にしていた言葉だ。近頃やっと、朧気ながらもこの言葉の意味が解りかけてきた。師匠の世界は俺の世界と同じものだったのか。師匠は鬼籍に入って久しく確かめる術はない。 世界とは何か。 答えを求めて流離う。 もっと真摯に師匠の言葉に触れておけばよかった。 #TwitterSS

2021-04-14 07:15:56
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

おとなになったらあれもこれも全部、思い通りにできるのかと思っていた。「おとな」と呼ばれる歳にはなったものの、儘ならないことばかり。惰性でやり過ごすだけの退屈な日々に思う。きっとこのまま何事も無く終わりが来るんだろう。 こんなことならもう少し、我儘に生きてみればよかった。 #TwitterSS

2021-04-15 07:04:42
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

雨、と呼ばれるものが降っている。これは止まないんだと聞いた。昔は降っていないときもあったと聞いてもうまく想像できない。 「いつか、雨の降らない場所を探しに行こう」 お姉ちゃんが笑いながら誘う。それだけでどきどきした。 雨の音に包まれながら、その「いつか」を待ちわびている。 #TwitterSS

2021-04-16 07:18:30
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

ずっと一緒にいる? や、別にそんなのいいよ。 ずっと守ってあげる? は? 何から? あたしがキミを好きでキミもあたしが好きなら、それ以上も以下もなくない? 別にそういうの求めてないよ。 重荷や縛りになるんじゃなくてさあ……解る? お互いを大切にできれば、それでいいじゃん。 #TwitterSS

2021-04-17 07:01:24
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

さあ行っておいで。 そう言って何度、若者たちを見送ったことか。見えない重圧を背負いながらも、だがひとりとして泣き言もなく旅立った。 もうどうにもできなくなったなら、重圧を放り出して逃げて、生きていてくれたらいいが。 折々に伝えた言葉がどうか、彼ら彼女らの中に在らんことを。 #TwitterSS

2021-04-18 07:06:00
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

君が伸ばした手を反射的に握っていた。君は静かに笑いさめざめと泣き、言葉もなく身を寄せてきたので抱きしめた。 出逢わなければよかった? 君の問いに首を振る。 どうせいつかは別れるんだ誰とだって。それなら出逢ったもん勝ち。 僕の答えに君はそっと、笑った。 もうすぐ、夜が明ける。 #TwitterSS

2021-04-19 11:39:02
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

記憶もクラウドにアップできてずっと残せたらいいのに。ぼやいた僕に、そんなのつまんない、と彼女が応じた。 「儘ならないのが人生さ」 達観した科白と表情に惚れ直す。 いつかこれも薄れゆく──なんて。悔しいから撮影してアップした。 「つまんない奴」 唇を尖らせる彼女は僕の、永遠。 #TwitterSS

2021-04-20 18:25:35
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

考えてるだけで行動しないのはきっと弱いから。弱さを認めてほんの少しでも行動すれば何か変わるだろうか? 「うじうじ考えてるうちは何も変わらないよー」 はっとして振り返った。喋ってるのはゲームキャラだった。 ゲームキャラに励まされるとか。 ほんっと、人生ってクソゲー並みだな。 #TwitterSS

2021-04-21 18:19:36
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

きぃきぃ喚く隣で適当に相槌を打つ。疲れたのか黙り込んだところで声をかける。 「で? 他には?」 さっきまでの威勢のよさは何処へやら。言葉に詰まった女の髪に触れた。 「どんなおまえでもいいけど。できれば、笑ってろ」 真っ赤な顔で睨まれた。 照れるなら素直に照れりゃあいいのに。 #TwitterSS

2021-04-22 07:24:38
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

見えないものを「無い」と断定するんだね? 見えなくても感じられるものも信じられるものもあるはずだけどなあ。それは何か? そんなの誰かに教わるものじゃないよ。自力で探すから価値や意味があるんじゃないかしら。ひとつくらいならきっと見つかるよ。 がんばってね、現実主義者さん。 #TwitterSS

2021-04-23 07:04:39
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

ああ。どうしたらこのざわざわするこころを鎮められるのだろう。 うろうろと歩き回る。力任せに壁を殴る。無意識に力を抑えているのか、自分で自分を壊すのは思う以上に難しいようだ。目についたグラスを床に叩きつけた。自分以外ならこんなに容易く壊せるのに。 早く姿を現せ──勇者よ。 #TwitterSS

2021-04-24 07:22:38
小椋 杏/おぐら あん @ogura_anne

あるがままでいいんだよと囁かれた。探していた場所はここなのかもしれない。何処にも自分の席がないなんて、どうして思い込んでいた? その理由には心当たりがありすぎて、胸がぎしぎししていた。 そんな諸々を追いやって、ここに居てもいいと信じられるまで、もう少し時間をくれますか? #TwitterSS

2021-04-25 07:04:35