twmys第2弾『死者の手』

相応恣意 @aioushii

「ちょっと晴一、今、何時だと思ってるのよ！カノンとの約束、忘れたわけじゃないわよね！？……え？……またなの？」『……ああ、またなんだ』晴一は電話越しに大きくため息をついて告げる。『殺人事件に巻き込まれた、遅くなると思う』「……精々カノンに殺されないように祈ることね」 #twmys

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『……んー今回に関しては大丈夫かも』「大丈夫？なんでそんなことが……まさか！」『ヤッホー、未羽、聞こえるー？僕だよ、カノンだよー』陽気な声が電話越しに響く。『やっぱさー、2人とも１度、霊媒師とかに見てもらうべきだって。きっと死神とかに憑かれてるから』大きなお世話だ。 #twmys

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「それよりどうしてカノンが晴一と一緒に？待ち合わせには早いと思うけれど」『春野に呼ばれたんだよ、晴一と3人で大学の学祭回ろうってさ。で、展示を回ってる途中で死体を見つけちゃって』「え？じゃあ春野先輩もそこに？」だとしたら厄介、あの人とカノンが揃えば面倒事が加速する。 #twmys

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『いや、春野は人のこと呼び出しときながら、自分はちゃっかり、地元の彼女と回るってどっかに行っちゃったから、事件に巻き込まれたのは僕と晴一だけだよ』喜んでいいのやら悪いやら。「で、犯人の目星はついてるの？」『それならこうして、わざわざ電話するはずないじゃん？』ご尤も。 #twmys

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『ただ、現場には奇妙なダイイング･メッセージが残されていたんだ。だから――』今度は晴一の声が聞こえてくる。『お前が本気になれば、すぐに犯人の目星はつくと思う』頼りにされるのも善し悪しね「いいわ、とりあえず話を聞きましょう、さっさと晴一の奢りの夕飯を食べるためにもね」 #twmys

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「すまん！美雪が昨日からこっちに来てるんだ！俺から誘ったのに悪いが、今日はお前たち2人で学祭を回ってくれ！」春野先輩にそう言われ、放り出されてしまった僕とカノン。どうせ2人きりで学祭を回るなら、可愛い女の子とデートで回りたかったよ、何が悲しくてカノンと2人きりで…… #twmys

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「今、何か僕に対してすごく失礼なこと考えてなかった？」そう言ってカノンがジト目でこちらを睨んでくる。エスパーか。「まさか、自意識過剰だよ。でもどうする？春野先輩に任せっきりのつもりだったから、特に行きたいところもないんだけど」「あ、それは僕も同じ」カノンが賛同する。 #twmys

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入り口でもらったプログラムをめくってみる。「うーん、この映画上映会にでも行ってみる？タイトルは……『それわた！』だって」「うわ、タイトルだけ聞くと、なんとなく地雷っぽいんだけれど」カノンがうめく。「でも、上映時間までまだしばらくあるみたいだ」どこかで時間をつぶすか。 #twmys

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「じゃあここに行ってみよう！」カノンが指差したのは「ドキッ！男だらけのメイド喫茶……？」「いいじゃん、メイド喫茶、学祭っぽくて」「いや、僕が言いたいのはそっちじゃなくって」「それじゃあレッツゴー！」こうなると何を言っても無駄だ、僕はため息をつくとカノンについていく。 #twmys

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「お帰りなさいませ、ご主人様！」明るい声で出迎えてくれるメイドたち、そして小奇麗な内装と学祭とは思えない、気合の入った、居心地のよさそうな空間だ。これでメイドの中身が女の子だったら……しかもカノンは「思った通り、なかなかカオスでいい感じじゃん！」なんか楽しそうだし。 #twmys

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店の中は意外にというべきか、案の定というべきか、用意された席の8割程が埋まっていた。蓼食う虫も好き好きって言うもんなあ。時間をつぶすのが目的だったし、一番安いコーヒーを2つ頼む。それでも1杯500円。「ま、メイド喫茶ならこんなものじゃない？」カノンはしんみりと呟く。 #twmys

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「こんなものって、こういうところ来たことがあるのか？」「え？……さあどうだろうね、知りたい？」カノンが意味深にほくそ笑む。「いや、別に」心底どうでもいいので引き下がる。「えー、そこは興味がなくても聞こうよー、そんなだから晴一は女の子にもてないんだよ」大きなお世話だ。 #twmys

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「というわけで、勝手に話しちゃうと、この前未羽とメイド喫茶に行ったんだけど……」「え、未羽も連れて行ったの？」「ん？そりゃあだって……」僕らの話はそこで途切れた。なぜならば「キャー！！！」絹を裂くような、という表現がピッタリくるような女性の悲鳴が聞こえてきたからだ。 #twmys

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最初に動いたのはカノンだった。脱兎のごとく駆け出すと、悲鳴が聞こえてきたドアに手をかける。「！？」しかしどうやら鍵がかかっているらしい、そこからの判断は早かった、すぐに廊下に飛び出すと、その部屋の廊下に面したドアを開ける。そしてそこには想像通りの光景が広がっていた。 #twmys

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部屋にいたのは同い年くらいの女性で、ガタガタと震えていた。悲鳴を上げたのは彼女なのだろう。彼女の視線につられて下を見ると――エプロンを着けた女性が、目を見開いて倒れていた。微動だにしない彼女から生気は感じられず、胸に突き刺さった1本の包丁が凶悪な存在を主張していた。 #twmys

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「晴一、すぐに警察に電話！」言われなくともそれくらい。「もしもしすみません、人が死んで……」「ん？あれは……」カノンが何かに気付き、死体に向かう。「お、おい、勝手に現場を荒らすんじゃ……」カノンは僕の制止を聞かず、死体の手をよく見えるように動かした。「……これは！」 #twmys

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「そこでさっき言っていたダイイングメッセージが登場するわけね」『ああ、そういうことだ』随分と長い前置きだった。「それで、現場に残されていたのは血文字か何かかしら？」『いや、それが違うんだよ、被害者の手の形がダイイングメッセージになっていたんだ？』『手の形ですって？』 #twmys

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『そう、被害者は西岡珊瑚さんっていう、メイド喫茶で調理担当の人だったんだけれど、彼女の両手が不自然だったんだよ。右手の中指と左手の親指だけが立てられていて……ちょっと普通では考えられないだろう？』晴一が言う形を想像してみる、確かに自然に残されるような形とは思えない。 #twmys

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ちなみに写真で表すとこのようになるらしい。 #twmys http://t.co/yZcKMKk

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「それで容疑者はどれくらいいるのかしら？」『今のところ、メイド喫茶の関係者に限定すると、一定時間姿が見えなかったのは3人いるらしい。交友関係から見ても、この3人の中の誰かが犯人の可能性は高そうだね』「じゃあ他の可能性はひとまず措いて、まずはその3人について聞かせて」 #twmys

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『了解、まずは1人目、第一発見者――現場で悲鳴をあげた、北原弥生さんだね。メイド喫茶を主催したコンピ研で会計をしていたらしくって、乙女座のAB型だとか。というか女子部員がいたなら、なんで男にメイドをさせたんだろうね』その意見に賛同しないでもないが、今はどうでもいい。 #twmys

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『次はメイド喫茶で,メイドをやっていた一人で、東村直哉、射手座のB型で、被害者の西岡さんに片思いしていたって話だね。トイレに行くって言って姿が見えなくなった時間があるらしい』この短い時間でよくぞそこまで。『そして最後は……』そこまで言って、晴一がモゴモゴと口ごもる。 #twmys

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やがて意を決したように晴一が告げる。『最後は南野光一郎、獅子座のO型、被害者の元カレ、以上』名前を聞いて、得心した。「晴一、たまたまあいつと同じ名前だからって変に意識しないで、珍しい名前でもないんだから。それと」ため息1つ。「なんでこんな簡単な犯人が分からないの？」 #twmys

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『へ？』晴一の間抜け声が電話口から聞こえる。「念のために確認するけれど、メイド喫茶の人たちにもダイイングメッセージに心当たりがないかは聞いたんでしょう？返事はどうだったの？」『え、えっと、まだ全員に聞いたわけじゃないけど、今のところ心当たりがあるって人はいないかな』 #twmys

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「それじゃあよっぽど犯人は皆に慕われているか、被害者がよっぽど皆に嫌われていたか、あるいはその両方かだったんでしょうね」『え？え？』全く出来の悪い兄を持つとこれだから困る。「だから、もう犯人はわかっちゃったの。今から名前を言うからよーく聞きなさい、いい？犯人は――」 #twmys