旧エヴァ+グノーシス&ユング・ノイマン的解釈-無知蒙昧なる使徒とアルコンテス-

戯れに、使徒の行動原理について、グノーシス主義神話のモチーフによる解釈とかやってみた。
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アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

【グノーシス主義の反宇宙的二元論】グノーシス主義の場合、反宇宙的二元論に基づく救済思想を構築している。反宇宙的というのは「負としての宇宙」を形成する原理(宇宙を形成した者=悪なる造物主とその配下達)に相対立する「正としての宇宙」を救済する原理が前提となっているということだ。

2010-04-27 19:45:18
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

後者の原理が「至高神」、あるいは多くの場合「父」なる至高神から遣わされた「子」なる「救済者」である。グノーシス主義においては至高神の本質(本来的自己)が、宇宙や世界を貫いて人間の中にも宿されているとされる。

2010-04-27 19:52:09
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ところが負の宇宙、即ち悪なる造物主とその配下達(アルコンテス)の支配下にあるこの世の宇宙の中の人間は、この自らの本質(本来的自己)について無知の状態に置かれていて、自らの本質を非本来的自己の身体性と取り違えている。以前引用した箇所に加え、また新たに引用してみよう。

2010-04-27 20:13:30
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

もし彼が我々の業を滅ぼすことができないようにとお前たちが望むのであれば来なさい。我々一人の人間を我々の身体の形に従って、また、この者の姿に倣って地から造ろうではないか。そして彼が我々に仕えるように、また、自分の模像を見てそれに恋するようにしようではないか。『この世の起源について』

2010-04-27 20:28:25
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

そうすれば彼はもはや我々の業を滅ぼしたりしないであろう。むしろ光から生まれてくる者たちを我々はこの世の全時間にわたって我々に仕えるものとするであろう。」[…]彼らのつくり物は光の檻となった。[…]彼らは無知で盲目であるために、彼を彼ら自身に対抗するものとして作り出してしまった。

2010-04-27 20:35:34
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

このような状況下にある人間は、救済者の告知により、人間の本質と至高神とが本来同一である(人間即神也)ということを認識し、至高神との合一を達成して救済されなければならない、というのがグノーシスの救済神話の概要である。

2010-04-27 20:44:07
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

グノーシスによる救済の告知は、それが急速に広まった古代末期において、それまで人間が常識的に持っていた宇宙・世界・人間観を根本から覆すとてつもなく大きなインパクトを有しており、人間は価値観の転向を迫られた。それはとりわけキリスト教と激しい対立を引き起こした。

2010-04-27 20:53:08
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ユダヤ/キリスト教の場合、宇宙あるいは世界を形成したのはYHWH(ヤハウェ)だということは皆さんもご存知のことだろう。このYHWHの被造としての宇宙とその中にいる人間は美しく善きものであったというのがこちらの前提である。

2010-04-27 20:56:40
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

もともとコスモスと同根の動詞「コスメオー」は「整える」「美しく飾る」という意味で、これに対応して「コスモス」は「飾り」「秩序」転じて「(秩序整然たるものとしての)宇宙、世界」を意味することになる。同様の事はプラトン『ティマイオス』におけるデミウルゴスとそれが作った宇宙にも言える。

2010-04-27 20:58:47
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ところが、グノーシス主義の考え方に基づけば、ユダヤ/キリスト教の絶対唯一の神であるYHWH、及びプラトン『ティマイオス』におけるデミウルゴスは、「至高神」ではない。それらは「悪なる造物主」という位置づけになり、それそのものが悪の根源となってしまう。

2010-04-27 21:02:55
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

こうした価値観の転倒の、具体的な解釈の相違例を持ち出すとすれば、有名な旧約聖書「創世記」の、エデンの中央に生えている「善悪を知る(グノースケイン)木」からその実をとって食べることを禁じた「主なる神」はもとより、その木からとって食べることを勧めた「蛇」などである。

2010-04-27 21:12:05
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

前者は人に「知識」による救済の可能性を閉ざす負的存在、後者は「知識」を開示する正的存在となり、後者はイエス・キリストの予型として位置づけられる場合が多い(当然ながら他のケースもある。ルシファーが転じて救世主として見立てられることもある)

2010-04-27 21:22:20
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

結果として何が言いたいのかというと、悪なる造物主である支配者「ヤルダバオート(その他名前多数あり)」率いる悪なる霊性(アルコーン)たちによって統治されており、それによって人間の「本来的自己(=至高神の一部)」は偽りの世界ないし宇宙にとどめおかれているということである。

2010-04-27 21:25:49
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

【無知蒙昧なるアルコーン】戯れに先ほどのグノーシス主義の反宇宙的二元論を前提に、エヴァの世界の中で説明された「白き月よりの使徒、その始祖たるアダム」が「正統なる継承者」と呼ばれ、「黒き月よりのわれらが人類、その始祖たるリリス」が「偽りの継承者」と呼ばれる意味を検討してみよう。

2010-04-28 01:14:18
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

まず使徒の特徴とその行動原理が人間にもたらしているものが何なのかを見ていただきたい。使徒は当初から無知蒙昧な行動を起こしている。そして人との戦いにおいて、次第に「知恵を身につけ始め」、最終的にはカヲルという、人と区別のつかない存在へとまで「進化」したと説明されている。

2010-04-28 01:18:58
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

しかし、いかに知恵を身につけているように見えていても、使徒の行動は最初から最後まで「無知蒙昧」であり、人間に対して災いしかなしていない。終盤においては力押しの被害だけでなく、「人を知ろう」とアスカやレイの心に恥も外聞もなくずけずけと立ち入ったことも例外ではない。

2010-04-28 01:33:30
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

このような行動それ自体、グノーシス主義における無知蒙昧で人間に対して性的な劣情を催すアルコンテスの行動と位置づけてもおかしくはない。(グノーシス主義に関心があるなら、入門書などではなく『ナグ・ハマディ文書』をぜひ参照してもらえればと思う。)

2010-04-28 01:40:52
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

カヲルにしてもである。彼は確かに叡智を持ったかのような言動をし、シンジを惹きつけたが、これは叡智ではない。彼はとってつけたかのような「賢しさ」を振りかざしているだけである。碇シンジは「彼は自分と似ていた」と告げた。つまりカヲルは、彼に模像を見させてそれに魅せさせただけである。

2010-04-28 01:49:46
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

最初から最後まで無知蒙昧な行動を繰り広げ、人間に対して禍しかなしえない使徒たちは、まさにグノーシス主義の神話に登場する無知蒙昧なるアルコンテスと一致するのである。使徒たちにユダヤ/キリスト教の天使名がつけられており、それをぶちのめすことからしても、形式的にはそういうことができる。

2010-04-28 01:53:20
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

補完計画において「不要な肉体を捨てる」と言っているところから、エヴァでもグノーシス神話のモチーフと同じように、物質的世界の中に或いは肉体の牢獄の中に、魂が閉じ込められており、それらは唾棄すべきものであって、魂があるべきところではないという点で人間側が偽りの継承者だと説明できる。

2010-04-28 02:08:12
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

逆にアダムやアダムよりの使徒をゼーレが「正統なる継承者」というのは皮肉である。無知蒙昧なアルコンテスが作った物質的世界になど、唾棄すべきものであり、その物質的世界は無知蒙昧なる使徒[=アルコンテス]に正統性がある、ということである。

2010-04-28 02:16:52