声優・ラジオパーソナリティーである若山弦蔵氏について、漫画家とり・みき(@videobird)先生による追想

先日亡くなられた若山弦蔵氏について、漫画家であり吹替映画の研究家でもある とり・みき先生のツイートを中心に纏めました。
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TORI MIKI/とり・みき @videobird

若山弦蔵さんは(日本の領有下にあった)樺太大泊町生まれ札幌育ち。NHK札幌放送劇団から声のお仕事に入られた。テレビ以前のラジオドラマ時代、NHKとTBS(当時はKRT)は専属の劇団を持っていた。テレビで外画番組が始まると、まずこの放送劇団員が今のような形態の吹替の仕事を担うようになる。

2021-05-31 22:26:55
TORI MIKI/とり・みき @videobird

50年代後半には外画番組の(数的な)最盛期を迎える。この時期に多くの若手新劇俳優が吹替に参入するが、その意味では若山さんはテレビ黎明期からの生粋の「声優」といえる。KRT「ローン・レンジャー」(生放送)とNTV「モーガン警部」(録音)で主役を担当し、どちらも大人気番組となる。

2021-05-31 22:26:55
TORI MIKI/とり・みき @videobird

その後も「バークにまかせろ」「スパイ大作戦」「鬼警部アイアンサイド」等の人気番組が続き「声の出演:若山弦蔵」という存在は世にひろく知られることになる。当時はとかくまだ日陰の存在だった声の仕事に光を当てた功績は大きい。そして長尺物(映画)ではOO7シリーズのショーン・コネリーを担当。

2021-05-31 22:26:56
TORI MIKI/とり・みき @videobird

正確には日高晤郎氏と交替しての二代目だったが、若山コネリーのフィット感は大きく、以後他のコネリー作品も担当するようになる。このトップランナーの自負ゆえか若山さんは声の仕事への外部からの揶揄には毅然とした態度で反論される一方、業界内部に対してもたいへん厳しいご発言の多い方だった。

2021-05-31 22:26:56
TORI MIKI/とり・みき @videobird

事務所にも属さずずっとフリーのお立場で、新劇出身の多くの方が現場スタジオでの共演声優との呼吸や絡みを重視される中「声優が芝居の相手とすべきは画面の中のオリジナルの俳優」と、複数トラックの録音が可能になって以後は早くから別録りを希望され実践されていた。

2021-05-31 22:26:56
TORI MIKI/とり・みき @videobird

そんなわけで音声業界においても若山さんは孤高の、というか一種「怖い」存在とされていたようだ。実際「若山さんにインタビューに行ったけどろくに話してもらえなかった」という声も漏れ聞こえてきた。しかし若山弦蔵のいない『映画吹替王』はありえない。入念に下準備をしたのち取材を申し込んだ。

2021-05-31 22:26:57
TORI MIKI/とり・みき @videobird

若山さんのご指定は新宿のホテル地下の軽食&バーの店でお一人でお見えになった。おそらく短時間で片づく類のインタビューとお考えだったのだと思う。話を始めて20分ほどで(店がうるさかったのもあって)私は編集者にホテルの一室をとってもらうようお願いし、若山さんのご同意も得られた。

2021-05-31 22:26:57
TORI MIKI/とり・みき @videobird

場所を移し、若山さんの話も乗ってきて、取材は当初の予定をオーバーして2時間近くに及んだ。それが『映画吹替王』最終段のインタビューである。本業ではあまり大した作品は残せていないが、この対談を収録出来たのは自分でもよい仕事をしたと思っている。

2021-05-31 22:26:57
TORI MIKI/とり・みき @videobird

その後「吹替の帝王」サイトでも池田憲章氏とともにお話をうかがう機会があったがFOX買収後このインタビューはサイトごと削除されてしまった。ダイジェスト版が以下に残っているのでよろしければお読みください(オリジナルはもっと辛辣でした)。 若山さんお疲れ様でした。 007fukikae.com/interview/002.…

2021-05-31 22:26:58
町山智浩 @TomoMachi

若山弦蔵さんはジェームズ・ボンドの前にTVドラマ『バークにまかせろ』の刑事バーク(ジーン・バリー)の声でした。億万長者のプレイボーイで運転手付きのロールスロイスに乗って優雅にセクシーに事件を解決するバークは元祖富豪刑事で、その裏返しが『刑事コロンボ』だったのです。 twitter.com/Yomiuri_Online… pic.twitter.com/bBNeeQtkh7

2021-05-31 23:02:04
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町山智浩 @TomoMachi

ジーン・バリーはジェームズ・ボンド役をショーン・コネリーと争った俳優で、『刑事コロンボ』はアンチ『バークにまかせろ』だったのでパイロット『殺人処方箋』の犯人、大富豪の医者はジーン・バリーが演じました。ボンドとバークとコロンボはジーン・バリー(若山弦蔵さん)でつながります。 twitter.com/TomoMachi/stat…

2021-05-31 23:07:12
町山智浩 @TomoMachi

『バークにまかせろ』は1960年代、雑誌『プレイボーイ』が提唱した独身貴族のライフスタイルを体現する刑事というコンセプトで生まれました。バーク刑事は事件の捜査中にハリウッドの美女たちと意味深な会話を楽しみます。若山弦蔵さんのセクシーボイスの魅力が最大限に発揮されたドラマでした。 twitter.com/TomoMachi/stat… pic.twitter.com/rviBst8oOw

2021-05-31 23:17:28
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町山智浩 @TomoMachi

『バークにまかせろ』からは『ハニーにおまかせ』というスピンオフが生まれました。バーク刑事と絡む私立探偵として登場したハニー・ウェストは毎回、さまざまな衣装で変装して潜入捜査し、キュートな黒のキャットスーツと空手で敵を倒します。つまり『キューティ・ハニー』の元ネタです。 twitter.com/TomoMachi/stat… pic.twitter.com/Hb8WwDvWFa

2021-05-31 23:27:48
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町山智浩 @TomoMachi

『ハニーにおまかせ』の見せ場はハニーが黒のキャットスーツで犯人の男たちを倒す空手ファイトでした。イギリスのTV番組『おしゃれ㊙探偵』がダイアナ・リグやオナー・ブラックマンなど美女の空手ファイトで当たった影響です。 youtu.be/lPXwkO89jQ0 twitter.com/TomoMachi/stat…

2021-05-31 23:38:54
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TORI MIKI/とり・みき @videobird

興味深いお話でした。補足すると(町山さんはご承知だと思いますが)最初のNHK版「殺人処方」のジーン・バリーは瑳川哲朗さんでしたが「バークにまかせろ」放送局だった日テレ版で若山弦蔵さんがバリーを新録された、という経緯でした。お二人とも今年旅立たれてしまいましたが。 twitter.com/TomoMachi/stat…

2021-06-01 00:09:03

 
 

TORI MIKI/とり・みき @videobird

ちなみに早稲田大学演劇博物館には若山弦蔵さんが寄贈した約1万冊の吹替台本が保管されていて閲覧できる。どの台本にも若山さん手書きのメモがびっちりと書き込まれている。機会があったらぜひご覧になってください。 pic.twitter.com/XdRmoMmrwN

2021-06-01 00:45:52
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