中川菜々への劣情と三流お涙ドラマみたいな話

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KNow @KNowf97

『残された時間をあなたと過ごしたい』 そう願った菜々のために、主治医に頼み込んで外出許可を貰った。酸素が手放せず、車椅子での移動にはなるが菜々きっての願いをどうしても叶えてやりたかった。 菜々はふたつ、虹ヶ咲学園に行きたいと言った。なぜ?と聞いてもその場では答えてくれなかった。

2021-06-01 20:26:49
KNow @KNowf97

虹ヶ咲に着いて、2人で海風を感じながらお互い何も話さなかった。 しばらくして菜々がぽつりと溢した。 「ここに来たかったのは、スクールアイドルとして全力を出したあの時を思い出したかったからなんです。…それと、ここがあなたとの始まりの場所だから」 そう話す菜々は、どこか楽しそうだ。

2021-06-01 20:26:49
KNow @KNowf97

時折咳き込みながらも自身の想いを語っていく菜々。楽しかったあの日々、2人で過ごしたあの時間── どれもかけがえのない大切な記憶だ。 「私、あなたとここに来られてよかった…。もう思い残す事なんてないかも」なんておどけて言ってみせる。そう…だよな…。こうしている間にも、残された時間は

2021-06-01 20:26:49
KNow @KNowf97

着実に減っていく。 風が冷えてきた。そろそろ戻ろう、と菜々に告げた。 外出して数日後、菜々の容態が急変したと連絡があった。講義などそっちのけで病院に向かった。どうか、どうか間に合ってほしい。それだけを願って、破れそうな肺に鞭打ってひたすらに走った。

2021-06-01 20:26:50
KNow @KNowf97

病室にはすでに菜々のご両親も来ていた。状態を聞くと急に意識を失い、少しずつ死へと向かっているのだという。普段と違い、呼吸も荒くまるで溺れているかのように見えた。ご両親の許可を得て菜々の側に行き、そっとその手を握った。酷く冷たかった。もうすぐ菜々の命の灯火が消えようとしていた。

2021-06-01 20:26:50
KNow @KNowf97

それからはあっという間だった。心電図の波形はなだらかな一直線を画き、無機質なアラートを鳴らしている。ご両親が医師、看護師を呼び宣告が為された。存外、人の死というものはあっけないのだと思い知った。 その後、近しい者だけでの葬儀が執り行われた。

2021-06-01 20:26:50
KNow @KNowf97

ご両親からは菜々と歩んでくれてありがとう、あの子もあなたの話をしている時は本当に嬉しそうだった、と聞かされた。 不思議と涙は出なかった。ただ、菜々への感謝と菜々の想いを背負って生きていこうと心に決めた。 『せめて最期は笑顔で、泣かないでほしい。私は絶対に今日までの日々を忘れない』

2021-06-01 20:26:50
KNow @KNowf97

『だからあなたも私を忘れないで──』 それが菜々の最期の、ふたつめの願いだった。 今でも鮮明に想い出せる。菜々との日々、彩り鮮やかな時間を──

2021-06-01 20:26:50
KNow @KNowf97

菜々…!えっちだなぁ…!!

2021-06-01 20:27:30