地下アイドルの♣️くんとファンの♦️くんがくっつくまでの話

いと @koitoitonoko

「はい、じゃあ撮ります！」ガッチガチの♠️くんが撮ってくれた。なお、♣️くんは待機列があり、❤️くんが撮ってます。出てきたチェキを軽く振りながら持ってきてくれて、手渡ししてくれた。ちょっとずつ表示されたチェキはなんだかんだ言いながら凄くいい感じの笑顔をしてる。

いと @koitoitonoko

「慣れているのかい？」「自撮りは良くやるよ。スマホでだったら全然慣れてる」「♠️よりも余程いい笑顔をしているよ。♠️も見習ったらどうだい？」「す、すみません寮長…ウィンク、まだ出来ないです」「君はそう言うところが可愛がられるからウィンクはどちらでも構わないけれど」

いと @koitoitonoko

「あ、じゃあ、オレ、戻ります。時間制限あるし」「あぁ、すまない♦️」「え」「え？」「…名前」「違ったかい？」「名乗ってないのに呼んでもらっていいのかなって」「大丈夫ですよけーくんさん」「♠️くん、けーくんさんはやめて…せめてけーくんにしといて…」迷った末にけーくん先輩になりました。

いと @koitoitonoko

後ろで「え、代理チェキ？へー、そう言う発想なかったけど、おもしろ」って❤️くんが言ってるのが聞こえる。そりゃそうだよね。普通は自分と推しが撮りたいだろうしね。どちらかと言うとブロマイド感覚で頼んでる。姉としては推し二人の写真感覚なので1000マドルのチェキはとても安いと思う。

いと @koitoitonoko

初めてのチェキはこうして🥀くんに捧げました。勿論チェキ自体はお姉ちゃんにお渡し。手元には何も残ってない。別にいいんだけど。🃏寮推しなのがバレてるとはいえ距離感近くないかなとは思い始めてる。お姉ちゃんの推し寮の人たち、キャラもあるとはいえこんなに近くない気がする。

いと @koitoitonoko

なんだかんだと通ってることと、同性であることと、自分から過度に接触してこないことの安心感で相手してくれるのかなって♦️くんは思ってるけど、それにプラスして♣️くんが推してる(※アイドル側からの矢印)なので、ファンの多い♣️くんへのからかい半分に♦️くんに絡みたいところがあります。

いと @koitoitonoko

「♦️先輩って♣️先輩推しなんでしょ？チェキとかいーの？」「なんで知って…」「♣️からのレスで一喜一憂しているじゃないか。本人の所に行ったりはしないようだけれど」「オレは見られるだけでいいし」「接触以外なら会話もできるのに。勿体ないですよ！」「寧ろみんながここにたむろして大丈夫？」

いと @koitoitonoko

なんでオレが囲まれてんの。いーんだけど。そろそろ運営からストップ掛からないのって聞いたら「学園長(※社長のことをこう呼ぶ)が、『揉め事を起こさない限りいいですよ。私、優しいので』って言ってた」って。優しいから、でいいのかそれ。最近、悪ノリして🥀くんの近くにいた🦈くんも来るし。

いと @koitoitonoko

ちょっとサービス過剰じゃない？大丈夫？寧ろこれはサービスじゃなくてオレが巻き込まれてるのでは。そう思うことも増えた。最近他の寮生にも認知されてるけど、考えるのはやめた。素直にありがとうって言っておく事にした。

いと @koitoitonoko

帰り道。お姉ちゃんが友達に物販頼まれたの忘れてたからって先に出て店の前で待ってたら。「あの、いつも🃏寮の人たちと一緒にいる人ですよね」女の子二人組に声をかけられた。「一緒にいる女の人は彼女さんですか？」「姉さんだけど」あ、これ嫌な予感がする。

いと @koitoitonoko

「そうなんですね。もしよかったら…」「ほら、ちゃんと言いなさいよ」言わなくていいです。そういうの苦手なんだよなぁ、って姉が早く出てこないかって店内にチラッと視線を向けるけど、まだ出てきそうな気配はない。困ったなと口の端が下がり始めたところで、「♦️」って後ろから男の人の声。

いと @koitoitonoko

「お前はこっち」「へ？」「ほら早く。すまない、♦️にはオレたちが用事があってそこで待っててもらってたんだ」「あ、そうなんだね。♣️くん、そのお兄さんとあまり喋らないから仲良くないのかと思ってた」「そんな事ないよ。ほら、♦️」振り返った先の♣️くん、笑顔ではあるけど目が笑ってない。

いと @koitoitonoko

なんで？って頭にハテナをいっぱい浮かべながら♣️くんの方へ。近くまで行くと抱き寄せられた。やっぱりなんで？女の子たちを見送った後、そのままなぜかわからないけれど中に連れて行かれた。「何でそんなに無防備なんだ」「？？？」「一人になったら声をかけられるに決まってるだろう」「なんて？」

いと @koitoitonoko

アイドルが目の前にいるのに一般人に声掛ける必要ある？あ、アイドルとは付き合えないから一般人にってこと？オレそんなに目立った事ないと思うんだけど。困惑。アイドルに無防備だって説教されるって何。しかも普段話するチャンスがない最推し。見てたいだけだからいいんだけど。

いと @koitoitonoko

「あー、あの、とりあえず、ありがと…？」女の子たちから助けてもらったのは事実なので。そこはお礼。それからもう大丈夫だと出て行こうとすると腕を掴まれる。「もうちょっと話がしたいんだけど」「…？」「いつもアイツらばっかりでズルいだろ」「…？？？」アイドルから何言われてるの？

いと @koitoitonoko

「♣️くんも話したいと思ってくれてたの？」「そうだけど」「なんで？」♦️くん側はファンだからそういう気持ちもあるけど、♣️くんは求められる側で、♣️くんから望まれるとは欠片も思ってなかった。「話がしたいっていうのに理由がいるのか？」「別にオレ、何か特徴とかあるわけでもないしさ」

いと @koitoitonoko

「まず男だってだけで目立つけど。レスに対してキラキラした目で見てくれるところとかは可愛いと思うけどな」「かわ、っ！？」「一目惚れだったから二度目からは上書きし続けてるんだけど」「そういえば一番最初の時とレス変わった、ね」「上書きしてるのはお前にだけだよ。他はそのまま」「え」

いと @koitoitonoko

上書き、というのは♣️くんの魔法のこと。魔法学校設定のコンセプトカフェなのでツッコんではいけないところ。それぞれ個別で持ってるユニーク魔法ってものがあって、ペン(※魔法使いのステッキの代わりのもの)を振る動作も魔法ごとに違う。確か最初のレスは光を灯す魔法だった(らしい)。

いと @koitoitonoko

二度目からはユニーク魔法だったらしい。歌って踊りながらのレスだから呪文もないから知らなかった。そして、テーブルに来てもらったりチェキの時に魔法をかけてもらうことも出来るけど、♦️くんはどちらもしたことなかったので知らなかった。違う動きだなーくらいに思ってた。

いと @koitoitonoko

※🃏寮生はもちろん全員知ってるし、お姉ちゃんの推し寮の人たちも知ってるし、お姉ちゃんも知ってる 知らなかったのほぼ本人だけ

いと @koitoitonoko

「あー、オレもしかして今、推しに営業かけられてる？」「営業じゃない」「これが営業じゃなければ何」「口説いてるんだよ」「営業じゃん」「何なら店を出てからオフでもいい」「枕ってこと？」「違うやめろ」「何が違うの？」「全部だ全部！お前と話がしたいって」「営業でしょ？」

いと @koitoitonoko

※この場合の営業とは、お金を落として欲しいから「君のことが好きです」「かわいいね」など褒めたり口説いたりすることを言います。 ♦️くんは、指名もしないしチェキも撮らないからもっとお金を落として欲しいとアピールされてると思っています。

いと @koitoitonoko

「営業じゃないってどうやったら伝わるんだ…」「♣️くんがアイドルしてる時点で無理じゃない？」「じゃあアイドルやめる」「アイドルやめたらオレが♣️くん推す理由無くない？」「じゃあどうしたらいいんだ」「どうもこうも…あ、姉ちゃんから電話」頭を抱える♣️くん目の前にして電話に出た。

いと @koitoitonoko

しかも、「じゃあまた来るね」って言って帰っていった。引き留めるタイミングを失った♣️くんが手を伸ばしたまま固まってるけど、取り敢えず出て行ってお姉ちゃんと合流した瞬間、ぶわっと顔が熱くなった。「真っ赤じゃん」「からかわないでよー」「うちのけーちゃんは可愛いなー」

いと @koitoitonoko

手を繋いで引っ張られるけど、手も指先まで熱い。「何あったの？」「女の子に声かけられて、♣️くんが助けてくれて、話したかったって言ってもらえた…レスも固定だったって言われた…」「アピール凄いね。どっちがアイドル？」「マジそれな」「えー、♣️くんと同担とかしんどい」「オレ担おかしい」