すいこばなし【北方謙三水滸伝・楊令伝小噺集】2021/6/1-30

【すいこばなし 注意書き】 ・北方謙三先生の水滸伝,楊令伝の何でもありな二次創作です。 ・水滸伝の原典ネタは日常茶飯事、スマホにPCなど電子機器も飛び交うし、あの人が梁山泊で元気に生きていたりする、異世界からお届けします。 ・原作未読の方でも楽しめるように、ネタバレを極力避けていますが、薄々感づいてしまう個所が垣間見えますので、その点はご注意ください。 ・原作に興味を持たれるきっかけになったらこれ以上の喜びはありません。 続きを読む
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すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

晁蓋「釣りで勝負だ、宋江」 宋江「受けてたとう」 晁「私は阮兄弟の力を借りる」 宋「ならば私は張順と童猛の力を借りよう」 晁「その二人の力は卑怯ではないか!」 宋「お前だって最初から他力本願だろう!」 晁「ならば釣るのは我らだけということにしよう」 宋「なるほど」 晁「尋常に勝負だ!」

2021-06-01 18:32:11
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

阮小二「梁山湖ならこの水域が一番です」 阮小七「ガキの頃からこの水で生きてきた俺らの言うことですからね」 晁「頼もしい」 童猛「この湖底に大物がいますぜ」 張順「確かにいました」 宋「さすが翻江蜃と浪裏白跳」 晁「釣れんな」 七「それは晁蓋殿が…」 宋「釣れんな」 童「もう逃げてます」

2021-06-01 18:32:11
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

晁「坊主だった」 宋「同じく」 晁「だから引き分けにするというのは釈然とせん」 宋「言う通りだ」 晁「ならば我らの組の者の釣った結果で勝敗を決めよう」 宋「乗った」 二「大漁でした」 七「数なら俺たち!」 張「大物でした」 童「質なら俺たちですな」 晁「…どちらにしろ」 宋「釈然とせんな」

2021-06-01 18:32:12
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

晁蓋…せっかちすぎて当たりを逃す。 宋江…のんびりすぎて当たりを逃す。 阮小二…数を釣る釣りに定評あり。 阮小七…湖底を潜って捕まえる漁が得意。 張順…水中戦で浪裏白跳に勝てる魚はいない。 童猛…湖底探索力で翻江蜃の右に出るものはいない。

2021-06-01 18:32:12
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凌振「今度はお前が大砲の弾になれ、解宝」 解宝「李応殿がいるではないか」 李応「私以外にも凌振の大砲で飛べる者がいた方がいい」 解「せめて練習させてくれ」 凌「何を甘いことを言っている」 李「墜落しない限り死にはせんよ」 解「練習もなしで引き受けられるか!」 凌「死ねばそこまでの命だ」

2021-06-02 19:11:49
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

解「なんだこの施設は」 李「お前がわがままを言うから凌振の大砲で飛ぶ練習施設を作った」 解「なんと大掛かりな」 李「ここまでやったのだから」 解「仕方ねえ」 李「この衣装を着用しろ」 解「デザインが気に入らねえが」 李「つべこべ言わずに大砲に入れ!」 解「…それで」 凌「発射!」 解「!?」

2021-06-02 19:11:49
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

李「まだ飛び方の説明をしてないぞ、凌振!」 凌「どうでもいい」 李「もうあんな空高くに…」 解「とりあえず身体を開けば…」 李「いいぞ!解宝!」 解「…どうやって降りれば良いのだ?」 李「風に乗りすぎだ」 凌「撃墜するぞ」 李「死なんよな?」 凌「発射!」 解「!?」 李「墜落した…」

2021-06-02 19:11:49
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

李応…梁山湖が広くて助かった… 解宝…二度と空なんか飛ぶものか。 凌振…梁山泊の撃墜王。

2021-06-02 19:11:53
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韓滔「すまぬ。道を尋ねたいのだが」 関勝「おう」 韓「この近辺に宿はござらんかのう」 関「宿ならばこの者が宿をやっている」 韓「おう、それは助かる」 郝思文「!?」 関「私もちょうど商談を終えて宿に帰るところなのだ」 韓「それは奇遇だのう」 関「共に宿に行こうではないか、旅の人」 郝「…」

2021-06-03 18:37:43
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韓「…どう見てもこの人のご自宅ではないかのう」 関「いや、今宵の私の宿だ」 郝嬌「関勝殿!また母上のご飯食べに来たの!」 関「そうだ。文句あるか?」 陳娥「うちに来るならば、事前に言ってください」 関「そうだった」 陳「手も洗って!」 関「今やろうとしたところだ!」 韓「お子さんかの?」

2021-06-03 18:37:58
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郝「狭い我が家で…」 韓「とんでもない。心が豊かになるお食事でした」 関「名は?」 韓「韓滔と申す。代州から旅をして参った」 関「代州は呼延灼だな」 韓「やはりご存知か、関勝殿」 関「おう。いつか共に戦いたいな」 陳「関勝殿。寝床は外でお願いします」 関「そんな!」 嬌「入らないもの!」

2021-06-03 18:38:04
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韓滔…思わぬ寄宿先で一晩過ごすことになった。 関勝…無理やり郝瑾の部屋で一緒に寝た。 郝思文…また関勝の無茶振りで陳娥に文句を言われてしまった。 陳娥…なんだかんだで、関勝が来る日の予感がしていた。 郝嬌…関勝が来るとご飯がさらに美味しくて嬉しい。

2021-06-03 18:38:06
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

李俊「頭の悪い呉用殿」 童猛「…」 阮小七「…」 張順「…」 李「阮小五が二人いたら阮小十だな」 張「実際言われたんじゃないか?」 童「次は俺だ」 李「よし」 童「頭の悪い呉用殿」 阮「…」 童「童威の同意を得られなかった」 李「シャレ大会じゃねえぞ」 張「無意識に言いそうだ」 阮「あれは」

2021-06-05 10:49:45
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

呉用「李俊」 李「げえっ!呉用殿」 呉「阮小九はいないのか?」 阮「…誰ですか?」 呉「阮小七と阮小二を合わせたのだが」 李「…」 阮「…兄貴は造船所で趙林しごいてます」 呉「そうか」 李「で、なんの用ですか?」 呉「水軍の兵の増強について」 李「本当か!」 呉「ではなく、交易の」 李「…」

2021-06-05 10:49:45
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

呉「それではな、李俊」 李(塩撒いとけ) 阮「…結局何しに来たんだよ」 張「まさか本当に言うとは」 李「冗談のつもりなのか?」 童「いちいち癪に触るな」 李「次は舟の上で尻を蹴飛ばしてやろう」 呉「李俊」 李「げえっ!呉用殿」 童(懲りねえな) 呉「言い忘れたが、水軍の補強は冗談だ」 李「…」

2021-06-05 10:49:45
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

李俊…呉用嫌いに拍車がかかった。 童猛…悪意のない悪意ってやつかい? 阮小七…つまらねえ奴の冗談は本当につまらねえ。 張順…もう少し俺らの立場になれねえもんかな。 呉用…機嫌が良いといらん冗談を言ってしまいがち。

2021-06-05 10:49:50
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楊志「石秀はなぜ拚命三郎なのだ?」 石秀「劉唐殿につけられました」 楊「兄が二人いるのか?」 石「いた、ですがね」 楊「そうか…」 石「うちはいい肉屋でしたよ」 楊「…」 石「どうしようもない役人が、やって来るまでは」 楊「それで公孫勝と共に?」 石「まあそんなところです」 楊「なるほど」

2021-06-05 13:51:49
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楊「確かにお前の戦は命知らずの戦かもしれん」 石「よく言われました」 楊「それで拚命三郎か」 石「公孫勝殿から一度だけ、暗殺を頼まれた事があるのですよ」 楊「そうなのか?」 石「相手は評判のいい役人です」 楊「…皮肉なものだ」 石「ただ、そいつがいたら俺たちが活動できなくなりますから」

2021-06-05 13:51:49
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楊「苦悩したのか?」 石「それが、自分でも意外なほど苦悩しませんでした」 楊「それは?」 石「そいつが、人ではなく仕事の対象だと、思えたんです」 楊「…」 石「自分でもあまりいい事だと思いませんが、致死軍では必要な事ですから」 楊「覚えておく」 石「ええ」 楊「…少し剣でも振らないか?」

2021-06-05 13:51:49
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楊志…石秀は致死軍より二竜山の指揮の方が向いてると思うな。 石秀…暗殺に向いているかもしれない。ただ、自分の意図しない者を殺すのを躊躇うところがある。

2021-06-05 13:51:51
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

施恩「…」 宋江「どうした施恩?」 施「宋江様!」 宋「そんな改まらなくてよい」 施「そういうわけには参りません!」 宋「よい。私もお前と同じところに座ろう」 施「ならば私は立ちます!」 宋「施恩」 施「はい!」 宋「私は、お前と座って話がしたいな」 施「…」 宋「心を柔らかくして話そう」

2021-06-05 14:28:35
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

施「心を柔らかく、ですか?」 宋「李逵を見習うといい」 施「私はあんなに強くは…」 宋「李逵の強さは板斧ではない。心の柔らかさだよ」 施「そうなのですか?」 宋「李逵は笑いたい時には笑い、泣きたい時には心から泣く」 施「…」 宋「そうやって心のままに、生きているのだ」 施「心のままに…」

2021-06-05 14:28:36
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

宋「お前は自分に厳しい」 施「…そう思いますか?」 宋「厳しさも時に必要だ。しかし、自分に厳しくすることと、自分を苛むことは違う」 施「…考えてみます」 宋「施恩」 施「はい」 宋「今、お前の心は何をしたがっている?」 施「私の心?」 宋「心のままにだよ、施恩」 施「…少し泣きたいです」

2021-06-05 14:28:36
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宋江…泣きたい時は泣いていい。 施恩…しばらく泣いた後、兵のもとに帰っていった。

2021-06-05 14:28:38
すいこばなし(北方水滸伝・楊令伝小噺集) @suikobanashi108

童貫「李明」 李明「はい」 童「私の調練はコスパが悪くないだろうか」 李「…調練の、コスパでございますか?」 童「そうだ」 李「なんと申し上げたらよいのか分かりませぬが…」 童「…」 李「この世の中で、戦ほどコスパの悪い政はないのではないでしょうか」 童「軍人が言うことではない、李明」

2021-06-06 11:15:39
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