100日間生きたワニを観たのでまとめる。

2021.7.14 ぼかしていた後半部分、主にカエルに関する評価と感想を追加しました。
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銅折葉 @domioriha

やめろと言われなかったので書きますが、60分の映画のうち原作の再現に前半30分が使われ、ワニが死んでからの話が後半30分のテーマになっているわけですが。 前半は原作のもろもろの毒気や風刺、ネズミとワニの不仲ッぽい描写、不穏さは抜かれて純粋に好青年達の物語になっているために

2021-07-14 22:41:20
銅折葉 @domioriha

ワニの死は仲間達の全員にとって大きな悲しみであり、そして彼の死はあまりに大きな衝撃過ぎて、誰もまっすぐそこに向き合えず、受け止めきれないものであるという側面が明瞭になっています。

2021-07-14 22:43:56
銅折葉 @domioriha

原作漫画だと思わせぶりな描写でネズミがワニに何らかの悪い感情を持っていて彼の死に何らかの関与をしていたんじゃないか、タイムスリップして2周目をしていてワニの死を回避しようとしているんじゃないかという考察も成立しましたが、映画においてはそう捉えるのは難しい描写が徹底されています。

2021-07-14 22:44:59
銅折葉 @domioriha

で、4月のワニの死からさらに「100日後」として後半が始まります。季節は梅雨に移り変わっていて、しかし仲間達は誰一人ワニの死を受け止め切れていない。なんとなく疎遠になり集まることもなくなっていること、それぞれ人生の目標やを見失って無気力になっている状況が丁寧に描かれます。

2021-07-14 22:47:05
銅折葉 @domioriha

ここに本作一番のサプライズであり悪評の原因にもなってくる新キャラクター、カエルが登場してくるわけです。彼は空気の読めない大学生か売れない芸人のようなノリで、そのままワニのいない仲間達の中に割り込むようにして加わってきます。これが実に無神経で鬱陶しく見える。

2021-07-14 22:48:34
銅折葉 @domioriha

これが、カエルのキャラと行動、言葉遣いもろもろがおそらく相当徹底して計算され、敢えて鬱陶しく敢えてワニの代わりにならないように設計されてるんですよ。 後ろ姿とか興味を持つこととか、一見ワニのように似て見えた直後に、全然違う別人であることが示される。

2021-07-14 22:50:26
銅折葉 @domioriha

バイクに興味がある、ゲームはそんなでもない、かわいこちゃんにはぐいぐいアプローチする(鬱陶しがられて断られる)、ため口で友達になろうとする、どれも全然ワニとは違う振る舞いであることがとにかく徹底している。

2021-07-14 22:51:45
銅折葉 @domioriha

このせいでレビューなんかでもやたら嫌われていますが、このカエルがワニとはまったく似ても似つかない別人として、ネズミやセンパイたちの中に入り込んでこようとすることで、観客にはワニの死が否が応でも目の前に突きつけられる。これでもかと徹底的に、もうワニはどこにも居ない欠落が示される。

2021-07-14 22:53:25
銅折葉 @domioriha

自分はそんなに原作にのめり込んでもいなかったし、映画前半も正直かったるいと思って特に感情移入もしてなかったけど、ここに来てワニの死がまざまざと見せつけられて、もうなにをどうやってもワニは戻ってこないんだってのを叩き付けられるのは効果的で。このあたりはすごく上手いと思いました。

2021-07-14 22:55:11
銅折葉 @domioriha

で、まあカエルにもいろいろ事情があって、その振る舞いや行動にも少しずつ慣れて(あんまり許容はできない程度には相変わらず鬱陶しい)、仲間達との距離が縮まっていくことが描写されるわけですが、そのあたりの乗り越えがあってなお、カエルの言動は鬱陶しいままなんですね。

2021-07-14 22:56:36
銅折葉 @domioriha

これも彼に対する視聴者の悪感情の原因になってるんだと思いますが、ワニの死後、ワニの居た立ち位置にワニの代わりに収まっているカエルが居るにもかかわらず、最後までワニの仲間達には全然馴染んでない。あうんの呼吸や慣れ親しんだノリには達していない。これも妙にリアルで。

2021-07-14 22:58:57
銅折葉 @domioriha

これもすべてひっくるめて、ワニは死んでしまいもうどうやっても戻ってこないが、そんなことには関係なく残された者たちの人生は続いていくし、続いていかなければならないのだということ思い知らされる部分で。 まさにこの物語がワニの「100日間生きた」ことをを示してるんですよ。

2021-07-14 23:01:01
銅折葉 @domioriha

100日後の死へのカウントダウンではなく、彼が「100日間生きた」ことを示すストーリーとして、物語の構造はすごくよくできていた。 これに関してはタイトル変更は間違いなく成功していると思います。

2021-07-14 23:02:37
銅折葉 @domioriha

ワニの死が具体的にどんなものであったか、彼の死に直面したであろう仲間達が何を思ったのか、それはまったく劇中では語られません。仲間達の回想としてすら拒否し、一切ワニは姿を現しません。 ただ、100日後パートのカエルの登場のみをもってその死と悲しみをくっきりと表現する。そこがすごい。

2021-07-14 23:04:57
銅折葉 @domioriha

ついでに言うと、原作には全くなかったカエル登場後のほうがストーリーとしての場面の連続性、先がどうなるか気になる引き込み方、キャラクター同士の会話などはスムーズに進んでいたので、原作漫画をそのまま台詞に落とし込むことで割と不自然なシーンが連発したのだなというのも思い知らされます。

2021-07-14 23:07:09
銅折葉 @domioriha

ネズミとワニが長年の親友過ぎてわざわざ説明をせずともお互い通じ合っているので、身内ノリの会話をそのまま見せられてて、二人の会話の意図が視聴者まで伝わりにくかったんだなというのを、部外者のカエル登場によって理解できるんですね。

2021-07-14 23:09:11
銅折葉 @domioriha

原作漫画には100日を埋めるため、展開を引っ張り興味を持たせるためにけっこう余計な要素や意味深な要素などが多く含まれ、ある意味でワニの死を悲しむことを目的にするなら雑味が多くなってしまっているんですが。

2021-07-14 23:12:55
銅折葉 @domioriha

原作の終盤に至る流れで、読者の興味はワニの死そのものに集約されていくため、ワニは気の良い好青年、ネズミは良き友人ってイメージにまとまっていた面が強かった気がします。 そこをシンプルに取り出してワニとの別れ、悲しみに焦点を当てた意味でも、映画の脚本は良くできていたと思います。

2021-07-14 23:14:15
銅折葉 @domioriha

そのあたりを含めて、原作漫画完結後すぐに、せいぜい1ヶ月くらいでこの映画をテレビかwebアニメなどとして放送できていれば(60分映画としてもかなり間延びして、作画もえらく手抜きなので、正味40分くらいにはできたと思います)、もろもろの商品プロモーションをそのあとに展開できていれば。

2021-07-14 23:16:24
銅折葉 @domioriha

全部仮定の話でしかないんですが、そうなっていれば作品全体もかなり評価は変わっていたんじゃないかと思うんですね。 そうした意味で、プロモーションと作品展開の順番にものすごく疑問があります。どうしてこの順番で良いと思ったのか……。

2021-07-14 23:18:11
銅折葉 @domioriha

しかし100日間生きたワニのゲーム大会におけるゲーム部分の描写、原作にはまったく登場しないところを足したシーンなのに、本当に20年くらい前のアニメに出がちな「テレビゲームなんてこんなもんっしょwww」みたいなノリで描かれてるのあれも狙ってやってんのかな……。

2021-07-14 23:24:18
銅折葉 @domioriha

2人VS2人のタッグバトル格闘ゲームっぽい展開なのに対戦相手が「おーっとここで青チームのキャラクターが突然アップグレードだ!」はホントどんなリサーチしたらあんなゲームになるんだ……しかも劇中描写を見る限り、普段ワニとネズミが遊んでるゲームにも見えない。なんなのあれは。

2021-07-14 23:27:30
銅折葉 @domioriha

分かりやすさ優先だとしても、ゲーム内のキャラがそのまんまワニとネズミなのも、なにか演出に使うのかなとか思ってたのに(一人プレイのCOM戦で対戦相手にワニのキャラだけ出てこないとか、ワニのキャラだけ選べないとか)そのまま放置だったしな……。

2021-07-14 23:29:02
銅折葉 @domioriha

オタクがハマってるよくわからないくだらないゲーム、という温度での描写に近いんだけど、その割にはワニにとってもネズミにとっても、それ以外の仲間達にとってもワイワイ遊ぶ楽しい日常の象徴であったわけだし、あんなにディティールを雑に描いちゃダメだと思うんだよな。

2021-07-14 23:31:22