怪しいショートショート

すぐ読めるショートショート。怖いような馬鹿らしいような話です。
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つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「総理。我が日本には最終手段があります。地球外生物への有効性は不明ですが」 調べている時間はない。総理は出撃を命じた。 それから半時間後。円盤に向かう自衛隊のヘリコプターがあった。その側面に大型のモニター画面が取り付けられている。  当然、侵略者から警告のメッセージが流れた。

2021-07-13 21:49:41
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「それ以上近づくと」 間髪を置かず、隊員が応答した。 「我々は使者である。今からモニター画面に、我が国からのメッセージを流す。全員で見て欲しい」 「良かろう。我らの星にも送り、お前らの敗北宣言を共有する」 「ありがたい。では行くぞ。最後まで見てくれ」

2021-07-13 21:49:42
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

モニター画面に、丸い穴から見える人影が写る。続いて、鏡の前で髪をとかす女。次は三原山の噴火についての新聞記事。画面は次々に奇妙な映像を映し出してく。最後に映し出されたものは、井戸から這い出てこようとする女だった。 「何だこれは」 侵略者の怒声が響く。隊員は落ち着いた声で返した。

2021-07-13 21:49:42
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「これは呪いのビデオである。これを見た者は、七日目に死ぬ。信じるも信じないも自由だ。では失礼する」 ヘリコプターはその場を離脱し、全速力で逃げ出した。侵略者が小型円盤でその後を追う。 ヘリコプターは都内某所に着陸し、中にいた隊員達は侵略者を引きつけながら目的地を目指した。

2021-07-13 21:49:43
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

目的地は、とある二階建ての家。ここにもう一つ、最強の兵器がある、いや、いる。自衛隊員は恐怖に青ざめた顔で扉を開け、中に入った。もとより、死は覚悟の上だ。追いついた侵略者も後に続いた。 「これでお前たち侵略者は確実に終わる」 「はぁ? この家のどこにそんな武器があるというのだ」

2021-07-13 21:49:43
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

ミシッと家鳴りがした。隊員は引きつった笑顔で階段を見上げた。 そこには、四つん這いで降りてくる女がいた。 全身が血塗れである。 「……あれは何だ。あれもお前らと同じ人類か」 「今に分かるよ。嫌というほどな」  こうして、日本が持つ最強かつ最凶の呪いと侵略者との戦いが始まった。

2021-07-13 21:49:44
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

怪短話・ポルターガイスト(注・ちょっと怖いよ) 二人の男がモニター画面に見入っている。映し出されているのは、どこかの部屋だ。  テーブルと椅子が四脚、壁掛けテレビ、花や人形で飾られた木製のラック。  これといって特徴のない内装だ。 「あ。始まりますよ。ほら、ここ」

2021-07-15 19:03:42
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

言い終わると同時に、ラックの写真立てが飛んだ。落ちたのではない。一旦、空中に浮いたのである。  それが合図とでもいうように、次々に物が動き始めた。花や人形などの軽い物はもちろん、テーブルや椅子も移動する。  壁に固定してあるはずのテレビまで外れた。現象は唐突に終わった。

2021-07-15 19:03:42
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「退治できますかね」訊ねたのは不動産屋だ。「もちろん」答えたのは除霊師。自信たっぷりだが、何の力もない。あるのは、大袈裟な仕草と妙に説得力のある喋り方だけだ。除霊師は早速、部屋に向かった。何故か引っ越し屋を同行している。二時間かけて、引っ越し屋は家の物を全て運び出した。

2021-07-15 19:03:43
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

夜が更け、現象が起きる時間が近づいてきた。 「ふっふっふ。さぁどうする、ポルターちゃん。動かせる物はない。扉も全て外した。いわば、この家はただの箱だ」  彼は忘れていた。動かせるものが一つだけある。  次の瞬間、除霊師の体がふわりと宙に浮かび、激しい勢いで壁に向かった。

2021-07-15 19:03:43
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

怪短話・呪いのボードゲーム とある大学の一室で、四人の学生がテーブルを囲んでいた。 テーブルには古ぼけた木箱が一つ。海賊の宝箱のような外見だ。 「この中に入ってるのか」 「間違いない。文献に出ていた通りだ」 「ねぇ、やっぱり止めよ!あたし怖い。呪いのボードゲームなんでしょ?」

2021-07-16 14:47:03
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「大丈夫だって。何が起ころうと、最後にはハッピーエンドさ」 根拠のない自信は絶望に欠かせない材料である。彼らは絶望の蓋を開けた。 その① 「あった。二つ折りになってる」 「広げてみろ」 「よし・・・・・・うっ!こ、これは!」 「どうしたの?」

2021-07-16 14:47:03
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「バックギャモン・・・・・・だっけか?おまえ、遊び方知ってる?」 「いや、触ったこともない」 「僕も知らない」 「あたしも」 呪いのボードゲームは、そっと木箱に戻された。

2021-07-16 14:47:04
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

その② 「あった。これ、オセロだよな?」 「だな。これでどうやったら呪われるのさ」 「とりあえずやってみよう。俺が白、お前は黒な」 ゲーム開始。 「よし、ここに白!お前のこの列、全て白にしてやる」 駒をひっくり返した途端、その場にいた全員の表と裏がひっくり返った。

2021-07-16 14:47:04
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

その③ 「あった。これ、福笑いだよな」 「懐かしいな。ちょっとやってみるわ」 目隠しした男に顔のパーツが渡されていく。 「ほい。これは口。次は右目」 「ちょっと待って。お前の顔、変じゃない?」 「そういうお前も何だその右目は」 「呪われた福笑いのせいか!早くまともな顔にしろ」

2021-07-16 14:47:05
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「待って急かさないで」 焦るとろくな事はない。せっかく綺麗に置けたのだが、箱に戻す時にバラまいてしまった。 そしてここで――時間切れ。

2021-07-16 14:47:05
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

怪短話・生きている人形 女が二人、人形を見つめている。幼女形の西洋人形、いわゆるフランス人形と呼ばれるものだ。 「これがそう?生きてるってやつ?」 「まばたきするわ、笑うわ、動くわ、まぁ凄いものよ。珍しい型だったから競り落としたんだけど、失敗したわ。どう?何が憑いてるか分かる?」

2021-07-18 01:22:15
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「ちょっと待ってね。見てみる」 片方の女が人形を凝視し始めた。どうやら、そういった能力があるらしい。 しばらくして女は、小さく溜息をついた。 「分かった。小さな女の子が憑いてるわね」 ああやはり。もう一方の女は盛大な溜息をついた。 「どうにかできる?」

2021-07-18 01:22:16
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「そうねぇ……この子、行きたい場所があるみたい。そこに連れていったら何とかなるかも」 「どこ?遊園地とか動物園とか」 「山野第二児童公園」 「へ?」 「だから、山野第二児童公園」 「いや、どこよ。ってか何があるのよ、その公園」

2021-07-18 01:22:16
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「この子、早くに両親と死に別れて、おばあちゃんに育てられたのよ。貧しかったから、おにぎり持って、公園に行くのが何よりの楽しみだったの。おばあちゃんが亡くなって、この子は施設に引き取られた。そこでこの子も亡くなったんだけど、もう一度行きたいんだろうね、公園に。って号泣してるじゃん」

2021-07-18 01:22:16
つくね乱蔵・厭系実話怪談作家 @t_ranzo

「だって可哀想じゃない!いいわ、連れていってあげる。場所教えて」 「無理。この子自身が公園の住所とか分からないし」 考えた末に、女は事情をTwitterに書き込んだ。たちまちバズり、その日のうちに場所が判明した。 今朝、二人の女は慣れない手つきでおにぎりを作っている。中身はおかかと鮭だ。

2021-07-18 01:22:17