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8月28日開幕!東京二期会オペラ劇場公演A.ベルク『ルル』 テノール高田正人による解説~私観『ルル』について

東京二期会が上演を予定しているアルバン・ベルクのオペラ『ルル』はまもなく8月28日(土)に開幕を迎えます! この公演にキャストでも出演するテノール高田正人氏は、東京二期会主催のレクチャーコンサートや、NHKラジオ深夜便「ミッドナイトオペラ」でも自らの感性と解釈によりオペラ初心者にもわかりやすい解説が好評を得ています。 まもなくの開幕に向け『ルル』の予習用に私観をツイートしていますので、まとめてみました。 なお、全48ツイートのうち、39番以降はネタバレも含みますので鑑賞を予定されている方はご注意ください。
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高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル1】初の試み。今日から私観『ルル』について、少しずつツイートしていきます。このオペラは予習が必要だと思うので。 まず最初に、ルルは『ストックホルム症候群』だと思います。 誘拐事件などの被害者が犯人と長い時間を過ごすうちに、依存し恋愛感情まで持ってしまうというものです #ルル私観

2021-08-20 23:22:13
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル2】少女ルルは貧民街で育ち、財布を盗もうとしてシェーン博士に近づき、逆に捕まってしまいます。シェーンは警察に突き出さずに、彼女を引き取り自分好みの女に育てて行くことを選びます。孤児を引き取って育てるのは『道化師』のカニオとネッダの関係にも似ています。 #ルル私観

2021-08-22 02:15:31
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル3】まずシェーン博士は、知り合いの女にルルを預け、教育を受けさせる。この辺はマイフェアレディを思い出させます。そういや少女イライザも花を売っているところをヒギンズ教授に引き取られ教育を受けさせられ、気がつけばヒギンズを好きになってるよなー。あちらは美談だけど、、 #ルル私観

2021-08-22 02:16:01
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル4】そして教育を受けた少女ルルを、シェーンは我が家に迎え入れます。ちなみにシェーンには妻も息子(アルヴァ)もいる。妻は病気で寝たきり。息子とルルは歳が近い! その状況でルルを迎え入れ、そしてある時から性的関係を結ぶわけ。すでにオペラが始まる前からド変態なお話であります #ルル私観

2021-08-22 02:17:51
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル5】こうしてルルはどんどんシェーン色に染められていく。半ば喜んで。ここでルルが「誰かが求める自分を演じる」という才能に天才的に目覚めていく。だからルルに出会う人はみんなこう思う。「この人こそ自分が求めていた人だ!この人と繋がりたい!」と。しかもそれは「性的に」! #ルル私観

2021-08-22 02:18:20
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル6】シェーンの息子、アルヴァはある日突然、自分の家でルルに出会う。そこから兄弟のように育つが、アルヴァはルルに信仰に近いような神聖さと尊敬を抱く。あるいは母以上のものを。程なく父とルルの関係に気付いても、その感情は変わらず、歪みながらもルルを太陽のように感じ育つ #ルル私観

2021-08-22 02:19:47
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル7】ちなみにアルヴァの職業は原作では台本作家だけどオペラでは作曲家に。ルルの作曲家、アルバン・ベルク自身が投影されていそう。彼も豊かだった家が父の死で傾いたり、17歳の時に女中との間に子供ができたり、その後自殺未遂したり、、と、中々な10代を送っている。 #ルル私観

2021-08-22 02:21:25
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル8】病弱な妻が死に、シェーンは再婚することに。アルヴァはルルとの再婚を勧めます。でもシェーンは新聞社の社長という地位があるので、ルルとは結婚はしない。 ルルと愛人関係を続けつつ、再婚相手には良い家柄の娘を選び婚約するわけ。ここに1つのルルの絶望がある。 #ルル私観

2021-08-22 13:39:22
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル9】きっとアルヴァは父(シェーン)とルルが結婚して母となってくれないと心の均衡が保てなかった。ルルへの異性としての性愛を抑えられなくなると思ってたんじゃないかな。そしてそれは現実となっていく訳ですが。 #ルル私観

2021-08-22 13:40:33
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル10】シェーンは自分が結婚しない代わりにルルを医事顧問のゴル博士(高齢です)を当てがい結婚させる。ひどい話だ。でもルルは従う。この辺ルルはどう思ってるんだろ、っていうのは言葉では描かれていない。だから今回は蓉さん演じるルルのSeele(魂)がそれを舞台上で表現するのでしょう #ルル私観

2021-08-22 14:39:53
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル11】さて、ルルと結婚した医事顧問ゴルは、画家にルルの肖像画を描かせます。この場面からオペラがスタートします!え、まだ始まってなかったんかーいw(゜o゜)wという!そう、ここまでの説明はオペラが始まる前に起こった話。ね、予習無しだと分からなそうでしょ?笑 #ルル私観

2021-08-22 14:40:56
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル12】画家はルルと2人きりで絵を描いているとムラムラして来ちゃう。「もっとズボンの裾を上げて、こう」とか言って結局襲っちゃう。ここから先、このオペラ色んな人が出て来ますが、全員、老若男女、ルルの事が好きになります。欲情します。これ覚えとくと良いです笑 #ルル私観

2021-08-22 14:42:02
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル13】2人がイチャついてる現場に入って来たおじいちゃ、、いや夫の医事顧問は「お前たちは犬だー!」とか叫んで憤死しちゃいます。舞台に出てきて3秒で死にます。オペラ史上最速の死。火サスもびっくり。かわいそうに。。ルルと結婚しなければもっと長生きしたろうに。 #ルル私観

2021-08-22 14:46:31
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル14】 その後ルルはシェーンの手引きで画家と結婚する。画家はルルを書いた絵が売れて金持ちになった。そして彼はおそらくルルが初めての女性。「私は一度も愛の経験がない」と言ったルルの言葉を信じ、画家はルルが処女だった(前夫は歳のせいでセックス不能だった)と思い込んでいる。 #ルル私観

2021-08-23 00:35:04
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル15】「私は愛を知らない」というルルのセリフは僕は意味深いと思う。セックスは色んな人と幾度もしていても愛を知らない女性、ルル。そう思うと切ない。彼女は画家に 「私はみんなが私に求める事をしているだけよ」とも言う。 ここにもルルの悲しい本質があると思う。 #ルル私観

2021-08-23 00:39:11
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル16】登場人物たちはルルをそれぞれの好きな名前で呼ぶ。シェーンとアルヴァは「ミニョン」、医事顧問ゴルは「ネリ」、画家は「エヴァ(イヴ)」と。ルルと呼ぶのはシゴルヒ(後述)だけ。ルルという名もまた貧民街時代のもので本名ではない。皆、自分の幻想の姿をルルに着せているのだ。 #ルル私観

2021-08-23 00:46:36
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル17】「じゃあ私は一体誰なのか」とルルは思わなかっただろうか?皆の理想をくるくると演じながら、その魂は泣いていたのではないだろうか? そう思いながら蓉さんを(ルルの魂役)を目で追っているとなんだか泣けてくる。 そんなルルを作ってしまったのはシェーンなのだろう。 #ルル私観

2021-08-23 00:50:26
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル18】シェーンが教育を受けさせた、というのも、自分に都合の良い売春嬢を作ったに過ぎない。今回演出のグルーバーはこのルルを「#Metooオペラ」だと言う。男の究極のセクシャルハラスメントにより人生を損なわれた女性ルル。ファムファタル、悪女、そう呼ばれてきた彼女に、異なる光を当てる

2021-08-23 01:09:52
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル19】画家はある時シェーンから「ルルと自分はずっと前から体の関係がある。知り合ったのは彼女が12歳の時だ」と告げられる。自分と会うまで愛を知らない処女だと思っていたのに、、ルルの汚れた過去を知り錯乱する画家。そして頸動脈を切り自殺してしまう。そりゃ耐えられないだろう… #ルル私観

2021-08-23 02:03:01
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル20】1幕3場。1場からは3年の時間が過ぎている。シェーンは良家のお嬢さんとは婚約のまま未だ結婚していない。当時婚約から3年経って結婚しないなど相当異例だろう。 それは何故か。ルルの存在が心にあるからなのか。 一方でルルは、アルヴァの書くオペラに、踊り子として出演していた #ルル私観

2021-08-23 21:50:08
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル21】少女時代にダンサーとしての素養を得たルル、は今では評判の踊り子となっていた。アルヴァは大して才能のない作曲家だったが、父(シェーン)が自分の新聞に載せる事で公演には客が入っていた。 これもシェーンの策略で、ルルを世の金持ちに紹介して3度目の結婚をさせる為だった。 #ルル私観

2021-08-23 21:52:35
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル22】何でそんなに結婚させたいかって言うと、ルルを良い男と結婚させる事で、自分と結婚したがっているルルの溜飲を下げさせ、自分の新たな結婚生活への憂いを無くした上で、ルルとは愛人関係を続ける為だろう。 ほんとシェーンは控え目に言ってクズである笑 でもこういう人はいるね笑 #ルル私観

2021-08-23 22:37:24
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル23】ちゃんと書いてなかったかもだけど、ルルはシェーンと結婚したいんだよね。愛している、という単純な感情では無いと思うけど。。だからシェーンの婚約相手には凄い嫉妬心を持っている。シェーンもこのまま結婚したら、自分の結婚相手にルルが全てをバラすのではないかと怖がっていると思う。

2021-08-23 22:41:11
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル24】ある日、シェーンは自分の婚約者をルルが出ている舞台に連れてくる。ルルは舞台の上からそれを発見してしまい、我を失い、わざと気絶するフリをする。舞台を台無しにする事でシェーンを困らせようとしたのだ。 まぁでもルルも可哀想。 ちなみに婚約者は箱入り娘で何も知らない。 #ルル私観

2021-08-23 22:47:32
高田正人 Masato Takada @dachon55

【ルル25】シェーンは怒り、楽屋へ。作曲家のアルヴァも楽屋に飛んでくるが、父が婚約者を劇場に連れてきた事に「何故そんな事を!」と怒る。ルルとの結婚に名乗りをあげていた金持ちの公爵もその場にいて、このオペラで最も難解な6重唱へ。その後ルルとシェーンが楽屋に2人で残る。 #ルル私観

2021-08-23 22:53:26