8月28日開幕！東京二期会オペラ劇場公演A.ベルク『ルル』 テノール高田正人による解説～私観『ルル』について

高田正人　Masato Takada @dachon55

【ルル26】そこでルルはシェーンに詰めよる。「私と結婚したがっている公爵は私をアフリカに連れて行くそうよ。本当に私と離れられるの？私無しで生きていけるの？あなたは結局自分が弱すぎて、私から離れられないのよ」シェーンは最初は強がるがどんどん心を裸にされ、混乱し、ルルに跪く。 #ルル私観

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【ルル27】シェーンは泣きながらルルに問う。「私はどうすれば良い？」ルルは答える。「婚約解消の手紙を書きなさい。"私は貴女に相応しくない。私はこの手紙を私を支配する女の隣で書いているのです！どうか私をお忘れ下さい"と！」 そして遂に、ルルとシェーンは結婚するのであーる‼️ #ルル私観

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【ルル28】ここから2幕❗️ルルと結婚したシェーンは少し精神がおかしくなっている。家の中に常に誰かがいて、ルルと情事を楽しんでいるのではないか、という妄想。そしてそれは妄想ではなく事実だった。月に何度か、シェーンが証券取引所に出向く日はルルの家は娼館となっているのだった。

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【ルル29】手引きをするのはシゴルヒという男。ルルの幼少期からの知り合い。貧民街では売春の斡旋などもしているのだろう。唯一ルルをルルと呼ぶ男。ルルの成長を嗅ぎ付けて、1幕でも金の無心に来ていた。シェーンはルルの本当の父親だと思っているが、本人は「あいつに父親なんていないさ」と否定。

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【ルル30】ルルにとっては貧民街での暮らしは嫌な思い出だろうが、このシゴルヒを嫌うわけでもなく、どちらかというと受け入れているように見える。自分のルーツの近くにいるからだろうか。シンパシー？1幕での会話から、おそらくルルは12歳以前から売春をさせられ、このシゴルヒとも体関係がありそう

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【ルル31】シゴルヒに付いて入って来るのが力業師(脳ミソまで筋肉で出来ているタイプ)とギムナジウムの学生(高校生くらいか)。彼らもまたルルとの情事を愉しみにやって来る。シゴルヒが「ここで筆下ろしした奴も多い」というからいろんな若者も来るのだろう。プロローグで言うようにまるで動物園だ！

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【ルル32】しまいには従僕までが「私だって人間です」とルルに接近する。彼らには原作にはロドリゴとかフーゲンベルクとか名前が付いているけど、オペラでは固有名詞が無いのは、「ルルが全ての名もなきものに求められ、踏まれ、通り過ぎられていく」という事を描いているんじゃないかな。その哀しみ。

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【ルル33】彼らは重要でないから名前がないのでは無く、名が無くカテゴリーのレッテルだけがある事が大事なのだ。画家(芸術)、医事顧問(権威・老人)、公爵(金持ち)、従僕(下層)、学生(若さ)、伯爵令嬢(女性・地位)、力業師(力)、あらゆるカテゴリーの者がルルを通って行く。通り過ぎて行く。 #ルル私観

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【ルル34】2幕の最初に重要な人物が登場する。ゲシュビッツ伯爵令嬢。彼女はレズビアンで、男装のルルに焦がれる。この話の中でただ1人ルルの為に自分を犠牲にして愛を尽くす人間だ(後述) 彼女はルルを女流芸術家の舞踏会に誘い、帰るフリをして俗客たちのいる館に潜む。 そこにアルヴァがやってくる。

高田正人　Masato Takada @dachon55

【ルル35】ルルにとってアルヴァは、自分を性欲の対象として見ない唯一の男だった。兄弟のように育った2人。「あなたは私にみじめない思いをさせず守ってくれる、たった1人の男性よ」 そう言うルルに、アルヴァは苦しそうに告白する 「そうする事は簡単ではないよ。もし兄弟のように育たなかったら…

高田正人　Masato Takada @dachon55

【ルル36】「兄弟のように育たなかったら僕だって…あぁ、ミニョン！」 その告白を物陰で聞いていたのはシェーンだった。彼はルルの浮気を疑い、密かに家に戻っていたのだった。「あぁ、、息子までが…そしてあっちにも、ここにも男が…」静かに狂いながら銃を手に姿を現すシェーン。 #ルル私観

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【ルル37】シェーンは部屋にいる者たちを威嚇しながらルルに迫って行く。「お前は私を絞め殺す天使だ。俺かお前か、ケリをつけよう。」シェーンはルルに拳銃を握らせ力付くでルル自身に向けさせる。「自分で自分に引き金を弾け。くたばれ。」 #ルル私観

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【ルル38】 ここまで読んでいただけたなら、十分にこのオペラを楽しんでいただけると思います。 ここから先は最後に向けての最後のネタバレとなりますので、それでも良い方だけお進み下さい。

東京二期会【オペラ】Tokyo Nikikai Opera @nikikai_opera

イチオシに選んでいただきました！ありがとうございます🥰（Web担）#ルル @dachon55 twitter.com/tg_editor/stat…

トゥギャッター編集部 @tg_editor

@nikikai_operaさんのまとめ togetter.com/li/1764396 を本日の編集部イチオシに選ばせていただきました！とてもわかりやすかったです！ 特集ページでも紹介しています。togetter.com/recommend みてね！

2021-08-25 14:51:16

高田正人　Masato Takada @dachon55

【ルル39】 ルルが観念して膝をついた瞬間、「助けて！！」と学生が飛び出てくる。 気を取られて後ろを振り向くシェーン。 その背中に向かって、ルルは5発、引き金を引いたのだった。 「あ、悪魔め…！アルヴァ！水をくれ！」 水を求めるシェーンにシャンパンを渡すルル。「お前は…変わらないな…」

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【ルル40】アルヴァの手の中で息絶えるシェーン。 ルル「私の愛しているたった1人の人を」 そしてアルヴァに「私を警察に突き出さないで！この人が私を撃とうとしたのよ！世界で一番愛していたのに」 その時ベルが鳴る。 アルヴァ「警察だ。」 ドアが開く。(2幕1場終)

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【ルル41】2幕2場 あれから2年が経ち、ルルは殺人の罪で刑務所に入っている。 それを救ったのはゲシュビッツ伯爵令嬢だった。彼女はとても普通では思いつかないような方法で彼女を救出したのだった。 #ルル私観

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【ルル42】当時ドイツではコレラが流行っていた。ゲシュビッツはまず看護師の免許を取り、コレラ患者のいる病院に入り込む。そして、コレラで死んだ患者の下着を盗み身につける。 この時点でゲシュビッツはコレラに感染！ その足で刑務所のルルに面会に行く。 #ルル私観

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【ルル43】そして看守の目を盗んでルルと下着を取り替える。 そうする事でゲシュビッツとルルは同じ日にコレラに感染。ルルは刑務所からコレラ専門の病院に移される。そしてその病室にはゲシュビッツがいる。 コレラが治って退院する時に、ルルとゲシュビッツは服を取り替え、存在を入れ替えたのだ。

高田正人　Masato Takada @dachon55

【ルル44】ゲシュビッツはこの日のために、ルルに外見が似るように準備してきた。そして病み上がりの2人はコレラで痩せこけている。入れ替わりは成功、看守の目を欺き、ゲシュビッツはルルとして刑務所に収容されたのだった。自分の存在をかけてルルを助けたゲシュビッツ…すごすぎる、、 #ルル私観

高田正人　Masato Takada @dachon55

【ルル45】こうして2年ぶりに外の世界に戻ったルルはアルヴァの元へ。 アルヴァ「キスしておくれ」 ルル「私はあなたのお父さんを殺した女よ？」 アルヴァ「でも君への愛は薄れていない」 ルル「一緒に今日国境を越えましょう」 そうして2人はシェーンが息絶えたソファの上で抱き合うのだった(完)

高田正人　Masato Takada @dachon55

【ルル46】2幕版はここで終わります。3幕版はここからの逃避行を描きますが、ルルとアルヴァはここからどんどん落ちぶれていきます。 僕は未来への輝きと倒錯を予感させる2幕版が好きです。 この「ルル」というお話は、この物語をどの視点から観るか、でだいぶ印象が変わると思います。

高田正人　Masato Takada @dachon55

【ルル47】そしてルル役が、ルルの強さを出すか、ルルの弱さを出すか、によっても味わいが変わります。 ルルは悪女なのか、それとも悪女として作られてしまった哀れな少女だったのか。 僕にはよく分かりません。 でも僕はルルという女性を嫌いにはなれません。 #ルル私観

高田正人　Masato Takada @dachon55

【ルル48】 僕は彼女がアルヴァに言った一言が、彼女を描いているような気がします。 「私はたましいのない女よ」 本当にたましいのない女なのか。あなたなりのルルを見つけに、劇場に来ていただけたらと思います。 ここまでの長い長いツィートにお付き合い下さって本当に有難うございました！　了

高田正人　Masato Takada @dachon55

あ、僕はもちろんルルを「たましいのない女」だとは思ってません。カロリーネも思ってないでしょうね。 じゃなかったらSeeleを登場させたりしない。 つまり、「たましいがない女、と言うルルのたましいはずっと泣いていたのだ、ずっと叫んでいたのだ」というのが、今回の演出なのかな、と思っています