【創作】勇者が聖剣を抜く光景を生中継でお送りする魔王軍

ぱすかる🥕 @pascal_syan

「時刻はお昼過ぎ、皆様昼食は済ませたでしょうか？本日のメインイベントが、聖剣のほこら最奥部で行われようとしています。『聖剣を引き抜きし者、勇者となり魔王を打倒せん』という予言があります。そう、今日この時、勇者が誕生するかもしれません…！」

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「実況はわたくし四天王が一人、最弱が担当します。解説は同じく四天王、最強さんでお送りします。最強さん、よろしくお願いします。」 「よろしくお願いします。」 「勇者誕生の瞬間の生中継です。緊張しますね！」 「そうですねえ。しかしまあ、あの若造が勇者になれるかは分かりませんよお」

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「さあ、勇者が現れました！単独ですね。仲間はどうしたのでしょうか？」 「神聖な儀式なので、勇者以外は外で待機しなきゃいけないんです」 「そうなんですね。つまり今襲撃すれば、勇者誕生を阻止できるのではないでしょうか？」 「ほこら自体、聖なる力で保護されてますからねー、難しいですよ」

ぱすかる🥕 @pascal_syan

「勇者、前進します。聖剣が刺さっている塚まで残り５mです。途中で戦闘があったのでしょうか？鎧やマントがボロボロになっています」 「単純にここまでの道のりが壮絶ですからね。」 「我ら魔王軍の襲撃の成果でもあるのでしょうか」 「四天王の二番目さんのとこの部下が犠牲になった結果ですねー。」

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「さあ、命からがらといった様子で、少しずつ、少しずつ、歩みを進めていきます。」 「敵ながら応援したくなりますね」 「さあゴールはあと3m先だ、出血が多い、足跡に血が滲みます。これ、死んでしまうのでは？」 「と、思いますよね？」

ぱすかる🥕 @pascal_syan

「あぁーーっと！！奇跡、奇跡が起きました！塚まであと2.5m地点、勇者の体が光り始めました！」 「聖剣は癒やしの力を持っています。そのオーラに当てられて、勇者の傷が癒えていくんですね」 「ここまでよく頑張りましたと言いたげに、聖剣からの嬉しいサプライズだぁーっ！」

ぱすかる🥕 @pascal_syan

「勇者、どんどん力を取り戻していきます！これは余裕で塚に辿り着ける！余裕の小走り！タッチダウン！聖剣の柄に手をかけましたッ！」 「抜きますねー。」 「抜けるか！？抜けるかぁーっ！？力を込めて、いざ、いざチャレンジです！！！！！！」

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『待てぇい！！！！』 「ああっと！？この声はどこから！？」 『その聖剣、抜いてはならぬ！』 「声の主は一体どこにいるのか！」 「あー、これは、あれですね、四天王の二番目さんですよ」 「そうなんですねえ！」 「会ったことないんですか…？」

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『き、貴様はっ…四天王の二番目！？どうしてこのほこらに入ってこれた！？』 『ククク、我が血の半分は人間のもの……故にほこらにも入れるのよ』 「二番目さんは魔物と人間のハーフだったという、衝撃の真実が明らかになりました！」 「これは最強の私も知らなかったですねー。」

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『まあ、半分は魔物だから、今ものすごい勢いで体が溶けているが……無限の再生能力の前では無意味よ！』 「すごく痛そうですね」 「すごく痛そうです！」 『そこまでして邪魔するか…！何という執念！？』

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『我が命は魔王様に捧げしもの……例え我が身が朽ちようと、必ず勇者を仕留めると誓ったのだ！』 「何という忠誠心でしょうか！溶ける身体と激痛に耐えながら、果敢に立ち向かおうとしています！如何ですか魔王様！？」 「余、ちょっと引いてる」 「これほどやっても1/3も伝わらなーーい！！！！」

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『くっ……だが、もう遅いぞ！』 「そうです、勇者の近くにはもう聖剣が！」 「抜いてしまえば何もかもおしまいです。ここから逆転は無理かなあ…」 『ふんっ！』 「勇者、力を込めて〜ッッ、抜いたかああ！！？？？」

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『あ、あれ？』 「なんということだ！？渾身の力を込めたにも関わらず、聖剣はびくともしなーーいっ！！」 「あれだけ力を入れれば抜けそうなものですがね。……あ！分かりましたよ！」 「最強さん、どういうことか教えていただいても？」

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「聖剣を抜く儀式は、神聖な儀式ですので、勇者以外誰も立ち会ってはいけないという掟があります」 「はい、そうですね。」 「しかし今、二番目さんも現場にいらっしゃいますから、儀式が成立しないんです。」 「抜きたくても抜けない状況ということですね！？こ、これは、絶体絶命か！？」

ぱすかる🥕 @pascal_syan

「しかし、依然として勇者が有利な状況だと思いますよ？」 「確かに、聖剣の癒やしのオーラの範囲内にいますから、負傷してもすぐに回復できます。これは二番目さん、圧倒的不利ですね！」 「ククク……果たしてそうかな？」 「魔王様が不敵に笑まれた！これはぁあーっ！？」

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『暗黒極大魔法……【反転】ッッ！』 「で、出たぁーっ！我ら四天王が、魔王様からひとつずつ祝福として付与された、暗黒極大魔法だーーーッッ！！！！」 「二番目さん、なかなか良い魔法を貰いましたね。いいなあー…」

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『ぐ、ぐぅっ！？き、急に、からだの、ち、ちから、が……っ』 「勇者、膝から崩れ落ちます！癒やしのオーラが暗黒の魔力によって、『呪い』の力に変貌してしまいました！」 「聖剣レベルの聖なる力をも反転してしまうとは、なかなか才能ありますよ〜」

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『ククク……これでもう立ち上がれまい！』 『こ、こんな魔法があるだなんて、く、くそ……』 「形勢逆転っ！二番目さん圧倒的有利！勇者立てません！」 「呪いの力を受けて、二番目さんの溶けていた体も急速に再生していますね」 「これは二番目さんが勝ちましたね！」 「いや……」

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『勇者ぁーーーっ！』 「おや、この声は！？」 『しっ、師匠っ…！？』 『何！？先代勇者……最強さんが殺したはずなのに、なぜ生きている！？』 「勇者の師匠、先代勇者が現れました〜っ！？」 「あーやっぱ生きてましたねー。」 「最強さん！？」

ぱすかる🥕 @pascal_syan

「彼はすごくタフですからね。火山に突っ込んだんですけど、やっぱ生きてたんですかー」 「任務完遂率の高い最強さんでも殺しきれなかった先代勇者が加勢しました！こ、これはっ……勇者いけますか！？」 「見守りましょうかー。」

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『聖剣の儀式は必ず成就させるっ！消えろ、魔の者！』 『ええい、邪魔をするな！死に損ないがーっ！！』 「激しい戦闘が始まりました！両者一歩も譲りません！呪いが満ちる空間だというのに、先代勇者の動きに衰えが全く見えません！」 「火山を耐えるだけありますよ」

ぱすかる🥕 @pascal_syan

『く、くそ、なぜここまで動ける！？まさか……【反転返し】の秘法を習得しているのか！？』 「暗黒極大魔法に対抗するための秘策が、先代勇者にはあるようです！ここは何としても勝って、秘策ごと握りつぶしたいところです！」 「いや秘策もなにも、単純にタフなだけだと思いますよ？」

ぱすかる🥕 @pascal_syan

『うおおおおおおお！』 『かぁーーーーーっっ！』 「両者、一閃……！決着はぁあーっ……………！！ 先代勇者が勝ったぞおおおお！！」 「ほらね。あいつ強いんですよ」 「【反転】の力が解除されていきます、勇者回復しました！」 「あーあーあー…」

ぱすかる🥕 @pascal_syan

『く、くそ、だ、だが……だがっ……ぐわあああ！！！』 「二番目さん、なおも粘りますが、癒やしのオーラを浴びて体が溶けてしまっています！苦悶の表情ですっ！！」 「もう良い、帰還せよ、二番目さん！」 「魔王様、退却命令を発動しました！」

ぱすかる🥕 @pascal_syan

『このままでは終わらんぞ……！ククク…フハハハハハ！！』 「二番目さん、退却！勇者陣営の勝利です！残念な結果に反して、爽やかな笑顔を浮かべていましたが、これは…？」 「何か隠し玉でもあるんでしょうかね。」