稲川淳二の『つぶやき怪談』(2021.08.29)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ところが、あの大きな広い川がですねえ、 何とお湯のように熱かったっていうんですから、すごいですよねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それで戦争が終わってからも当分の間、 死体が上がったそうでしたよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

川っぺりにはですねえ、 「死体の山がまるで材木のように、 たくさん浮かんでいるのを見た。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

苦しそうに、もがいているようなのもあった」 と、うちの親父も言ってましたけどねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その側にあるのが、 浜町の例の、旧明治座ですよ。 あそこでもずいぶん、 亡くなっているんですねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、やっぱり舞台の世界ですからね、 舞台でもって、そういうような演し物があるわけですねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

人が亡くなるとか･･･死んだっていう話が･･･。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると必ず、この、異変が起きたそうですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

その時に、用意もしていなかった墓石が置いてあったり、 出ていない人間がひとり余分に出たというような話は、 聞きましたねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

私もですねえ、あることがあって、 かつての明治座へ、ご挨拶にいきました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ところが、不思議なんですねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

主役級の方々のお部屋のすぐそばには、 たくさん、美術の道具が置いてあるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それも、もう昔に死んだような人の看板ですとか、 絵だとか、旗がね、並べてあるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

大道具ですね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

とてもこれが天下の明治座かと思うような、 その楽屋のそばがですね、 美術のセットが置いてある倉庫と化してましたよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それにダブって有名な男優さん女優さんが、 歩いておりました。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ところが、 ここで有名になった話というのはですね･･･。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

たとえば、 俳優さんが忘れ物をしたりするわけですねえ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうすると、 付き人が取りに行くわけですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

付き人さんは、どんなに遅くとも、 「は〜い」 って言わなきゃいけないわけです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ホテルに泊まってるから、台本とっといで」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「はい」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「今日は忘れもんしちゃった」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「はい。すいません、いってきます」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「ああ、頂き物のアレ、置いてきちゃった、もっといで」