鉄道インフラもなく治安も悪い近代化以前の地域はこういう事になる例

私の調査地は慢性的にモノ不足・人余りですが、一番不足しているのは「自動車の燃料」です。内陸の僻地なので他の地域から運んで来るのが大変で、道路事情も最悪ですからトラックやタンクローリーが簡単に立ち往生します。そんな所で山岳少数民族がやることと言えば当然「ここは通さねえぜヒャッハー」

2021-09-15 16:52:40

ただでさえ燃料の輸送量が少ないのに、ガソリンスタンドのあるような都市圏まで届く前に山の中の未舗装の危ない単車線道路をタンクローリーがノロノロ走行していると簡単にヒャッハーに襲われます。まず運転手は法外な通行料を要求され、拒むとその場で身包み剥がされて谷に投げ捨てられ略奪されます。

2021-09-15 16:57:28

こうしてタンクローリーが運んでくるはずだった燃料は山賊に奪われてヤミ油として少数民族の現金獲得手段に変わります。山の中にガソリンスタンドなんてありませんが何故か山間の少数民族の集落に燃料が備蓄されていて、山の中でガス欠になった車両に高値で油を売ってボロ儲け出来るというわけです。

2021-09-15 17:03:55

私の調査地の山の中には「ペトロール婆さん」(現地語直訳)などと呼ばれている中高年女性がひょっこり道路沿いに座っていることがあって、ガソリンや軽油の入った小さなボトルを売っています。まるでロックマンの補給キャラみたいなタイミングで現れるのですが、そいつは実際には山賊たちのママです。

2021-09-15 17:10:31

このようにタンクローリーがあまりにもよく狙われるので近年は軍事車両の警護を付けるようになったのですが、やはり地の利を知り尽くしている山岳少数民族に見通しの悪い隘路で狙われると車両横腹から丸太アタック一撃で絶壁から突き落とされたりするらしく、またテロ組織「神の軍」も関与しています。

2021-09-15 17:16:01

キリスト教独立国家建設を掲げる「神の軍」はこういった山賊のフランチャイズ化を押し進め、今では実際に車両を襲う前に「これからヒャッハー100人配置して幹線道路を通せんぼするから、封鎖を解除して欲しければ100万ドル払え」などと堂々と現地政府に通達してユスリ・タカリをするようになりました。

2021-09-15 17:22:46

この問題は現地社会では深刻で、通せんぼの結果病院に必要な医療物資が届かなくなり透析患者が死亡するといった事例も起きています。また平均月収が1万円以下なのにガソリン価格が高騰しすぎて日本と同じくらいになっています。もちろん出回っているガソリンも混ぜ物・偽物だらけの地獄です。

2021-09-15 17:33:46

現地の都市部ではまずガソリンスタンドが毎日開いているわけではなくて、給油可能な日の朝に早く行かないとガソリンが手に入らなかったりします。しかも現地車は大抵燃費が酷すぎて山の田舎に着く前にガソリンを使い果たしてしまいます。すると結局山賊が溜め込んだ油を道中で買わなければなりません。

2021-09-15 17:42:37

一応平地部分に空港があるので空輸も出来るのですが、たかが道路3本各数十kmのルートを車両で通らないように避けて空輸でジェット機の往復燃料を消費するなんて馬鹿げた負担になるのでよほどの緊急事態以外は現実的な選択肢ではなく、結局はヒャッハーの襲撃に怯えながら命懸けで運ぶことになります。

2021-09-15 17:50:17

ローリーを普通のトラックか何かに偽装すればいいんじゃないかとも思うかもしれませんが、ローリーや重要な物資を運ぶ車両通行時には各検問所に連絡が行くようになっていて、治安機関の中にテロ組織の内通者がいるので隠してもローリーが来るタイミングが何故か山賊にバレるようになっているんですね。

2021-09-15 18:01:33

これも誰が悪いと言うより、現地社会の腐敗とインフラ整備を怠ったことと低開発地域の放置と民族対立感情などが複合的に重なって生じている現実なのですが、文明を回すための燃料を奪い合って安定供給を潰してみんないつまでも発展出来ないのもある意味近代化への無意識的な抵抗なのかもしれません。完

2021-09-15 18:13:24

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