茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第2598回「本番の前に緊張するのは才能の表れである」

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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート2598回をお届けします。文章は即興で書いています。本日は、感想です。

2021-10-21 07:25:45
茂木健一郎 @kenichiromogi

評論家の小林秀雄の講演は定評があって、講演界における「旧約聖書」のような位置づけかもしれない。その小林秀雄は講演の前にとても緊張するひとで、ただ、本番になるとそれがうそのようにゆったりとリラックスして心の声を出し続けるのである。

2021-10-21 07:26:58
茂木健一郎 @kenichiromogi

緊張をほぐすため、小林秀雄は講演前に日本酒を少し飲む習慣があったという。松岡正剛さんにうかがった話だけれども、ある時、小林秀雄は壇上にあがると、「ちょっと今そこでひっかけてきてしまいましてね」と言ってから話し始めたという。松岡さんが高校生の時だったとおっしゃっていたと思う。

2021-10-21 07:28:16
茂木健一郎 @kenichiromogi

本番前に緊張するのは、一つの才能の表れである。その人が、自分が求められているものの高さを認識していることを示しているからである。緊張しないというのは良いことのようでいて、自分が求められているレベルを低く見積もっているか、そもそも頂点を知らない可能性がある。

2021-10-21 07:29:18
茂木健一郎 @kenichiromogi

パフォーマンスの頂点を知るのは難しい。ぼくは時々学生さんに突然の英語2分スピーチをしていただくけれども、その際、そのスピーチで世界を変える、というような高い要求水準で始める人がいたらその人は才能がある。たどたどしい自己紹介もいいけれども、レベル設定を高くできる人はすごい。

2021-10-21 07:30:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

文章を書くというのも、言葉はいかようにも解釈できるものだから、自分の書いたものに満足してしまう回路はたくさんある。たとえば小説を書くときに、なんとなくこれでいいと思うことはかんたんだけど、「高いレベル」を認知して、設定すること自体がむずかしい。

2021-10-21 07:31:52
茂木健一郎 @kenichiromogi

パフォーマンスの前に緊張する人が、自分が行うべきことをきちんと認識して、そのレベル設定に成功しているならば、才能の必要条件のもっとも重要な点をクリアしている。本番前に緊張するのは才能である。それを乗り越えてゾーンに入ったときに神がかる。緊張すらしないのはレベルを知らないからだ。

2021-10-21 07:33:14
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート2598回「本番の前に緊張するのは才能の表れである」をテーマに6つのツイートをお届けしました。

2021-10-21 07:33:45