【自己満足】20XX年に高山直人がとある週刊誌に載りましたとさ【フィクションネタ】
- naobotaka_magi
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新たなオタクバブルが登場し、ゲームオタクが再活性化。その姿に、往年の高山直人を思い出した私は、彼・高山の現状に興味を持った。 JR電車で都内から約30分。千葉県船橋市、今や川崎や横浜に代わる東京のベッドタウンとなったその都市のICで私は高速道路を降りた。
2021-10-24 02:53:46一般道路を彼の住む家の最寄りのJR駅に向かって車を走らせること20分。彼の家が見えたので近所の月極駐車場に駐車する。彼が住むという外国人向け公団住宅は学生も多数住むお世辞にも高くない物件だった。訪問した私を見て「何の要件で来たの!?」と怒る高山。
2021-10-24 02:13:58しかし取材の用件を伝えて少しばかりの「謝礼」を持参したことを告げると、態度が変わり、部屋に招き入れられる。 事故物件の築30年3LDKの彼の部屋には、ゲームソフトや即席カップ麺などが乱雑に置かれていた。パソコンの置かれている机にはゲーム機が置かれている。
2021-10-24 02:13:58公団の住人で45歳以上なのは彼と70代~90代の韓国人家族の祖父母だけで、他は44歳以下だという。扉を開けたベランダからは住民と思われる子供や若者の声が聞こえる。
2021-10-24 02:13:5910年ぶりに会う高山直人は、口臭が目立つが、意外と血色もよくあまり老けていなかった。若々しい、というより、2010年代で「高山直人」の時間は止まっているのではないか、私はそう感じた。しかし、現在の彼は酒が飲めない健康状態だという。
2021-10-24 02:13:59酒の味を忘れた彼の姿に10年の月日の重さを感じながら、船橋市内の競馬場に向かって車に同乗して向かう。彼の話によると、この競馬場は今日GⅠレースがレースが開催されているそうだ。 私と彼は馬券売り場でとあるレースの馬券を購入した。
2021-10-24 02:14:00ややうつむき加減で話しづらそうにしていた彼だが、競馬場に入るや否や饒舌になる。よほど久しぶりのギャンブルだったのか彼は顔を紅潮させ広場についた頃には興奮気味に過去の武勇伝を語りはじめた。
2021-10-24 02:14:00「わたしはかつてMMOの大物プレーヤーだったんですよ。」「ゲーム配信で1万人集めたことがある。」「ゲーム配信で累計ウン億円稼いだことがある。」「今でもセガは心の中の神様。」彼の饒舌は10分少々続いたが、言えば言うほど現実との乖離が脳裏によぎるのだろう。
2021-10-24 02:14:01私は言った「そろそろ帰りましょうか?」と。彼は黙って頷いた。二人分の当選馬券を精算した。彼は短寿命物の安物のジャンパーに手を突っ込み私鉄電車で帰路に着いた。言いにくいことであるが少々ハゲが気になった。自身の髪のことについてかなり鈍感であろう。
2021-10-24 02:14:01家に着くと間髪入れずに市職員の小池さんが1か月に一度の行動確認に訪れた。「生活の方はどうですか?いい話ありましたか?」 「あまり英語とかにまだ馴染めていなくてねー」2020年代に行われた経済近代化運動の影響で、日本は世界第2位の経済大国に返り咲いている。
2021-10-24 02:53:46日本人の大半の若者は英語が話せないことに悩むことはなくなった。だが、大胆な国家改造のあおりで、英語弱者の環境は30年前より悪くなっている。彼のような高度な英語はできない人々が、高度なそれができる人と共存せざるを得ず、そのしわ寄せを受けている厳しい現状がある。
2021-10-24 02:14:02韓国人と英語力で互角になったほど日本人の多言語話者が進む一方で、中高年世代の語学力改造がほとんど進んでいない。経済力で中国再逆転だ、平成残滓精算だ、令和は明るい時代だのと浮かれていた我々に突きつけられた、社会の暗部だろう。
2021-10-24 02:53:47ふと部屋の本棚に目を移すと古い辞書のような本が飾られていた。奇妙に思った私は彼が外で昼食を食べている隙に本を手に取ったのだが、それは魔法のことについて書かれた本だった。おそらく彼の思想にかかわる本ではないかと思い、彼に尋ねた。
2021-10-24 02:14:03「今は年老いた私の両親が若いころ魔法に目覚めたのでその神を信じています。」小池さんも魔法思想主義者なので気心は知れてるらしい。 「中世の西洋の魔女狩りの惨劇を忘れずに憎きアメリカ共和党を呪術で打倒してやりましょう。」 彼が朗らかな表情で小池さんに話す。
2021-10-24 02:14:04「その調子ですよ、高山さん。でも普段は魔法思想の事は内緒ですよ?無神論者になりすましてくださいね。」 小池さんの表情も明るい。「慣れてますから大丈夫ですよ。生まれてこの方魔法はこそこそと使ってますから、はははは。」彼と小池さんは笑った。
2021-10-24 02:14:04彼が本に本棚を戻した後にそこに目を向けると科学書と科学雑誌が魔法の本を挟んでいる。 「ははははは」 高山の自信に満ちた高笑いは見せ掛けだけではなかった。自営の古書店をやってる近所の中国人共産党員と懇意になり「科学書」や「科学雑誌」や「植物図鑑」などを分けて貰い、
2021-10-24 02:53:47魔法主義者を隠蔽することに余念はなかった。
彼のこういった精神性は彼の大学生時代から始まっていたことは私はすでに知っていたので今更驚くに値しないが。市役所職員の小池さんは帰って行った。
2021-10-24 02:53:47「けっ、高校生のころ妹と一緒に箒に乗って空飛ばされたことにいい思い出なんてあるか。」彼は一転して悪口を言い始めた。「魔法主義というのはもちろん建前です。」 私は彼に尋ねた。なぜ嘘をよくつくのかと。「魔法主義を利用しているんです。それだと役所の審査が甘くなる。フリーパスになる。」
2021-10-24 02:14:06彼は名刺を数枚見せてくれた。私は唖然とした。県議、市議、国会議員、有名企業、そして密かに魔法思想や宗教と 通じている大学教授や、私も知っている左翼の構成員まで含まれていた。 そんな時、彼が今時めったに見かけない家庭用ゲーム機のゲームでネトゲをしながらスマホでテレビ電話をし始めた。
2021-10-24 02:14:06相手は彼の弟子の瀬名だった。二人はかつて一旦袂を別れたのだが、その後も同じオタク趣味のよしみでつながっていた。彼と瀬名の出会いもネトゲであった。ネトゲの出会いから本格的に知り合うようになり、一時には文芸活動で共闘したこともあったのだ。
2021-10-24 02:14:07文芸活動はコロナ大恐慌で引退したものの、ネトゲなどを通じて交流活動はその後も継続し、今でもネトゲでディスコードアプリを通じてゲームをしつつ会話をすることが彼のルーティンとなっている。 彼のかつての盟友の話も聞きたいと考えた私は、後日韓国を訪問した。
2021-10-24 02:14:07羽田から仁川まで2時間20分、夜間の便に乗り込んだということもあり、旅情を感じる暇もあまりなかった。仁川空港でソウル方面行の深夜リムジンバスに乗車してソウル市街地に足を急ぐ。 早朝に彼の親戚の住所を訪ねたのだが、親戚はそこにはいなかった。
2021-10-24 02:14:08住人の話によると親戚は朝鮮戦争の空爆で被災し、南北統一後の永世中立国化後は、全員でソウル市の公団住宅に移り住み、その後一家全員でアメリカへ転居して帰化するまでは足どりをたどる事が出来たが、その後は音信不通となっている。
2021-10-24 02:14:08後日飛行機とバスで台北へ向かい、彼の弟子の瀬名の親戚が経営していた店のある学生街に行ったのだが、外装も店名も変わっていた。「会員制」のプレートがかかっていたが店内に入ると、店主が知っていることを話してくれた。
2021-10-24 02:14:09