【リンダの反応】福間健二 #k2fact311

10月31日から11月9日まで。古本の洋書祭りというのに行ったが、あまり収穫はなく、せっかく来たのだから、と買った三冊。そのひとつは、一時期熱中してほとんど全部を読んだハードボイル土小説の作家ロス・マクドナルドの評伝(Tom Nolan という人のRoss Macdonald: A Biography, 1999)。たまたま開いて読んだところに、マクドナルドもその妻も作家(マーガレット・ミラー)という夫婦の娘が不安定に育ったことが、書かれていた。その娘の名がリンダ。タイトルに困った末に、「リンダの反応」としたのはそこから。こじつけめくけど、そしてこのツイート詩ともあまり関係ないけど、文学が、(作家夫婦の)書く生活が、何を犠牲にするのか、それが見えてくる気がした。 続きを読む
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福間健二 @acasaazul

雨。まさか踊るためじゃないとして、愛しい存在を抱いて墜落しながら消しわすれた色をそのままにしただけ。死があるということ。死ねるということ。感謝すべきだ。木と石と見たことのない動物。あと三分。新しい問題をひきおこさないように。撫でる手を濡らさないように。(リンダの反応1)#k2fact311

2021-10-31 18:27:55
福間健二 @acasaazul

おこるべきことがおこらない。気がつくと順番が入れかわっている。この世はたいていそうで、テーブルを拭いて待っていると楽しみのかわりに問題の入った壜がおかれる。早く出してくれ。出しても解決ではない。触発する指を使っても、断片がさらに小さな断片になるだけだ。(リンダの反応2)#k2fact311

2021-11-01 11:58:44
福間健二 @acasaazul

届いているはずの手紙が届いていない。知らせの内容はちがうルートでわかる。議論は終わった。でも、受けとるべきものは別にあるのだ。闇の中で眠る事実の足がなにか蹴っている。こむらがえり、承山を押すのか。情報を黙らせたい壜に襲われた人がもっと大きな壜を襲う。(リンダの反応3)#k2fact311

2021-11-02 17:07:54
福間健二 @acasaazul

手で書かれたもの、それを見て感じる者がまだ階段をのぼりきっていないとき。チャンス、潤いと彩りが夜をやさしくする。どういう歴史の断片なのか。どこに通じるのかわからないドアの前に立つ。二人で迷子になりました。リンダの両親。二人とも作家だが、手では書かない。(リンダの反応4)#k2fact311

2021-11-03 17:47:48
福間健二 @acasaazul

あてどない。いたるところで。生きものにさわる手が自信をなくしている。ピンチ、行こうとする方向にテレビの黒い海からの無数の指。痛いのはどっちなのか。鍵と鍵穴。できないと思った操作だけができている。黙って、リンダの両親。二人とも頭はいいが、容量が足りない。(リンダの反応5)#k2fact311

2021-11-04 18:37:21
福間健二 @acasaazul

泣きたい気持ちなのか、冷静に批評したいのか。太陽がのぼるまでに決められなかった。散歩して、コーヒーをいれて、いくつもの国の、さまざまの被害のニュース。図々しいのはおたがいさま。人類と自分。世界とこの無力。おはようと言ってしまった。すれちがった死に。(リンダの反応6)#k2fact311

2021-11-05 11:57:00
福間健二 @acasaazul

何十メートルか先で破綻する理由。でも、ある人たちはそのために体を硬くして、やりたくないことをやり、人類と自分を追いつめ、発情するハクビシンが目の前を横切る。ネコやアライグマじゃなかった。心を病んでない人はいないってこと。病気は治すものじゃないってこと。(リンダの反応7)#k2fact311

2021-11-06 11:35:53
福間健二 @acasaazul

遠まわりする。だれかより先に着いたらわるいから。退院の日、成長しすぎたのかもしれない手足がリンダに言った。指がまだ青白いけれど、病気は治せばいいんじゃない。通過するのだ。整うものを少しずつ整えて。自分のなかの人類にしたがって。要求しないだれかを思って。(リンダの反応8)#k2fact311

2021-11-07 11:26:03
福間健二 @acasaazul

聞こえない叫び声の背景だけが入れかわって、きのうと同じ役。心配かけてごめんなさいと言わされる。降りろ、そんな役は。声がして、それに反応して、ループを回避して、着飾らない娘がうなずいた。ボレロを踊る動物のあとを追わない。静かな家に戻る。二人は書いていた。(リンダの反応9)#k2fact311

2021-11-08 11:44:10
福間健二 @acasaazul

もらっていい消しゴムとか。自分をできるだけ透明にして人を訪ねる探偵を見ている黒い鳥がぼく。だとしたら、ぼくの声を聞きながら長い夜がすぎるのを待つすべてのリンダを思う。話すのに時間がかかる人には慣れている。破滅に向かう世界への数学的な興味はなくなった。(リンダの反応10)#k2fact311

2021-11-09 14:33:24