「鶴問題」(文化的背景)と「井の中の蛙」「掃き溜めに鶴」について。あと男性名詞・女性名詞

ちょっと長くなってしまいました…。
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砂手紙 @sandletter1

言語の文化的背景というのはむずかしい問題です。なにしろ、違う言語を持つものは違う言語が持つ独特の感情(理解では不十分な解釈しかできないあれこれ)を完全には把握しきれません。

2021-12-13 17:02:38
砂手紙 @sandletter1

さて、日本人のある人が「夕鶴」という日本の劇(オリジナルはみんなも知ってる「鶴の恩返し」という童話)をチェコ語、だったかな、とにかく東欧のある言語に翻訳しようとして困ってしまいました。

2021-12-13 17:03:31
砂手紙 @sandletter1

その語は男性名詞・女性名詞のある語で、「鶴」は男性名詞だったんで、恩返しをする鶴のイメージがどうしても女性にはならない。そこでどうしたかというと、 …… …… …… 「鶴」を「鷺」に変えました。そんなことしていいのかって。多分いいんでしょうね。なお「鶴」が女性名詞の言語もあります。

2021-12-13 17:04:25
砂手紙 @sandletter1

英語の場合は名詞に性別なんか基本的にはつけません。今、名前が思い出せないとある英米ミステリーのシリーズで、大学教授が主人公なんですけど、何冊か主人公を「男性」のつもりで日本人翻訳者が訳してたところを、途中で「女性」だ、ってことを作者が示して、あわてた、なんて話が昔ありました。

2021-12-13 17:04:40
砂手紙 @sandletter1

ところで、昔のベストセラー『ゲーデル、エッシャー、バッハ』(メタフィクションを書こうと思ってる人には必読書)では、登場人物というか登場動物のひとり、じゃないな、一体? に、アキレスと競争して有名になったカメが出てきます。

2021-12-13 17:05:11
砂手紙 @sandletter1

カメというのはフランス語では女性名詞なんで、どうにも翻訳に困ったフランス語の訳者が著者に相談したところ「男性でも女性でもどっちでもいいように書いてあります」という回答なのにびっくり。日本人もびっくりです。だってあのカメ、男性(というか、オス)じゃなかったの?

2021-12-13 17:05:26
砂手紙 @sandletter1

で、翻訳をよく読むとたしかに、オスでもメスでも、どちらでも取れるような話しかたなんですよね。年齢・性別をうまいことごまかして叙述トリックにするというのは、日本人作家なら割と普通だろ、とか思うんですね。

2021-12-13 17:06:03
砂手紙 @sandletter1

で、ここまでは長い余談で、本題は「a big frog in a small pond」という言い回し。これって「井の中の蛙」という意味じゃなくて「掃き溜めに鶴」なんですね。直訳すると「小さい池の中の大きなカエル」。こんな小さなところにいるべきではない大きな存在、という意味かな。

2021-12-13 17:06:35
砂手紙 @sandletter1

そこで疑問なのは、蛙と池が出てくるので有名な芭蕉の句、「古池や蛙飛び込む水の音」で、ラフカディオ・ハーンはこれを「Old pond - frogs jumped in - sound of water」と英訳しています。蛙って複数だったんかい。

2021-12-13 17:07:19
砂手紙 @sandletter1

それはともかく、日本語のこの句で感じる(多分)侘び寂びとは、ひょっとしたら違うものを英語の人は感じてるかも、とか思うのです。日本人が「古い掃き溜めに鶴がいる(掃き溜めに鶴降りきたる日暮れどき、みたいな)」で感じるようなものを。

2021-12-13 17:08:00