アマヤドリ 20周年記念公演 第2弾『水』/『青いポスト』を終えて

千穐楽から一夜明け、広田さんが怒涛のツイートしてたので、まとめてみました。 私も広田さんとの出会いはTwitterでした。 http://amayadori.co.jp/archives/12150 春先にはWSもやるかな?と思います故、ご興味あればゼヒ。
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広田淳一 @binirock

お陰様で無事、終えることができました。皆々様、ありがとうございました…。あ、配信はまだやっております! twitter.com/amayadorix/sta…

2021-12-27 05:41:45
アマヤドリ @amayadorix

【12月公演*終演のご挨拶】 アマヤドリ 20周年記念公演 第2弾 『水』/『青いポスト』 @新宿シアタートップス お陰様で無事千穐楽を迎えました! ご来場くださった皆様、 応援してくださった皆様、 誠にありがとうございました! 配信アーカイブ好評発売中! amayadori-web-store.stores.jp pic.twitter.com/fcliUsSeU0

2021-12-26 20:52:31
広田淳一 @binirock

公演期間中もアマヤドリではどんどこLINEでノート? ダメ出し? が飛ぶので千穐楽までちょっとづつ台詞、演技、衣装、音響、照明、変わっていきます。最初は文字だけで伝えると誤解が生じるのでは? という懸念もあったけど近年はLINEで送るスタイル。得られるものの方が大きい。誤解は生じるけど。

2021-12-27 05:51:57
広田淳一 @binirock

演劇は常に変わっていくものだからゴールとか到達点を見つられたと感じた瞬間から何かが腐り始めている。変わり続けるしか純度を保つ方法が無いと感じている。生き物ならば、動的平衡っちゅうのを目指すしか活動を維持する方法がないんじゃないかと。サグラダ・ファミリア的な公開スタイルであります。

2021-12-27 05:55:58
広田淳一 @binirock

公演中に考えたことをいくつか。まず、俳優さんたちは本番に向けて伸びていくことが沢山あると思うし、若くて、経験の浅い俳優さんほど飛躍の程度も大きいと思う。伸びる時期、成長する時期にちゃんと間を空けずに良い現場を重ねて欲しい。

2021-12-27 05:57:57
広田淳一 @binirock

どんなスポーツも最初の数年が飛躍するじゃない? 逆に言えば、最初の数年で間違えたクセだったり、不自然なフォームを身に付けてしまうと、それを抜くのに多くの時間がかかったりするもの。飛躍できる時期はいつまでも続くわけじゃない。感覚を掴んだら、身につくまで繰り返せる環境に身を置くこと。

2021-12-27 05:59:55
広田淳一 @binirock

本番を重ねていく際に困難なのは、演じる、という非常に複雑な行為の情報の豊かさをいかに保ち続けるか、ということ。繰り返していけば半ば自動的に、人は思考の道筋にも轍(ワダチ)を作っていくので、演技の複雑性が記号に回収されていくことにあらがって欲しい。

2021-12-27 06:08:52
広田淳一 @binirock

たとえばあるシーンに非常に複雑な葛藤を抱えるシーンがあったとして、どうにもできない感覚で身もだえする、妙な形でためらいが手の動きに出る、なんていう複雑な芝居があったとして、それがどんなに良かったとしても、繰り返していくと手の動き、その型を俳優はなぞっていってしまう。

2021-12-27 06:11:03
広田淳一 @binirock

単になぞるだけではなく、三回、五回となぞっていけば、いつしかそれは「そこしか通ることのできない道」になって俳優の自由を奪い始める。段々と動きは「洗練」され、簡略化され、ニュアンスは記号に回収されていく。まずは、それに気づくこと。自分が自分の縮小再生産を行う危険に気づくこと。

2021-12-27 06:13:48
広田淳一 @binirock

言い換えれば「飽きる」力を失わぬこと。キマジメに演技しちゃダメだというのは、マジメにやってると「飽きる」感覚が麻痺しちゃうから。自分が飽きてることは大抵、人が見てもつまんない。歌だってそうでしょ? 上手な人が上手に歌えば感動するわけじゃない。下手でも楽しんでるやつの歌はおもろい。

2021-12-27 06:19:22
広田淳一 @binirock

もちろんマジメに取組まないと何事もうまくはいかないけどさ。でも、正しくマジメである、ってことはマジメそうな顔してるってことじゃない。ちゃんと面白い芝居をやれるように、そこへ向かって作戦練ってるってことじゃない? 「死守せよ、そして軽やかに手放せ」ってピーターも言ってるしね。

2021-12-27 06:22:58
広田淳一 @binirock

あとはちゃんと意識して「捨てる」こと。この演技プラン、何回かうまくいったけど、なぞり出しちゃったな、つまんなくなってきたな、記号化してるだけだな、と感じたら、「いったんこれは捨てよう」と決断する勇気を持つこと。それは怠惰じゃない。「負け」じゃない。ちゃんと、飽きること。大切よね。

2021-12-27 06:25:42
広田淳一 @binirock

さて、本題。「ワンスペース問題」について。これは完全に僕の造語なんで、なんだそれ? だと思うのでそこから説明します。多くの俳優に対して僕はよく「相手をちゃんと見て! 聞いて! 受けて!」てなことを言うんだけど、そうすると「まっすぐに相手を見つめ続ける」現象が起きる。正面を向いて。

2021-12-27 06:30:51
広田淳一 @binirock

会話のシーン中などに相手役に対してずっと真正面を向いていると当然、相手と自分との間のひとつの空間(ワンスペース)でずっと演技が続くことになる。これは多くの俳優で起きる現象なんだけど、日常生活ってそんなに人を真正面から見つめないよね? つまり、それってリアルじゃなくない? て話。

2021-12-27 06:32:36
広田淳一 @binirock

これがいわゆる「ワンスペース問題」と稽古場で名付けた現象。確かにこの状態は相手をちゃんと見ているし、少なくとも多くの注意を払っているので一概に否定できない。だから、この状態から脱することは結構難しい。でもなあ、リアルじゃないんだよなあ、というのが悩み。

2021-12-27 06:36:15
広田淳一 @binirock

この状態に陥るのにはいくつかの複合的な原因がある。もちろん人に依るんだけど、根本的には「相手を見なきゃ、聞かなきゃ」つまり「受けなきゃ」の強い意識が、リアリティを越えて相手への全集中を生む(あれ、急に鬼滅)。次に、人によってはビビり、人間への恐れがワンスペース問題を発生させる。

2021-12-27 06:39:56
広田淳一 @binirock

どういうことか。実は「まっ正面を向く」って、言葉としては勇ましい印象だけど結構、位置関係的には守備的なんだよね。剣道とか柔道とか、格闘技って正面を向くでしょう? なぜか。正面が、一番隙が無いからよ。よく強キャラは敵に対して横とか後ろを向いて「いつでもいいぜ?」なんてやるでしょ。

2021-12-27 06:42:22
広田淳一 @binirock

あれは自分の力量に圧倒的な自信がある強キャラが「隙を見せる」ことであえて不利な状況、危険な状況に身を晒して、それでも勝つって強いよね? を示す演出なわけです。つまり、正面を向いて構える、は危険度が低い、守備的な位置関係、ということ。打ち解けていない初めてのデートみたいな位置。

2021-12-27 06:45:30
広田淳一 @binirock

対人関係的に恐れが先に立つ俳優さんは、たとえ横並びに座らせてもなんとか正面に向き直って守備的な位置、臨戦態勢、危険が少ない姿勢、を、取ろうとする。だって「いつでもいいぜ?」状態は危険だもん。怖いもん。というわけ。対人へのビビりが「正面」を選択させる。

2021-12-27 06:47:15
広田淳一 @binirock

ビビりの解消法は沢山方法があるんよね。脱線するけどちょっと書いておく。まず、大切なのは「ビビっている自分」を否定しないこと。だって本当に怖いんだもん。他人に対して何も感じない。ゴミ箱が隣にあるのと人間が隣にいる区別がつかない、なんて状態より、ビビる方がよっぽどマシ。鋭敏だものね。

2021-12-27 06:52:28
広田淳一 @binirock

そのビビってる自分を暖かく抱きしめてやってほしい。「そうかそうか怖いんだね」と。特に稽古初期では、人見知りする俳優も多いだろうから、いきなり打ち解けた位置関係、「いつでもいいぜ?」状態はしんどい。無理にそれをすると「この人の事はゴミ箱だと思おう」みたいになるから要注意。

2021-12-27 06:55:20
広田淳一 @binirock

他人と触れ合うシーンとかでもビビりを無視して「親しくなったことにする」と、体が勝手に拒否反応を起こす。結果としてたまに起きるのが「されるがまま状態」。手を握られても、抱きしめられても、引っ張られても、身体は無反応。ビビってるから拒否したいけど、役柄上できないので、無になる、て訳。

2021-12-27 06:57:20
広田淳一 @binirock

舞台上では、実際の俳優同士の人間関係よりも濃い関係性が求められることが多い。「親友」とか「恋人」「家族」とか。で、稽古でいきなり「すごく親しい」を演じようとして無理をすると体が拒否反応を起こして「無」になる。手を握られても、脱力のまま。これを私は「デッドハンド」と名づけました笑

2021-12-27 07:01:59
広田淳一 @binirock

これを避けるために「そうか怖いんだね」と自分を抱きしめてやることが重要です。その上で、徐々に距離感を詰めていく。正面から斜向かい、そして横並び。さらに『水』のシトラ・ヒソップのラストシーンでやった「背面」取らせる位置関係。あんなもんいきなりやったら大抵の人はビビりますから。

2021-12-27 07:05:06
広田淳一 @binirock

あるいは強い台詞を言わなきゃいけないシーンでは「逆に遠くにいっちゃう」もひとつの方法。『青いポスト』の終盤、リオとエリカの姉妹のシーンで「距離感のデザインが」などと言うシーンで採用したのはそれ。近くが怖いならむしろ遠くへ離れなさい、と。あの場面はそれで強い台詞が出るようになった。

2021-12-27 07:06:39
広田淳一 @binirock

いずれにせよ前提として「ビビる自分を否定しない」が大事。身体の接近、接触にどの程度抵抗感があるのかは俳優さんによって違うから、段々と、無理なく進めていけるのが理想。もちろん、それでも「えいやっ!」とジャンプするしかない場面はあるのだが。。そこは「度胸」で乗り越えましょう。

2021-12-27 07:09:00