ロンドン・コーリング #5

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ボンジャン！」スマイターは振り返り、螺旋腕を受けた。光が爆ぜ、衝撃が石畳をめくった。「ンアーッ！」転倒したベスパがスピンし、メイは投げ出された。「いけません！」着地したスマイターはメイを見たが、ビーンポールの打撃は執拗であった。「イイイイヤアアーッ！」KRAAASH！　24

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

スマイターはクロスガードで螺旋腕を再び受けた。足首まで地面に沈み込み、円形の亀裂が走った。耐えきったスマイターを見下ろし、50フィート近い異形は螺旋腕をギシギシと軋ませてアイサツした。「ドーモ。ビーンポールです」「……ドーモ。スマイターです……！」　25

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おまえ、マブシイ。私、ねじって潰す！」ビーンポールは奇怪な石のフルメンポの奥から声を発した。そして螺旋腕を繰り出した！「イヤーッ！」「イヤーッ！」スマイターは腕を光らせ、受け流す！KRAAASH！「イヤーッ！」そこへ螺旋足！ハヤイ！KRAAASH！「ンアーッ！」　26

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

横腹を蹴られ、ダメージを殺しながら着地するスマイター！メイは震えながら石畳に爪を立て、身を起こした。転倒の衝撃と擦過の痛みと恐怖で、脳がジンジンする。「ス……スマイター＝サン……！」「逃げなさい！」スマイターが叫んだ。「この者は聖職者を憎んでいる。私が目当てです！」　27

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クウッ……」メイは立ち上がった。片足を挫いている。周囲を見渡す。アンブレラ達は既に行ってしまったのか！？絶望が彼女のニューロンに溢れた。「イヤーッ！」「セイッ！」KRAASH！恐るべきカラテ音。スマイターは必死に戦っている。逃げられないのだ。メイはハッとした。違う。逃げないのだ。　28

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

他でもない、メイに害が及ばぬよう、スマイターが敵を引き受けているのだ！彼女はメイを捨て、鈍重なパラディンを無視し、このまま大英博物館へ向かってもよいのだ。そうするべきなのだ。メイの目に涙が溢れた。「セイヤッサー！」KRAASH！カラテ轟音！聖なる光を背に、メイはぎこちなく歩き出した。29

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAASH！カラテ音を背に、メイは裏路地へ入り込んだ。涙を拭い、腕のUNIXを展開し、入力したルートを確認した。大英博物館へのルート……！「アバーッ！」瓦礫の中からズンビーが飛び出し、メイは身をすくませたが、ズンビーは彼女を飛び越えて、そのまま走っていった……スマイターの聖なる光へ。 30

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

メイはくるぶしに薬剤を注射し、己を強いて先を急いだ。スマイターもきっと後から来てくれる。今はアンブレラ達に追いつき……合流して……協力して、事にあたる。メイの表情は石めいて凍りつき、血の気が引いて青ざめていた。痛みや薬物のせいとも言い切れなかった。それは不穏な推測だ。　31

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

聖職者を憎むパラディン……ズンビーを滅ぼす一方で、誘蛾灯めいて引き寄せる聖なる光……このままスマイターが犠牲になるのが、アンブレラ達には好都合なのか？裏路地を抜け、入り込んだロンドン大学敷地は、崩れた建材の迷路じみていた。メイは不吉なアーチ門をくぐり、UNIXマップを頼りに進む。　32

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

DOOOM……DOOOM……スマイターとビーンポールのカラテ衝突音がまだ聞こえてくる。そのたび、その方角の空が微かに染まる。どうか。どうか無事で。メイは歪んだ鉄骨によりかかり、呼吸を整えた。体力をブーストさせるべく、ZBRのシリンジを探る。「アバーッ！」学生ズンビーが影から飛び出す！　33

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

メイは悲鳴を噛み殺し、サブマシンガンの銃口を向ける。BRATATAT！「アバーッ！」学生ズンビーの頭が爆ぜ、仰向けに倒れる。「アバーッ！」後ろだ！メイは振り返りざまに薙ぎ払う！「アババーッ！」教授ズンビーが胴体切断！「アバーッ！」横だ！フーリガンズンビー複数！弾切れ……！　34

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」「アバーッ！」「イヤーッ！」「アババーッ！」トライアングル・リープで鉄骨を蹴って飛んできたのはアンブレラだった。一呼吸でフーリガンズンビーを全滅させたニンジャは、鉄骨にもたれたメイを冷たく一瞥した。「……スマイター＝サンは何処だ」「さっきの……パラディンと……」　35

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「戦闘中か。奴め」「……」荒いい息を吐いてズルズルと座り込んだメイに、アンブレラは身を屈めた。「歩けるのか」「ZBRを……打った」「……」アンブレラはメイの怪我を確かめた。冷たい半開きの目で彼女を観察し、やがて首を振った。「お前はここまでだな」「……何……？」　36

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンブレラはメイの左腕を持ち上げた。「このUNIXは役に立つ。脱落者には持ち腐れだ」「な……」メイは目を見開いた。彼の意図がわかったのだ。抵抗しようとするが、ニンジャの力は有無を言わさぬものだった。「イヤーッ！」「ンアーッ！」アンブレラはメイのサイバネ腕を左肘から切断した！　37

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

痛みとニューロン・ノイズ刺激が綯い交ぜになり、メイは痙攣しながら倒れ込んだ。ぼやけた視界は、なんの未練もなく歩き去るアンブレラの足を、後ろ姿を、捉えていた。視界にノイズが入り混じった。「クソ……」メイは身を起こそうと力をこめた。「野郎……」そのまま倒れ込んだ。　38

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドクン。ドクン。心臓の鼓動音が耳に弾ける。地べたに顔をつけた横向きの視界。メイは土の冷たさを感じた。ドクン。ドクン。鼓動音に合わせて視界が断続的に明滅した。意識が飛んでは戻っている。時間の経過。悔しい。瞼を開ける。足。足。ズンビーども。メイを見つけた。何匹。沢山の。　39

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバー」「アバーッ……」メイの目の前に、ズンビーの腐汁が滴った。メイは右腕で身体を持ち上げ、起こそうとした。「アバーッ……！」ズンビーがメイの頭を掴んだ。メイは……「セイヤッサー！ボンジャン！」「アバーッ！？」叫び！　そして、光！「ボンジャン、ハイ！」カラテシャウト！　40

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ！」「セイッ！セイヤッサー！」「アバーッ！」「ボンジャン！」「アバーッ！」……「メイ＝サン。メイ＝サン」スマイターは朦朧とするメイを助け起こし、揺さぶった。メイは彼女の手を掴んだ。「あな……た…」「よかった」スマイターは強いて微笑んだ。僧衣は損傷し、見る影もなかった。41

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ごめんなさい、スマイター＝サン。……情けない……」メイは唇を震わせた。涙が頬を伝う。スマイターは悲壮に目を閉じ、首を振った。「申し訳ありません。拙僧、何もかも至らず」そしてメイを力強く抱き締めた。「二度と、こんな目には、遭わせません」　42

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【#5 終わり】【後編に続く】