核兵器の「所在」と核保有国

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2022年2月

核保有とは何を意味するのか?

nobu akiyama @nobu_akiyama

ウクライナと核に関して、なぜか「ウクライナは世界第三位の核保有国だった」という表現が飛び交っていますが、こういう乱暴な議論はやめた方がいいんじゃないかなと思います。核保有とは何を意味するのか?核兵器が所在していたというだけでは必ずしも保有とは言えません。

2022-02-24 01:21:06
nobu akiyama @nobu_akiyama

例えば、ドイツなどNATOの核共有のメカニズムでは、米国の核を置いていますが、核兵器使用の決定は単独で行うことができないので、NPT上は非核兵器国として扱われています。(もちろん、そこに条約違反だ、というクレームを出す国はいますが。)

2022-02-24 01:21:06
nobu akiyama @nobu_akiyama

ウクライナの場合も、ソ連邦のウクライナ・ソビエト社会主義共和国に配備されていた核兵器は、ウクライナ独立後に物理的にウクライナ共和国に置かれたままでしたが、その核兵器を使用する権限も発射のためのキーもありませんでした。これは、「核保有」とは言えないでしょう。

2022-02-24 01:21:07

 

ブダペスト覚書 (Budapest Memorandum on Security Assurances)

nobu akiyama @nobu_akiyama

さらに、ブダペスト・メモランダム(覚書)を通じた安全の保証(保障ではない)と引き換えにロシアに核を引き渡したというのも、外形的にはそのように見えるが、正確ではありません。ウクライナは1990年の憲法で非核化を定め1992年調印のリスボン議定書NPTに非核兵器国として加入することを国際法上

2022-02-24 01:21:07
nobu akiyama @nobu_akiyama

プレッジしました。リスボン議定書の批准書の交換に際し合意されたのがブダペスト覚書で、ウクライナが科の引き渡しを嫌がったためとされ、それゆえに、安全の保証を得ることと引き換えに核がロシアに渡されたと表現される所以でしょう。しかし、ブダペスト覚書のテキストや法的性格を検討すれば、

2022-02-24 01:21:08
nobu akiyama @nobu_akiyama

そうした外形標準的なナラティブとは別の姿が見えてきます。ブダペスト覚書の内容は、すでに国連憲章の武力行使禁止、OSCEのヘルシンキFinal Actにある主権の尊重や、安保理決議255(1968年)の積極的安全保証など、既存の法的文書によって担保されているものばかりで、この文書に固有な取り決めは

2022-02-24 01:21:08
nobu akiyama @nobu_akiyama

見当たりません。法的な拘束力があるかも曖昧で(むしろないのでしょう)、米国はこれまでもウクライナが直面した危機においてこの文書に基づいて何らかの行動を起こしたことはありません。一応政治的なプレッジにはなってはいますが、この文書をなぜウクライナが求めたのか、文書の効力という観点

2022-02-24 01:21:08
nobu akiyama @nobu_akiyama

からは、必ずしも合理的な説明ができるわけではありません。(もちろん、安保理決議をはじめ国際法の遵守は常に論争的ではありますが。)ですから、ブダペスト覚書の「ディール」が破られたからウクライナの「非核化」は失敗だったというのは、そうしたナラティブが政治的に意味のあることだと

2022-02-24 01:21:09
nobu akiyama @nobu_akiyama

いうのは認めますが、因果関係という観点から言えば極めて短絡的な議論であると言えるでしょうし、これによって国際政治の構造云々、というのはちょっと大げさすぎるなあというのが、冷戦後の核軍備管理・軍縮を見てきた人間から見た感想です。

2022-02-24 01:21:09

 

Masashi MURANO🚀 @show_murano

ブダペスト覚書と核不拡散との関係は、ナラティブと因果関係とは別という解説。ディテールの違いこそあれ、「拡大抑止が弱まると、日韓が核武装しちゃうかもしれないぞ」という議論の変化系とも言えます。 twitter.com/nobu_akiyama/s…

2022-02-24 01:34:25
nobu akiyama @nobu_akiyama

@show_murano 核兵器を持ちさえすれば抑止力を持てるって言うのと同じくらい乱暴な話だよね。

2022-02-24 01:50:23
中満泉 @NakamitsuUN

ウクライナが1994年に核兵器を放棄しなければ今日のような状況にはならなかったとの発言が非専門家の間で散見されますが、これは神話です。ウクライナに配備されていた核弾頭は、旧式のもので安全に維持できるものではなく、オペレーショナルなコントロールもウクライナにはありませんでした。

2022-02-25 07:44:47
中満泉 @NakamitsuUN

核兵器保持によってこのような紛争が防止できず、かえって自国・地域そして世界にとっても危険な状況になっていたと思われます。核軍縮への努力を進めること、国連憲章に基づく秩序を回復し強化することは、安全保障のために必要なことです。

2022-02-25 07:49:56

 

 

(参考)

  • 核拡散防止条約(NPT / Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/核拡散防止条約

     核兵器の不拡散に関する条約(かくへいきのふかくさんにかんするじょうやく、英語: Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons、略称:NPT [1])は、核軍縮を目的にアメリカ合衆国・中華人民共和国・イギリス・フランス・ロシア連邦の5か国以外の核兵器の保有を禁止する条約である。略称は核拡散防止条約(かくかくさんぼうしじょうやく)または核不拡散条約(かくふかくさんじょうやく)とも呼ばれる。

 

  • ブダペスト覚書(Budapest Memorandum on Security Assurances) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ブダペスト覚書

     ブダペスト覚書(ブダペストおぼえがき、英: Budapest Memorandum on Security Assurances)とは、1994年12月5日にハンガリーのブダペストで開催された欧州安全保障協力機構(OSCE)会議で署名された政治協定書で、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナが核不拡散条約に加盟したことに関連して、協定署名国がこの3国に安全保障を提供するという内容。アメリカ合衆国、ロシア、イギリスの核保有3カ国がこの覚書に署名。また中国とフランスは別々の書面で若干の個別保障をしている [1]。

 

  • リスボン議定書(Lisbon Protocol) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/リスボン議定書

     1991年の第一次戦略兵器削減条約に対するリスボン議定書は [1]、ロシアやベラルーシ、ウクライナ、カザフスタン地域の旧ソビエト連邦の核兵器全てが破壊されるかロシアの管理に移行するとこの4か国の代表とアメリカ合衆国が合意したものであった。4か国全てが核保有国としてのソビエト連邦の後継国ロシアや非核保有国として参加する残りの3か国と共に核拡散防止条約に参加することに合意した。議定書は1992年5月23日にポルトガルのリスボンで調印された [2]。

 

  • 欧州安全保障協力機構(OSCE / Organization for Security and Co-operation in Europe) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/欧州安全保障協力機構

     欧州安全保障協力機構(おうしゅうあんぜんほしょうきょうりょくきこう、英語: Organization for Security and Co-operation in EuropeOSCE)は、ヨーロッパの国境不可侵と安全保障・経済協力などを約束したヘルシンキ宣言を採択して全欧安全保障協力会議として1972年に発足し、冷戦終結後、紛争防止とその解決へ向けた新機構として1995年に現在の名称に変更した国際機関である。2014年現在、57か国が加盟し、地域的安全保障組織としては世界最大である。民主主義体制の構築・強化および、基本的人権の保障と保護、武力行使の抑止における、加盟各国の協力と相互尊重を目的とする。本部はウィーンに置かれている。