デストラクティヴ・コード ＃3

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【あらすじ】 「ニンジャスレイヤー狩り」の邪悪儀式「カリュドーン」。世界各地からネオサイタマにやってきた狩人達が次々にニンジャスレイヤーに返り討ちにあい爆発四散してゆく一方で、儀式は粛々と進行する。儀式の主催者セトの懸念はむしろ、儀式のシステムを乱す「異物」の存在にあった。

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「異物」は狩人として儀式の中に紛れている。儀式が進むにつれて世界は歪み、ネオサイタマの空は壊れ、キンカク・テンプルが空に輝いた。一見それはセトの狙い通りであったが、その異常さが想定と異なる。事態を重く見たセトは異物と思しき狩人にブラックティアーズの刺客を差し向けた。その者は……！

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【デストラクティヴ・コード】#3 pic.twitter.com/jn0FLo4PWZ

拡大

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アヴァリスは、神秘的な古代ナイルワニ拳の使い手、デスロールの頸動脈を掌握し、ドクドクと流れる血の勢いを指先に感じていた。死にゆく者の恐怖を味わいながら、押し潰す力を強めてゆく。ボギン。やがて、鈍い手応えと共に、彼はデスロールの首をへし折った。「サヨナラ！」デスロールは爆発四散！ 1

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よほど救済されたいようだな、貴様！」グリーンウィスプは全身をわななかせ、漲らせた力を放出した。 「わがチカラ……とくと見よ！キエエエーッ！」グリーンウィスプの周囲に、緑の火球が人魂めいて出現した。濡れた炎は周囲の空気を滲ませながら、アヴァリスをめがけてゆらゆらと接近する！　2

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハハァ……」アヴァリスは瞳を暗く輝かせ、致命の火球を見た。ニンジャアドレナリンがニューロンをどよもし、時間の流れが鈍化する。視界がバチバチと輝き、八つの光が垣間見えた。アヴァリスの祝福の光だ。そのうち一つは灰色に萎縮している。たった今使ったばかりのハリネズミ・ジツだ。　3

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

つまり、アヴァリスは己の中に八つまでジツを宿す事ができる。ジツを一度使うと、そのジツを宿した「内なる星」は眠り、然るべき環境で然るべきザゼンをするまで再使用する事ができない。どのみちハリネズミ・ジツは好きではない。装束に穴が開いてしまうし、なんとも美しくない。ネズミとは。　4

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アヴァリスはゆっくりと飛来する鬼火を瞬間的に吟味する。眠った星に、このジツを食わせてやるか。その為には、アヴァリスはこのジツを全身で受けきり、咀嚼し、ダメージに耐えねばならない。ダメージはどうでもいいが、その瞬間の無防備状態はうまくない。なぜなら……「イヤーッ！」左横！　5

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チャクラムを投じながら、新手のニンジャがエントリーしてきた。アヴァリスはブリッジしてチャクラムを回避、さらに転がってグリーンウィスプからも間合いを取り、走り出した。「イヤーッ！」全身から鉱石をまばらに生やした醜いニンジャが壁を壊して突入してきた。アヴァリスは加速した。　6

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オオオオン！」鉱石のニンジャがアヴァリスの行く手を遮り、掴みかかる。「イヤーッ！」アヴァリスは跳躍し、鉱石のニンジャの胸板を蹴り上がった。「キカヌワーッ！」鉱石ニンジャが叫ぶ。アヴァリスは壁の裂け目を蹴り壊し、ストリートに飛び出した。夜。叩きつけるような重金属雨が降っている。 7

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

迷路じみた路地、冷たい雨。その瞬間のネオサイタマは、彼が「ヴァイン」に拾われたあの夜を想起させるアトモスフィアを持っていた。アヴァリスはひとり虚無的な笑みを浮かべ、より狭い路地に駆け込んだ。「逃げられるものか！」チャクラムのニンジャの声が迫ってくる。アヴァリスは壁を蹴り、走る。 8

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その先はあいにくの行き止まりだ。壁には巨大なバニーオイランと、「行き止まりなのよ」の文字がグラフィティされている。アヴァリスは振り向いた。チャクラムのニンジャが走り込み、ブレーキして、アスファルトを横に滑りながらアイサツした。「ドーモ、エンデーバーです！死ぬがよい！」9

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺はアヴァリスだ」アヴァリスは目を細め、特段不要な名乗りを返す。穴だらけの装束を脱ぎ捨てると、背中に宿したネオンタトゥーを闇に輝かせた。そして呟いた。「出ろ」「ゴアアアオオオン！」虚無から咆哮が放たれ、白いネオン虎が上から降ってきた。「な！？」エンデーバーは驚愕する。　10

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「GRRRRR！」白のネオン虎はエンデーバーに上から喰らいついた。エンデーバーは咄嗟に腕を上げて防ぐが、ネオン虎は実体の重みと牙でエンデーバーを害する。その隙に、既にアヴァリスはワン・インチ距離に踏み込んでいる。「イヤーッ！」「グワーッ！」心臓をチョップ突きで貫く。　11

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」心臓を引きずり出すと、エンデーバーは血を吐きながら痙攣した。「ゴウルルルル！ゴアアアオオオ！」崩れ落ちたエンデーバーをネオンの虎は食い荒らした。「サヨナラ！」爆発四散。「まだ戻るな」アヴァリスは食い散らかす虎に囁いた。そう、虎は彼の背中のネオンの化身だった。　12

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サモンエレメンタル・ジツ。剥き出しとなっているアヴァリスの裸の上半身には、このジツの作用によって、神秘の獣たちのネオンタトゥーが光っている。キャバレーのヨージンボだか占い師だかのニンジャを襲い、奪い取った、ひどく魅力的で便利なジツであった。　13

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アヴァリスはジツの危険に身を晒し、咀嚼して引きずり出す。コトダマのリンクを辿り、ジツの主の魂から剥がし、己の内なる星に繋ぎ直す。奪う時、彼はそういうイメージを浮かべた。無論、奪われたニンジャは無事では済まない。ジツは直ちに使えなくなり、人事不省、発狂、ショック死のいずれかだ。　14

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

いや、耐えたニンジャも居たな。アヴァリスは呑気に思いを巡らせた。あれはなかなか厄介な奴だったが、それなりに面白いジツを得る事ができた。ひるがえって、このサモンエレメンタル・ジツの使い手はどうなったのだったか。覚えていない。ジツの抜け殻に興味はなかった。　15

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どこだ！」叫びと重々しい足音が近づいてくる。アヴァリスはネオン虎の背中を撫で、ゆっくり歩いた。ジツを使えばクールダウンが必要となるなかで、多人数を相手にするイクサにおいて、召喚のジツは重宝する。「ドーモ！シャゴタイトです……！」「遅刻だ。エンデーバーとかいう奴は死んだぞ」　16

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺を殺せると思うなよ！イヤーッ！」シャゴタイトは鉱石を輝かせ、クロス腕防御姿勢で接近する。「ゴアオオオン！」ネオン虎が襲いかかるが、「イヤーッ！」「ゴアーッ！」強烈な回し蹴りが脇腹を打ち据え、ネオン看板「虎入らずんば」に叩きつけた。「弱敵！」「どうかな」アヴァリスは笑った。　17

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴様に俺の力は破れぬ！」「ああ、硬そうだ」アヴァリスは指を弾いた。自信に満ちて接近するシャゴタイトの体軸がブレた。「ヌ……グ……！？」シャゴタイトは色つきの霧に呑まれていた。アヴァリスはリラックスしていた。「グワーッ！？」霧の中、影めいて霞むシャゴタイトがついに悲鳴をあげた。18

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どこだ……見えん……！これは……！」「効いたな」アヴァリスは間合いを保った。「酸だ。お前の身体を溶かす」「グワーッ！」シャゴタイトの動きに追随し、色つきの霧は濃度を増して纏わりついた。「卑怯だぞ！」「ハハハハ。大勢で俺一人を囲んだ奴の言葉とは思えんな。……俺もやったがね」　19

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

充分に弱りきったさまを見極め、アヴァリスは霧に手を差し入れた。霧はアヴァリスの手に集まり、邪悪な刃を形成した。彼の目の前には焼けただれたシャゴタイトが立っていた。「イヤーッ！」「グワーッ！」脇腹から心臓へ、アシッドクラフト・ジツの刃を突き刺した。「アバババーッ！」噴水吐血。　20

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前のジツは珍妙だが……もらっておこう。まだ何匹か残っているようだからな。イヤーッ！」アヴァリスは酸の刃で上に切り裂き、心臓を摘出した。「アバッ！アバババーッ！」「ソウルってのは心臓にあるのか？脳か？俺にはわからん。なんにせよ……」アヴァリスは崩れる敵の前で心臓を咀嚼した。　21